日本酒ブーム、今こそ“多様化”がポイント
世の中で議論を呼んでいる話題について意見を聞く「opinions」。今回の話題は「和食ブーム 日本酒を海外へ」。世界に通用する日本酒開発に挑む稲川琢磨氏(30)に聞いた。
帝国データバンクの調査によると、日本酒の製造を主とする1000社あまりの2016年度の売上高の合計は、5年連続で前年度を上回った。和食ブームに乗って日本酒の輸出が年々伸びているという。
また、味や香りにこだわった高級な日本酒の売り上げが顕著で、売上高上位の会社を見ると、人気の日本酒「獺祭(だっさい)」を製造する旭酒造の売上高は、前年度と比べて65%増で100億円を超えた。
――この話題についての意見を書いていただきました。フリップをお願いします。
「多様化」。
――多様化とは。
確かに日本酒は少しブームがきていて、伸びている感じがします。実際、過去にも淡麗辛口ブームとか、吟醸酒ブームとか、最近では、甘酸ブームみたいなものがきているんですが、その一方でやっぱりブームというのは、どこかのタイミングで去っていくものと考えていて、日本酒というのは、長い歴史の中で見ると、少し落ちてきているという部分はあるんですね。
その斜陽産業というのを復活させるためには、すごく重要なキーワードとして、一過性のものではなく、多様化を生んでいくというところが、僕は大切だと思っています。
例えばなんですが、ビールの場合だったら、今までどっちかというと工業生産的な形で伸びてきて、クラフトビールという市場が立ち上がって、昔ながらのクラフトマンシップを持った職人がつくるようなお酒が出てきていて、もっともっとフレーバービールとか、広がりが増えていくんじゃないかと思っています。
ワインでも自然派ワインとか、そういった流れがある中で、日本酒の場合に関しても、これからもっと多様性のあるようなお酒というものをつくっていくことが必要じゃないかと考えています。
――確かにワインやビールは聞きますが、日本酒はまだそういったもの出ているってあまり聞いたことないですね。
そうですね、さきほどの獺祭さんのような企業もやっぱり純米吟醸酒というものが、ブームとしてあったので、そういったものをめがけてつくっていらっしゃる方が多いんですけど、弊社の場合、まったく日本酒になじみのない方でも、海外の方も含めて楽しめるようなお酒をつくろうと思っております。
例えばなんですけど、今年開発したボタニカルな日本酒というものがあるんですけど、これは発酵段階で、ゆずとか山椒(さんしょう)とか、和のハーブとかスパイスを加えるというつくり方をしておりまして、そういったところで新たな消費というのが期待できるんじゃないかと思っております。
――それは新しい試みですね。
■稲川琢磨プロフィル
世界に通用する日本酒開発に挑む。社会人1年目に「人生を変える日本酒」に出会い、2016年に外資系コンサルティング会社を退職して、「WAKAZE(ワカゼ)」を設立。現在は山形県鶴岡市に移住し、日本から世界のマーケット開発に挑んでいる。
【the SOCIAL opinionsより】