両陛下「全国植樹祭」に初のリモート参加
島根県大田市で「第71回全国植樹祭」が開催されました。新型コロナウイルスの感染拡大によって去年は行われず、1年延期されての開催。天皇皇后両陛下が現地に赴かず、リモートで参加される初めての植樹祭となりました。両陛下が植樹されてこその行事。それだけに今年の植樹祭開催には、様々な努力と工夫がありました。
【全国植樹祭とは】
「全国植樹祭」とは、天皇皇后が視察を兼ねて全国を訪問する「四大行幸啓」と呼ばれる行事の1つです。1950年(昭和25年)から始まり、年に1回都道府県の持ち回りで開催されてきました。今回開催されたのは島根県大田市。大田市では50年前の1971年(昭和46年)にも開催されていて、その際には昭和天皇と香淳皇后が出席し、クロマツを植樹しました。
【初リモートならではの工夫】
今回、両陛下は初めてリモートでの出席でした。赤坂御用地で、木箱の中に敷き詰めた土にスギやヤマザクラなどの苗を植え、クロマツやアカマツなどの種を植えられました。これは島根県の子どもたちが育てた苗で、種も、使用した木箱も島根県から運ばれました。両陛下が「お手植え」、「お手播き」されたものは、明日以降トラックで島根県に輸送されます。
また、今回は、50年前に昭和天皇が植えたクロマツも赤坂御用地に運び込まれました。およそ15メートル、30年前には今の陛下が「全国育樹祭」の式典で枝打ちされた木です。陛下は、「収穫」の行事として、数回ノコを入れられました。後日、このクロマツも島根県に運ばれ、現地で改めて活用されるということです。
実は、1968年(昭和43年)の秋田大会でも似たようなことがありました。3日前に起きた十勝沖地震で出席を取りやめた昭和天皇と香淳皇后が東京の皇居で植樹し、それを秋田県に送ったということです。今回は、東京と現地を中継でつなぎ、離れた場所でも空間と時間を共有するという、令和ならではの植樹祭でした。
【天皇陛下お言葉】
式典中、天皇皇后両陛下は、大型モニターで島根県にある会場の様子をご覧になっていました。式典会場でも大きなモニターに両陛下の姿が映し出され、天皇陛下がお言葉を述べられました。
陛下は、冒頭「全国から参加された皆さんと御一緒に植樹を行うことを喜ばしく思います」と述べた上で、「全国各地で感染症対策などに力を尽くされている方々に、改めて深い敬意と感謝の意を表します」と話されました。
陛下は、30年前に今回の会場を訪れて昭和天皇と香淳皇后が植えたクロマツの枝打ちをしたことについて振り返り、「昭和の植樹、平成の育樹を経て、令和の収穫に至るまでの豊かな森林づくりに要した長い年月と関係者の御苦労に思いを馳せ、感慨を覚えます」と述べられました。また、「かけがえのない森林を健全な姿で未来の世代につないでいくことは、私たちに課せられた大切な使命であると考えます」とし、「様々な分野の人々が連携、協力することにより、植えて、育てて使い、また植えるといった『緑の循環』が広く実現することを期待します」と、述べられました。
【場所は離れていたけれど】
「全国植樹祭」では例年、「緑の少年団」と呼ばれる子どもたちが、両陛下の「お手植え」「お手播き」のお手伝いをします。終わった後に両陛下がねぎらいの言葉を掛けられ、短いやり取りが行われるのが恒例なのですが、今回は、両陛下の手伝いは島根県東京事務所の職員が行い、子どもたちは式典会場にいて、樹木の説明のアナウンスなどを行いました。
陛下は、式典会場の子どもたちに「緑の少年団の皆さん、きょうは私たちに丁寧に説明をしていただき、どうも有り難う。皆さんにはこれからも緑を守り、育てる気持ちを大切に持ち続けていただきたいと思います。どうかくれぐれも体に気を付けて、実り多い学校生活を送ってください」と、モニターごしに声をかけられました。式典が終了し、赤坂御用地の会場をあとにする時、両陛下はモニターに向かって、笑顔で手を振られていました。
来年の「全国植樹祭」は、滋賀県で行われる予定です。