×

【法廷ルポ】ウソにウソを重ね‥借金1000万円超も「俺は高収入」交際相手に「バレたくなくて」殺害 事件後に「現実逃避のため」性風俗サービス…27歳男の身勝手な言い分と女子大学生の遺族の怒り

2025年2月23日 9:00
【法廷ルポ】ウソにウソを重ね‥借金1000万円超も「俺は高収入」交際相手に「バレたくなくて」殺害 事件後に「現実逃避のため」性風俗サービス…27歳男の身勝手な言い分と女子大学生の遺族の怒り
西光勝被告(画・竹本佐治)

「どんな刑でも一切控訴せず、一生かけて償っていきます」

 女子大学生を殺害した罪などに問われた27歳の男は、裁判の最後に、謝罪の言葉を述べ、真摯な態度をみせた。

 一方、裁判で明らかになったのは、ウソにウソを塗り固めて、最後には、交際相手を殺害するまでに及んだ事件の全容だった。身勝手にかけがえのない命を奪ったとされる男が法廷で語ったこの言葉に、ウソはないのか―。

■芸人の夢を諦め職を転々…借金1000万円超も「違う男性と幸せになるなら、全て終わらせたい」

 無職の西光勝被告(27)は、去年5月、大阪府枚方市のマンションの一室で、交際していた大学2年生の渡辺華蓮さん(当時19)を背後から包丁で複数回刺すなどして殺害した罪などに問われている。

 中学を卒業後、芸人になることを目指した西光被告。芸人養成所に入ったものの、夢をつかむことはできず、その後、職を転々とし、消費者金融や母親などから1000万円を超える借金を抱えていた。

「華蓮さんが違う男性と幸せになるくらいなら、全て終わらせたいと思った…」(18日の被告人質問)

 法廷で、渡辺さんを殺害した動機を語った西光被告。渡辺さんの遺体には、首や腹などに62か所もの刺し傷や切り傷があった。

 いったい、2人の間に何があったのか―。

■著名企業に勤務で高収入“金持ちな彼氏像”演じ…タワーマンションに内覧も

 検察の冒頭陳述などによると、2人が交際を始めたのは、事件が起きる約2か月前の2024年3月。西光被告は当時、定職に就いていなかったが、通っていた大阪市内の飲食店で働いていたのが渡辺さんだった。

 この店で、西光被告は高級シャンパンなどを注文し、渡辺さんに対しては、著名な会社に勤め、高収入であるとウソをついていたという。

 交際後は、渡辺さんを旅行に連れていったり、ブランド物の靴などをプレゼントしたり、同棲しようと、大阪市内の家賃が20万円以上するタワーマンションの内覧に行くなど“金持ちの彼氏像”を演じ続けていた。

■母親のクレジットカードを無断使用 「借金やウソがばれるの怖い」とメッセージも

 一方で、知人男性には飲食店などのいわゆるツケ払いで、約200万円の借金をして困っていると相談していたという。知人男性によると、その際、「渡辺さんに借金やウソがバレるのが怖い」「別れたくない」「彼女を殺して自分も死ぬ」などと話していた。

 借金は膨らみ続けたが、西光被告に「働く」という選択肢はなく、母親のクレジットカードを無断で使い、友人や元同僚などから金を借りながら、渡辺さんの自宅に転がりこんで生活していた。

 渡辺さんには「タワーマンションを契約した」とウソをつき、引っ越しの話が出る度に、「体調が悪い」などとさらにウソを重ねて先延ばしにしていたという。

■「ウソをつくのは疲れた」事件前日ごろ殺害を決意 外出準備する被害者を後ろから…

 殺害を決意したのは事件前日の2024年5月15日ごろ、「ウソをつくのは疲れた」からだと西光被告は語った。

 致命傷を与えて確実に殺害するために「頸動脈どこ」などと検索した上で、翌16日、外出準備をする渡辺さんに背後から近づき、隠し持っていた包丁で首や腹を切りつけたという。

「『華蓮ごめん』と言って、腰に包丁を入れました。華蓮さんはずっと叫んでいて、腕を持たれて抵抗されましたが、最後にのどを刺すと目が回って倒れました」

 法廷では、犯行時のことを淡々と説明した。

■殺害後にパソコンを売却した金で性風俗サービス「自殺考えたが…現実逃避のため」

 西光被告は犯行後、エアコンで部屋の温度を低くして、遺体の腐敗を遅らせる工作をしたあとにマンションを出たが、その際、渡辺さんのスマートフォンや部屋の鍵を持ち出していたほか、渡辺さんのパソコンを枚方市内の買取店で数万円で売却した。

 その後、西光被告は、その金で大阪市内のホテルに滞在し、“性風俗サービス”を利用。さらに、渡辺さんの電子マネーを使って焼鳥店で飲酒していたことも明らかになった。

 裁判で西光被告は、逃走した理由について、「渡辺さんが死亡したあと、自殺しようと思ったが、その場では死ねないと思い、ホテルの高層階から飛び降りようと考えた。性風俗サービスを利用したのは現実逃避のためだった」などと説明した。

■逮捕直後は『同意の上で殺害』とさらにウソ「早く刑務所を出たいと思った」

 殺害から2日後の5月18日、西光被告は「ホテルの宿泊料金が払えない」などと警察に通報し、その後、逮捕された。

 通報を決意したのは、「数年前に離婚した元妻と、9時間にわたり電話し、自首するよう説得されたためだった」と法廷で話した。

 しかし、警察が駆けつけた際、西光被告は「渡辺さんに借金があることを伝え、同意の上で殺害した」という趣旨のウソの内容を書いた手書きのメモを作っていた。

 西光被告は裁判で「実際は同意はなく、早く刑務所から出所したいと思いウソをついた」と話した。

■「今年成人式で一緒に酒を飲む予定だった」遺族の悲痛な胸の内「一生恨み、許すことはない…」

 裁判には、被害者参加制度を使い、渡辺さんの遺族も参加していた。21日、渡辺さんの両親が証言台に立ち、悲痛な胸の内を西光被告にぶつけた。

 渡辺華蓮さんの父親
「娘を失った悲しみは癒えることはありません。一生悲しみと苦しみを背負っていく。被告を一生恨み、許すことはありません。本来なら、今年成人式で一緒に酒を飲む予定でした。抵抗する娘の命、これまでの努力、楽しい人生を奪い、どんなに痛く、怖く、寂しかったか、悔しかったか…考えただけで気が狂いそうです。被告に死刑を望みます」

 時折、涙声で話すその間、西光被告はうつむいたままだった。

■検察「自分の見栄やプライドを優先させた動機は極めて身勝手」懲役22年を求刑

 検察側は、「渡辺さんに無職であることや多額の借金があることを知られ、交際を解消されるぐらいならば殺害しようと考えた。犯行前には、スマートフォンで殺害方法を何度も検索していた」などと指摘。「計画的で極めて残忍な犯行。被害者に落ち度はなく、命より自分の見栄やプライドを優先させた動機は極めて身勝手」などとして、懲役22年を求刑した。

 一方弁護側は、「自首が成立する」として懲役20年が妥当だと主張。西光被告は最終陳述で、「どんな罪でも一生償っていきます」と述べ、遺族に向けて数十秒にわたり深く頭を下げ、裁判は結審した。

 ウソを重ねた末に凶行に及んだ被告は、法廷で語った言葉通り、奪った命の贖罪を続けるのだろうか…。判決は2月28日に言い渡される。

最終更新日:2025年2月23日 9:00
読売テレビのニュース