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【全文】元横綱白鵬の宮城野親方が2階級降格 北青鵬は引退 調査結果・処分内容

2024年2月23日 14:48
【全文】元横綱白鵬の宮城野親方が2階級降格 北青鵬は引退 調査結果・処分内容

日本相撲協会は、宮城野部屋の幕内力士が、同部屋の弟弟子2名に対して暴力行為やいじめ行為を行ったことについて、調査結果や処分内容を発表しました。以下は発表内容の全文です。

■(1)事案発覚時の経緯

令和6年1月21日、公益財団法人日本相撲協会の公式Xに、宮城野部屋の幕内力士北青鵬が、同部屋の所属力士に暴行を繰り返している旨の投稿が寄せられたため、相撲協会は、師匠の年寄宮城野に部屋内での調査を要請した。

宮城野部屋で、所属力士らにヒアリングを行ったところ、被害者A及び被害者Bが、北青鵬から暴行を受けていたことを申告し、北青鵬もこれを認めた。相撲協会では、前記ヒアリングの結果を受け、同月22日から同月25日までの間、宮城野部屋関係者に対する調査を行った。対象者は、宮城野、間垣、所属力士ら、床山及び行司であった。協会の調査でも、北青鵬はA及びBに対する暴行を認めた。

■(2)コンプライアンス委員会の調査結果と処分意見

八角理事長は、暴力行為が確認されたことから、令和6年1月26日、青沼コンプライアンス委員長に、事実関係の調査と処分意見の答申を委嘱した。青沼委員長は調査班にて調査を実施した後、以下のとおり、コンプライアンス委員会で審議した結果を八角理事長に報告するとともに処分意見の答申を行った。

(北青鵬について)

北青鵬の違反行為は以下のとおりである。

ア 令和4年7月の名古屋場所中、愛知県豊田市内の宮城野部屋宿舎において、Bに対し、顔面への平手打ち、突き飛ばし等の複数回にわたる暴行を加え、肘に怪我を負わせたほか、ほうきの柄で臀部を1回打つ暴行を加えたこと

イ 同年7月の名古屋場所中、前記宿舎において、Aに対し、ほうきの柄で臀部を1回打ったほか、同年10月21日、東京都墨田区内の宮城野部屋個室において、まわしで作った丸太様の棒で臀部を1回打つ暴行を加えたこと

ウ 令和5年11月の九州場所中、福岡県糟屋郡篠栗町内の宮城野部屋宿舎において、A所有の財布に瞬間接着剤を塗布し、損壊したほか、Bに対し、右手手指に瞬間接着剤を塗布する暴行を加えたこと

エ 令和4年8月頃以降、宮城野部屋又は地方場所中の宿舎等において、A及びBに対し、次の1及び2のいずれかの態様により、週に2~3回程度の頻度で繰り返し暴行を加えたこと

1 顔面、背中及び睾丸への平手打ち等の暴行

2 ほうきの柄又はまわしで作った丸太様の棒で臀部を打つ暴行、殺虫剤スプレーに点火してバーナー状にした炎をAやBの体へ近付ける暴行

北青鵬の暴行について特筆すべき点は、相撲協会全体を挙げて暴力根絶に向けた取組を継続している中で、このような悪質な暴行が、令和4年7月頃から令和5年11月頃までの1年以上に及ぶ長期間にわたり、日常的に繰り返されていた点である。研修等で暴力禁止の教育を受け、懲戒処分の可能性を知りながら、日常的に暴行を繰り返したのは、そもそも、法令や相撲協会の規程を守る意識がなかったものと言わざるを得ない。しかも、北青鵬の暴行は、A及びBが部屋の仕事で不始末をしたことに対する制裁という名目で行われていたほか、A及びBが痛がる反応を見て面白がっていたとも認められ、暴行の動機の面においても卑劣極まりない。

加えて、北青鵬は、令和5年12月23日に行われた協議の場において、Aの両親から、関取として宮城野部屋の所属力士らに模範を示すよう注意を受けていたにもかかわらず、その矢先である令和6年一月場所中には、以前にも宮城野から同様のことで注意を受けていたにもかかわらず、ロールスロイスで場所入りをするなど、まったく反省の態度が認められない。

このため、被害者であるA及びBの被害感情は非常に強く、他の所属力士らの多くも、北青鵬に反省の態度は認められず、北青鵬が宮城野部屋に残ることになれば、必ず暴行を繰り返すだろうと供述し、部屋への復帰は受け入れられないとしている。

北青鵬は、本件調査において、本件暴行を深く反省し、同種暴行を二度と繰り返さない旨誓約するとともに、いかなる処分も受け入れるとしながらも、許されるならば今後も相撲を取りたい旨希望しているが、このような反省や誓約は遅きに失したというべきで、酌むべき事情とは言い難い。

以上を総合すると、北青鵬を相撲協会の協会員として残すという選択肢はないといわざるを得ず、懲戒解雇処分も検討すべき事案というべきであるが、未だ22歳という年齢とその将来を考慮し、引退勧告の懲戒処分が相当と判断した。

(師匠の宮城野について)

