“AI採点”導入で作業時間が60%減! 教師の負担が減り「生徒と一緒に過ごす時間が増えた」 名古屋市
残業時間が規定時間を上回るなど、教職員たちの働き方改革が求められる教育の現場。そんな課題を改善すべく導入されたのが、AIによる「デジタル採点システム」。
導入により、なんと作業時間が3分の1に軽減!その効果は先生たちの負担軽減はもちろん、先生と生徒の交流にも好影響を与えていた。
作業時間が大幅カット!先生に代わってAIがテストを採点
今月から名古屋市内の中学校・高校にて、AIを使用した「デジタル採点システム」が導入。答案をスキャンしてPDFに変換、データをパソコンに取り込むだけで、AIが自動でテストの採点をしてくれる画期的なシステムだ。システム導入後、1クラス1時間半~2時間かかっていた採点時間が、なんと30~40分まで短縮!
名古屋市立日比津中学校1年生担任・西村祐太先生は、「同じ問題だけ並べて採点ができるので、すごく効率がいい」と効率化による作業時間の大幅短縮を評価。目視での採点が必要な答案も一部あるが、記号問題の場合は自動採点が可能だ。
また、一気に点数を自動計算できる機能もミスの軽減に繋がっている。同中学校に勤務する他先生たちも、「正解の数を数えたり、点数の計算などを全部やってくれるので、めちゃくちゃ早い」と点数計算をAIが担ってくれることに安心感を示した。
デジタル採点は“教員のなり手不足”問題の改善策になるか
デジタル採点導入の背景あったのは、深刻化する“教員のなり手不足”。名古屋市教育委員会新しい学校づくり推進室・伊藤孝直さんは、「(教職員の働き方改革は)全国的な話だと思うが、“教員のなり手不足”も課題の一つだと捉えている」と話す。
実際に、名古屋市の教員採用試験の受験者数は、3年前と比べると200人近く減少。また、日々忙しそうな先生たちの姿に対して生徒たちからは、「(先生たちは)忙しそう」、「部活の練習に途中から参加する時もあって忙しいと思う」など多忙を極める先生たちを心身を心配する声も寄せられるなど、学校に関わるすべての人たちの共通問題となっている。
「成長を見られる時間が増えた」生徒たちとの時間も充実
デジタル採点の導入は、作業時間の大幅カット以外にも様々な好影響を与えている。「時間的に余裕で終わりました」と採点を終えた西村先生が向かった先は、部活動の指導。これまで部活動後も夜8時頃まで、学校に残って採点していたこともあったという。
時間的な余裕が増えた学校生活について西村先生は、「やっぱり生徒と一緒に過ごす時間や、生徒の成長を見られる時間があるといいなと思う。充実した日々を過ごしている」と笑顔で話す。新たなシステム導入により、軽減されつつある教職員たち負担。
しかし、“働き方改革”を遂げるまでは課題も多い。同中学校・松藤耕造校長は「業務自体の短縮や先生の数など課題はある。先生たちもゆとりがないとなかなか子どもを見られない部分もあるので、(デジタル採点システムが)そういう問題を解決していく一端になれば」と新システムへの期待を語った。
AIをどう使うのかを考える時代。“人でなければ出来ないこと”・“AIでも出来ること”を見極めることが重要だ。人々の生活を“守るため”に上手くAIを取り入れていける現場こそ、働く人々が自由な時間を取り戻すキッカケが生まれるのかもしれない。