熊本地震本震から6年…「災害ケースマネジメント」とは?
熊本地震2度目の震度7の揺れがあった日から16日で6年。復興には、被災者一人一人の事情に応じて生活再建を支援する「災害ケースマネジメント」が取り入れられていました。今、被災者はどうしているのか、杉野真実アナウンサーが取材しました。
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■個別の事情に応じて支援「災害ケースマネジメント」とは?
2016年4月16日午前1時25分、再び起きた震度7の地震。停電で真っ暗の熊本に向け、誰かが見ているかもしれないと、東京のスタジオから呼びかけ続けました。
しかし、災害関連死を含め273人が犠牲に。伝え手として何かできないか、私が防災の学びを深めるきっかけになった地震です。
熊本市では、約5万4000軒の住宅が全半壊。約11万人が避難所に避難しました。あれから6年。熊本市では、仮設住宅に入居した人は、4年以内にほぼ全員が恒久的な住宅に移ることができました。これは「災害ケースマネジメント」という支援方法の成果とされています。
被災者は「避難所」から「仮住まい」の仮設住宅、そして「恒久的な住宅」へと移っていくのが一般的です。ただ、避難生活で生じる困難に、柔軟に対応できないケースもあります。「災害ケースマネジメント」とは、個別の事情にあわせて、被災者一人一人の支援計画をつくり、関係機関が連携して支援していく仕組みです。
例えば、障害がある人など、必要性の高い被災者から優先的に入居してもらいました。
復興に携わった熊本市住宅部・吉住和征部長「ずっと住めるところを1日でも早く求められていると思います。高齢の方の中でも高齢の方の優先順位、子育ての中でも子育ての優先順位をつけまして、被災地の住所を見て、すぐ近くのエレベーター付き団地とか、バリアフリー団地とかを優先的にマッチングしていった」
このように、より支援が必要な人の住まいを確保したことで、取り残される人が減ったのです。
■被災者の見守り活動「支援はまだまだ続く」
恒久的な住宅に移った被災者はその後、どうしているのでしょうか。熊本地震直後から支援を続ける一般社団法人「minori」の高木聡史代表理事を取材しました。
高木さんは現在、益城町で暮らす50人ほどの被災者の見守り活動をしています。この日、訪ねたのは井上小百合さん。井上さんは引っ越しを繰り返し、去年、ここに入居しました。今年1月に母親が亡くなり、一人暮らし。肺に持病があります。ここに入居してから、井上さんは、住まいへの不安が和らいだといいます。
井上さん「楽ですね。バタバタしなくてもすむからですね。自分のペースで暮らしていけるからですね」
しかし、高木さんは「被災者支援はまだまだ続く」と話します。
高木さん「移ったからそこで問題が終わってしまうというわけではない」「隠れた問題が出てきている中で、そこをお互いにケアしていく新しい仕組みづくりが始まっていると思います」
■「被災者支援の新しい仕組みづくり」必要なことは?
新しい仕組みをつくるには、何が必要でしょうか。大阪公立大学の菅野拓准教授にうかがいました。
――「災害ケースマネジメント」が日本でまだ定着できていない理由は?
菅野准教授「(災害は)全国一律の問題ではなく、ある地域にたまにしか来ないということになってしまう。被災自治体の方、地域の方は災害対応を頑張ってなんとか備えようとしますが、やはり全国だと一部の声にとどまってしまう」「制度にしたり、社会として誰、どこでもできるような形にしておくことが大事」