和醸良酒~進行する病と日本酒造りへの情熱
長野県諏訪市の酒造。杜氏・宮坂恒太朗さんは、13年前にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症。体は動かなくても車いすから指示、衰えない五感で酒を醸してきた。しかし病は進行。蔵は杜氏不在のまま仕込みを始める。宮坂さんが情熱を注ぐ酒造りと、支える家族とは。
酒蔵を守る9代目杜氏、宮坂恒太朗さん。全身の筋肉が次第に衰える難病・ALSを患っています。それでも家族で叶えたい夢があります。
宮坂恒太朗さん(人工音声)
「一緒に酒を飲みたい。話をしたい」
「酒ぬのや本金酒造」は創業267年。洗った米にどれだけ水を吸わせるかが、日本酒の味の決め手。この酒蔵がもっとも力を入れている工程です。
恒太朗さん
「手が動かないもんで、食べさせてもらって噛む具合でみたりしてますけどね」
杜氏が酒の味を頭で思い描き、蔵人(くらびと)たちをまとめています。恒太朗さん、味覚や嗅覚などの五感は衰えません。
恒太朗さん
「死ぬかもしれないってことが頭に浮かんだ時に、酒造りをやることが自分の生きる意味だと思ってましたね」
妻のちとせさん。ALSを発症して13年の夫と酒蔵を支えてきました。
ちとせさん
「一緒に恒太朗さんの仕事と走っていけるレールが見えてきた」
次第に衰えていく体…
「頑張れ!頑張れ!」
息を吹く力も弱くなりました。
長女にとって、パパの歩く姿の記憶はありません。
(過去のビデオの)恒太朗さん
「川に行こうと思います」
長女・奈那さん
「パパが普通にのんきに歩いている!」
「パパ声変わった?」
ちとせさん
「めっちゃ変わった」
奈那さん
「だよね」
「若い!」
ちとせさん
「恥ずかしくなってくるね」
酒造りの時期。本金酒造の杜氏は不在でした。恒太朗さん、のどに穴を開け、呼吸を楽にする「気管切開」の手術を受けていました。でも、酒造りは諦めませんでした。
ちとせさん
「おはようございます。何分にしますか」
蔵と病室をインターネットでつなぐ「リモート酒造り」です。
恒太朗さん(人工音声)
「前回のを見ながら調整」
ちとせさん
「前回のを見ながら調整だって」
米の写真を送り、恒太朗さんがベッドから判断を下します。
ちとせさん
「米は乾くからちょっと多めがいいって」
「(水から)上げるちょっと前に言ってよ。もうちょっと前に!」
恒太朗さん(人工音声)
「ありがとうございました」
ちとせさん
「どういたしまして。じゃあね」
蔵人・百瀬篤さん
「ここに恒ちゃんがいても、やりとりしても同じ緊張感があるんで、そんなに変わりない」
この年も、新酒ができあがりました。入院は長引きましたが、恒太朗さんも新酒を囲みます。
久しぶりの外出。長男の卒業式に出ることが、目標の1つでした。
凜太郎くん
「卒業証書」
恒太朗さん(人工音声)
「おめでとう」
凜太郎くん
「ありがとう」
「将来はうちの酒を世界一の酒屋にすることです」
その3か月後、残しておいた声帯を閉じる手術を受ける決断をしました。声が出せなくなりますが、再び口から飲んだり食べたりすることができます。
恒太朗さん(人工音声)
「いまはやることと、やりたいことがいっぱいで不安になる暇がありません。あっという間にここまで来てしまいました。」
前を向いて生きていかなくちゃいけん。
退院した恒太朗さん。したかったことがあります。自分の日本酒を飲み込み、味わう。
妻ちとせさん
「うまいですか? 本金」
みんなと同じものが食べられる幸せ。
妻ちとせさん
「ああ、食べたのね? そうずっと食べられなかったの」
恒太朗さん(PC画面)
「いいもんだなー、食べれるのって。」
良い酒があれば、和の心が醸されていく。
恒太朗さん(人工音声)