宮城野の違反行為は以下のとおりである。
ア 北青鵬に対する監督が不十分であったことにより、同人のA及びBに対する暴行及び器物損壊行為を防止できなかったこと(監督義務違反)

イ 令和4年7月の名古屋場所中、北青鵬のBに対する暴行の事実を知ったにもかかわらず、先代親方に相談の上、すみやかにコンプライアンス担当理事に報告しなかったこと(報告義務違反1)

ウ 遅くとも令和5年12月23日までに、北青鵬のAに対する暴行及び器物損壊行為を知ったにもかかわらず、すみやかにコンプライアンス担当理事に報告しなかったこと(報告義務違反2)

エ 北青鵬のA及びBに対する暴行につき、花籠コンプライアンス担当理事が、令和6年1月22日から同月25日までの間、所属力士らに対する調査を実施するに先立ち、部屋内で内部ヒアリングを行うに際し、部外者の番組制作会社社員を関与させたことで、同人による所属力士らへの口止め工作等につながり、事実認定をゆがめる危険を生じさせて、相撲協会による調査を妨害したこと(調査協力義務違反)

宮城野は、令和4年七月場所中、北青鵬のBに対する暴行を把握しながら、当事者であるBと北青鵬に事情を直接確認もせず、Bの被害写真の確認すらしなかった。また、北青鵬に注意もしておらず、先代親方にさえ直接報告をしなかった。この機に、宮城野が、Bと北青鵬に事情を直接確認し、北青鵬に注意をしていれば、BのみならずAに対する暴行もより早期に把握することができ、北青鵬の暴行が常態化することも阻止できた可能性がある。北青鵬に対する監督と協会への報告を怠った結果、被害者2名に対する一年を超える常態化した暴力被害を生じさせたもので宮城野の責任は重大である。

また、AとBは、令和4年8月以降、北青鵬の暴行を日常的に受けていたにもかかわらず、そのことを宮城野に相談しなかったが、これは、令和4年七月場所中における宮城野の発言が契機となって、同親方が被害を受けた若い衆を軽んじ、暴行の被害を受けても加害者である関取は不問に付されるとの認識が同部屋内に広まったことに原因があったと認められる。

宮城野としては、被害の状況を正確に把握した上で、北青鵬の暴行に関する対応方針について被害者を含め若い衆に丁寧に説明をすべきであった。実際、宮城野は、令和4年七月場所後の同月28日には、師匠として正式に所属力士らを監督すべき立場に就いたにもかかわらず、Bに対し、その後の被害の有無を一度も確認しておらず、部屋付き親方やマネージャーに確認をするよう指示することさえもしていないから、宮城野部屋内の関取による暴行は不問となるとの認識がその後も解消しなかったこと自体、宮城野に責任があったと言わざるを得ない。

さらに、Aの両親が、北青鵬の暴行について相撲協会において正式に問題として取り上げることを必ずしも希望していなかったとしても、相撲協会は、公益法人として、協会全体を挙げて暴力根絶に向けた取組を継続しており、今回のような暴行問題は、北青鵬とAの個人間の問題にとどまらず、相撲協会全体の問題であり、この機に北青鵬の暴行を報告しなかった点については、弟子らを預かる師匠として、問題の認識に不足があったと言わざるを得ない。

加えて、部外者による口止め工作については、宮城野がこれを意図的に指示又は依頼した事実までは認められないとしても、宮城野が内部ヒアリングに部外者を同席させる等の関与を依頼したことに原因があったと認められ、これによって本件調査がゆがめられる恐れを生じさせた点においても、その責任は重い。実際、口止め工作を受けた所属力士らは、部外者を暴力事案の調査という部屋内部の重要な問題に関与させた点に違和感を持ち、疑問を述べているが、それも当然である。

以上の事情に加え、宮城野が現役時代に3回の処分を受けていることを勘案すると、公益法人であり、かつ、暴力根絶を誓った相撲協会の委員の職にとどまらせることは不適当であり、また、その責任は極めて重大であるから、降格および報酬減額の併科の懲戒処分が相当と判断した。

■(3)理事会決議と今後の対応

本日の理事会では、コンプライアンス委員会の処分意見及び理事会前に提出された引退届を踏まえ、北青鵬については、自主引退を認めてこれを受理するものの、懲戒処分とした場合は、引退勧告相当の事案であったことを確認した。

師匠の宮城野の懲戒処分については、降格(委員から年寄)と報酬減額(20%×3か月)の併科とすることを決議し,宮城野に処分を通知した。併せて、宮城野については、師匠としての素養、自覚が大きく欠如していることが理事会で確認されたため、その対処として、三月場所は、所属する伊勢ケ濱一門で宮城野部屋の師匠代行を任命し、師匠代行が宮城野部屋の監督を行うこと、4月以降は、伊勢ケ濱一門が宮城野部屋を預かり、師匠・親方としての指導・教育を行う(期間は未定ことを、伊勢ケ濱一門と協会執行部とで検討、三月場所後の理事会で報告することを決定し、その旨、宮城野に通知した。

今後は、全協会員に対し、暴力根絶を改めて伝えるとともに、師匠・年寄には、弟子の指導・監督の徹底、万一暴力が発生した場合の報告の徹底を通知する。

以上

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