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「明るい未来が絶対に待っている」 がん経験者がつなぐ“元気のバトン” 医療用ウィッグの寄付が広がる

2023年9月29日 16:42
「明るい未来が絶対に待っている」 がん経験者がつなぐ“元気のバトン” 医療用ウィッグの寄付が広がる

がん経験者による“医療用ウィッグ”を寄付する動きが広がっている。「つらい治療を乗り越えた先には、明るい未来が絶対に待っています」寄付されたウィッグに添えられたメッセージカードには、同じ病と戦う“仲間”へのエールが込められていた。託された想いが、生きる希望を生み出していく。

医療用ウィッグを寄付「次に使う人の励みになってほしい」

がんなどの治療中に髪が抜けてしまった人のための「医療用ウィッグ」。名古屋市北区の美容院「SPLASH」では、そんな医療用ウィッグの寄付を受け付け、中古のウィッグをクリーニングやリペアし安く販売。さらに、レンタルする活動を行っている。この日、寄付に訪れた小川歩さんは、乳がん治療の時に使用したウィッグを寄付。“次に使う人の励みになれば”という想いで寄付を決めた小川さん。ウィッグに添えたメッセージカードには、「つらい治療を乗り越えた先には、明るい未来が絶対に待っています」という言葉を記す。次に使う人に向けて小川さんは、「こうやって被っていた人がいて、その人も頑張っていたんだなという想いが伝わると嬉しい」と同じ病と闘った経験者としてエールを送った。

“人目を気にせず”過ごせることが非常に大事

小川さんの乳がんが分かったのは、今から5年前の41歳の時。当時の心境について、「がんって聞いたら、明日死ぬみたいな感覚。2~3日ぐらいは人と会話していても違う世界にいる感じだった」と振り返る。抗がん剤治療の影響で髪の毛が抜け始めた頃、外出するときに被っていたのが医療用ウィッグだった。「(ウィッグは)何十万円とした。なるべくバレないように高い方がいいのかなって」と小川さんも話すように、実は医療用ウィッグは高額なものが多い。ファッション用と比べて、治療中の敏感な頭皮でも被れるように特殊素材のネットがつけられているのが理由だ。医療用の中心価格は10~15万円、オーダーメイドになると50万円以上するものもあるそうだ。ウィッグの寄付やリユースウィッグの販売の活動が広がっているのも、この高額な価格帯が理由だ。愛知県一宮市内にある「一宮西病院乳腺外科」も、治療で脱毛する患者向けにリユースウィッグの紹介を始めた。一宮西病院乳腺外科・鈴木瞳部長は、「脱毛が原因で外出の回数が減るだけで、筋力低下に繋がってしまう。精神的なことが身体的なことにダイレクトに繋がっていくので、人目を気にせず過ごせることは、非常に大事なこと」とウィッグがもたらす心身のへの影響を語った。

得られる活力は無限大!ウィッグがつなぐ“元気”のバトン

実際に病院の紹介で、リユースウィッグの購入に訪れた前田美保さんを取材した。4年前に乳がんを患い手術・治療を行ったが、肺への転移が判明。現在は数週間に1度、抗がん剤を打つ治療を続けている。これまでもいくつかウィッグを試してきたが、理想のものには巡り会えなかったという前田さん。希望のスタイルは、ロングヘア。スタッフと相談しながら、様々なロングヘアスタイルのウィッグを試着していく。色々試着を重ねるが、なかなかしっくりくるスタイルが見つからず、時には「合わーん!」と鏡に映る自分の姿に笑顔でツッコミをいれるシーンも。そんななか、ついに理想のウィッグを発見。がんを患う前の元気な頃と、同じ髪型のウィッグだった。懐かしい姿に、思わず目を潤ませる前田さん。「4年かけてやっとこのウィッグのおかげで、昔の自分を見た気がしました」と理想のウィッグに出会えた喜びを語った。

本ニュースは、中京テレビ「キャッチ!」で放送。スタジオでは、自身も乳がんを患った経験を持つ中京テレビ・恩田千佐子アナウンサーが、VTRを温かく見守っていた。闘病中、自身もウィッグの存在が心の支えになっていたという恩田アナウンサー。経験者としての心境を交えながら、「転移や再発のことを考えると、手元にウィッグを置いておきたい気持ちがある。でも、“もう二度と、がんにならないぞ!”という気持ちを込めて、次の人にゆだねる選択もありだと思った」とコメントし、「次の人に“元気のバトン”を渡すのも大事ですよね。みんなで頑張りましょう!」と同じ境遇と向き合う人々に笑顔でエールを贈った。

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