「未来には子供たちとああしたいとか、それはあるんですよね。一緒に酒を飲みたい、話をしたい。そしてこれは夢の夢、家族全員で酒を造ること。一度でもできたら面白いですね」
2023年1月15日放送 NNNドキュメント'23『和醸良酒』をダイジェスト版にしました。
宮坂恒太朗さん(人工音声)
「一緒に酒を飲みたい。話をしたい」
「酒ぬのや本金酒造」は創業267年。洗った米にどれだけ水を吸わせるかが、日本酒の味の決め手。この酒蔵がもっとも力を入れている工程です。
恒太朗さん
「手が動かないもんで、食べさせてもらって噛む具合でみたりしてますけどね」
杜氏が酒の味を頭で思い描き、蔵人(くらびと)たちをまとめています。恒太朗さん、味覚や嗅覚などの五感は衰えません。
恒太朗さん
「死ぬかもしれないってことが頭に浮かんだ時に、酒造りをやることが自分の生きる意味だと思ってましたね」
妻のちとせさん。ALSを発症して13年の夫と酒蔵を支えてきました。
ちとせさん
「一緒に恒太朗さんの仕事と走っていけるレールが見えてきた」
次第に衰えていく体…
「頑張れ!頑張れ!」
息を吹く力も弱くなりました。
長女にとって、パパの歩く姿の記憶はありません。
(過去のビデオの)恒太朗さん
「川に行こうと思います」
長女・奈那さん
「パパが普通にのんきに歩いている!」
「パパ声変わった?」
ちとせさん
「めっちゃ変わった」
奈那さん
「だよね」
「若い!」
ちとせさん
「恥ずかしくなってくるね」
酒造りの時期。本金酒造の杜氏は不在でした。恒太朗さん、のどに穴を開け、呼吸を楽にする「気管切開」の手術を受けていました。でも、酒造りは諦めませんでした。
ちとせさん
「おはようございます。何分にしますか」
蔵と病室をインターネットでつなぐ「リモート酒造り」です。
恒太朗さん(人工音声)
「前回のを見ながら調整」
ちとせさん
「前回のを見ながら調整だって」
米の写真を送り、恒太朗さんがベッドから判断を下します。
ちとせさん
「米は乾くからちょっと多めがいいって」
「(水から)上げるちょっと前に言ってよ。もうちょっと前に!」
恒太朗さん(人工音声)
「ありがとうございました」
ちとせさん
「どういたしまして。じゃあね」
蔵人・百瀬篤さん
「ここに恒ちゃんがいても、やりとりしても同じ緊張感があるんで、そんなに変わりない」
この年も、新酒ができあがりました。入院は長引きましたが、恒太朗さんも新酒を囲みます。
久しぶりの外出。長男の卒業式に出ることが、目標の1つでした。
凜太郎くん
「卒業証書」
恒太朗さん(人工音声)
「おめでとう」
凜太郎くん
「ありがとう」
「将来はうちの酒を世界一の酒屋にすることです」
その3か月後、残しておいた声帯を閉じる手術を受ける決断をしました。声が出せなくなりますが、再び口から飲んだり食べたりすることができます。
恒太朗さん(人工音声)
「いまはやることと、やりたいことがいっぱいで不安になる暇がありません。あっという間にここまで来てしまいました。」
前を向いて生きていかなくちゃいけん。
退院した恒太朗さん。したかったことがあります。自分の日本酒を飲み込み、味わう。
妻ちとせさん
「うまいですか? 本金」
みんなと同じものが食べられる幸せ。
妻ちとせさん
「ああ、食べたのね? そうずっと食べられなかったの」
恒太朗さん(PC画面)
「いいもんだなー、食べれるのって。」
良い酒があれば、和の心が醸されていく。
恒太朗さん(人工音声)
「未来には子供たちとああしたいとか、それはあるんですよね。一緒に酒を飲みたい、話をしたい。そしてこれは夢の夢、家族全員で酒を造ること。一度でもできたら面白いですね」
2023年1月15日放送 NNNドキュメント'23『和醸良酒』をダイジェスト版にしました。