鵜飼いの客にアイマスク!? 視覚を遮り音や匂いで楽しむ「まっくらうかい」 視覚障害のある人の働き口にも 案内役を務めた岐阜盲学校生「将来の夢の第一歩に…」
今年も5万人以上が楽しんだ、1300年以上の歴史を誇る「ぎふ長良川の鵜飼」。観覧船に乗り込むお客さんの姿をよく見ると、なぜかアイマスクを装着しています。人気の観光体験を“あえて見ない”ワケとは…?
視覚以外の感覚で楽しむ「まっくらうかい」開催!
9月24日、「ぎふ長良川の鵜飼」の観覧船乗り場に集まっていた、アイマスクをつけた人たち。おそるおそる観覧船へと乗り込んで行きます。
行われていたのは、視覚を遮り音や匂いで鵜飼いを楽しむイベント「まっくらうかい」。お客さんはアイマスクを着用し、案内役の声を頼りに、耳や鼻を研ぎ澄ませながら鵜飼いを体験します。
そもそも、なぜ視覚を使わない鵜飼いを企画したのでしょうか。
発案者の宮部賢二さんは、見えないからこそ感じられることもあると「まっくらうかい」を思いついたと話します。さらに、このイベントを新しい観光名物にして、視覚障害がある人の働き口にしたいという思いも…。
発案者 宮部賢二さん:
「(視覚障害のある人は)見えないところで自由にいろいろなことができるということで、活躍の場をつくれたらなと」
「夢への第一歩に…」 盲学校に通う高校3年生が案内役に挑戦!
将来の夢はラジオパーソナリティや声優になること。声を使った仕事をしたいという原田さんは「将来の夢の第一歩として、自分の良いきっかけにならないかなって」と、案内役に挑戦することに。
8月には、観覧船に見立てたテントの中で鵜飼いの音源を使った体験会が開催されましたが、ここでも原田さんは、一般の人を前にして特訓に励んでいました。
高校3年生 原田峻輔さん:
「視覚障害者ってこんな見え方なんだよって、少しでも知ってもらいたい。自分の感じた鵜飼いを精いっぱい、自分の知ってる限りの言葉で伝えていきたい」
いよいよ迎えた「まっくらうかい」本番。目標へ近づく一歩として案内役を務める原田さんは、上手くお客さんを言葉で案内することができるでしょうか。
「まもなく次の鵜舟(うぶね)がきますので、耳を澄ませて楽しんでください」という原田さんの言葉で、お客さんたちは耳を澄ませます。
その後も「後ろの方から背中側に通っていって」「結構近いですよ、今」「温かさを感じませんか?」と、どこに船があるのか、アイマスクをしたお客さんにも分かるように伝える原田さん。
音や匂いを感じようと感覚を研ぎ澄ましたお客さんたちからは「なんかパチパチって(音がする)」「あったかい。なんか見えるような気がする」「あ、匂いする。キュウリの匂い」という声が上がっていました。
こうして視覚以外の感覚だけで過ごす1時間半の「まっくらうかい」が終わりました。大役を果たした原田さんは…。
高校3年生 原田峻輔さん:
「楽しかったです。声を使った仕事がしたいので、このイベントが定期的に開催できるくらい、大きなイベントにできたらいいなと思います」
参加した人たちも「見えないのに見ようとしてたけど、見えないなら見えなくていいんだって思って。そしたらパチパチとダイレクトに聞こえたのが、すごく面白かったです」「目で見て体験している人も、また新たな視点で楽しめる」と、目で見るのとは違う鵜飼いの魅力を堪能したようです。