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「歌会始の儀」天皇皇后両陛下と皇族方の歌

2021年3月26日 12:45
「歌会始の儀」天皇皇后両陛下と皇族方の歌

皇居で新年恒例の「歌会始の儀」が行われました。今年のお題は「実」です。

当初、1月に開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大のために2か月あまり延期され、宮殿内で初めてアクリル板やフェイスシールドの使用、入選者の1人は福井県からオンラインで参加するという異例の開催でした。

しかし、「年の始めに~」という古式ゆかしい独特の節回しは例年と同じで、伝統のままに歌が披露されました。

天皇皇后両陛下と皇族方の歌を紹介します。(歌の背景については、宮内庁の説明をもとに編集しました)

天皇陛下(御製)「人々の願ひと努力が実を結び 平らけき世の到るを祈る」

両陛下は、新型コロナウイルスの感染拡大により多くの人命が失われ、世界中の人々が大きな試練に直面していることに心を痛められています。両陛下はこれまでに様々な分野の専門家や、現場で対応にあたる方々から話を聞いてこられました。この歌は、陛下が、人々の願いと、人々がこの試練を乗り越えようとする努力が実を結び、感染症が収束していくことを願う気持ちを詠まれたものです。

皇后さま(皇后宮御歌)「感染の収まりゆくをひた願い 出で立つ園に梅の実あをし」

両陛下は、新型コロナウイルス感染症の発生以来、感染拡大の収束を心から願ってこられました。皇后さまは、緊急事態宣言下の昨年5月、お住まいのある赤坂御用地内を散策中、梅林の梅の実がいつの間にか青々と大きくなっていることに目を留められました。感染拡大で人々の日常が様々な面で大きく変わった世の中にあっても、それまでの年と同じように花を咲かせ、実を育んでいる梅の木に、変わらぬ自然の営みの力を感じ、感慨深く思われた歌です。

秋篠宮さま「夏の日に咲き広ごれる稲の花 実りの秋へと明るみてくる」

ある夏の暑い日、秋篠宮さまは普段はあまり気にとめることはない稲に咲く花が、いかにも奥ゆかしく開いていることに気付かれました。控え目ではあるが故に、秋に撓(たわわ)に実る準備をしているようにも感じられたそうです。控えめに咲く稲花(とうか)を見ながら、秋に黄金色の稲穂が豊かに実ることを願われた気持ちを詠んだ歌です。

秋篠宮妃紀子さま「竹籠に熟るる黄色の花梨(くわりん)の実 あまき香りは身に沁みとほる」

紀子さまは、秋篠宮さまと一緒に赤坂御用地を散策し、自然の移ろいを楽しまれています。春には美しいピンク色の花が咲いていた花梨の木は、秋にはたくさんの黄色の実を付けました。熟した花梨の実を竹籠に入れると、辺りはほのかな甘い香りに包まれます。籠の置かれた部屋などで花梨の実の香りに安らぎを感じ、身近な自然の恵みをありがたく思った気持ちを詠まれた歌です。

眞子さま「烏瓜その実は冴ゆる朱の色に 染まりてゆけり深まる秋に」

幼い頃から烏瓜の美しい色合いが好きだったという眞子さまが、季節が深まるにつれて、烏瓜の実が秋の色に染められていくように見える様子を詠まれた歌です。

佳子さま「鈴懸の木から落ちにし実を割りて ふはふは綿毛を空へと飛ばす」

幼い頃に鈴懸の実を割って、中の綿毛で遊んだことがあったという佳子さまが、最近、同じ鈴懸の木の下に行き、当時のことを思い出して詠まれた歌です。

常陸宮妃華子さま「野鳥くる実のなる木々に植ゑかへて 君は若かる庭師と語る」

常陸宮さまは、数年前まで週末や時間があるときに、帽子やサングラス、望遠鏡を持って、庭を散策されていました。ある日、庭の植木の手入れをしていた職員に偶然会い、野鳥や蝶が好む、実のなる木々や草花を植えて欲しいと頼まれました。その翌年には、野鳥や蝶が確かに増え、その様子を嬉しそうに見ていた常陸宮さまの姿を思い出して、華子さまが詠まれた歌です。

寛仁親王妃信子さま「実りある日のくるためにながさるる 汗は力となると信ずる」

信子さまは、新型コロナウイルス対応の第一線で感染の危険と隣り合わせで尽力している方々の話を聞き、地域社会や個人が衛生管理・健康管理の大切さをしっかりと自覚することの重要性を改めて感じられました。最前線で働く関係者の健康への願いと深い尊敬と感謝の念を込め、一刻も早いコロナ禍の終息を祈ってこの歌を詠まれました。

彬子さま「地図帳にあの日見つけし茶畑の 不思議な点は茶の実のかたち」

彬子さまは、学習院初等科の頃に地図記号を勉強していた際、神社など分かりやすい記号がたくさんある中で、茶畑の記号はなぜこの形なのか不思議に思われていました。数年前、茶畑の見学で実際に茶の実を見せていただき、記号の意味が大変よく分かったと詠まれた歌です。

高円宮妃久子さま「戸隠の森にはびこる蔓柾(つるまさき) 赤き実を食(は)むは眉茶鶫(まみちやじない)か」

長野県にある戸隠森林植物園に自生するツルマサキの赤い実をついばむマミチャジナイについて詠まれた歌です。初めて撮影した時のことを、嬉しく、記憶に残る出会いとしてその瞬間を詠まれました。

承子さま「自室より画面越しにて繋がりて 旅せぬ集ひも実現したる」

COVID-19の影響で日々たくさんの不便はありますが、オンラインへの移行が進んだことで、国際会議やイベントの出席、遠方の友人方との交流など、時間的・距離的制約なく集える実りもあると気が付き、歌に詠まれました。