【解説】韓国・尹大統領が史上初現職での拘束 時間かかった背景に“大統領の番犬”の存在…逮捕となるのか?今後の捜査の行方
韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」をめぐり、合同捜査本部は史上初めて現職の大統領の身柄を拘束しました。一方、尹大統領は国民に向けて捜査機関を非難する異例の動画を公開。韓国で混乱が広がっています。
(中谷しのぶキャスター)
「尹大統領ですが、内乱を主謀した疑いで身柄拘束のために強制捜査が行われました。1月3日に1回目、合同捜査本部約150人と、大統領側200人が立って、約5時間半睨み合いが続いたんですが、断念という形になりました。
そして、きょう15日、2回目が行われ、捜査本部の捜査員が前回150人から1000人に増やして投入され、約2時間半で公邸に突入、身柄拘束ということになりました。
今後は48時間以内に逮捕状が請求されるかがポイントになるわけなんですが、2時間半で身柄が拘束されたということで、前回に比べて少しトーンダウンしたように感じるのですが、この背景には何があるんでしょうか?」
(高橋克哉 解説デスク)
「圧倒的に合同捜査本部側の人が増えたということです。前回、大統領の公邸の中、かなり内部まで来てるんですけれども、人数が大統領側が多かったということで膠着状態になって諦めました。今回は1000人ですから、5倍ぐらいの数で乗り越えたということです。
あと韓国メディアの報道などで言われているのは、大統領側の警護側にかなり疲れも出ていて、『捜索を妨害したら逮捕するぞ』とか、合同捜査本部側が色んな作戦を練ったというふうにも言われています」
(中谷キャスター)
「なので今回は、それほど抵抗なく拘束まで至ったということですね。また、尹大統領自身もメッセージを発していますよね」
(高橋解説デスク)
「そうですね、午前11時ぐらいに公開しています。あくまでも、今回の捜査というのは不法なんだけれども、流血事態を防ぎたいということで、やはり民主主義国家の組織同士がいろいろガチャガチャやって、ケガ人や場合によっては犠牲者が出るとか、そういうことは国の体としては避けたいという、大統領の思いが伝わってくると思います」
(中谷キャスター)
「48時間以内に逮捕状が請求されるかというところが今後のポイントなんですが、ここに至るまでの背景には色々ありますよね」
(高橋解説デスク)
「戒厳令を出してから1か月以上、こう着状態が続いているんですけど、なんといっても大きな理由の一つが、この大統領をどうやって守っていくかという韓国特有の制度があると思います。
韓国大統領側の警護体制について、こういう風に言われているんですね。『大統領の番犬』と。
これどういうことかといいますと、韓国は大統領を誰が警護しているかというと、『大統領警護庁』という独立した役所があるんです。日本の場合ですと、首相は警視庁のSPが警護する、あるいは警視庁の警察官です」
(高橋解説デスク)
「ところが韓国の場合は独立した組織の人たちが大統領を守るということなんです。職員の数は500人以上いますし、大統領や家族、場合によっては外国の要人なんかも警護するということなんです。
その独立した組織の特徴的なところが一つありまして、警護庁のトップ長官は大統領が任命できるんです。今回、尹大統領の場合も、高校の先輩ということで気心が知れたというか、自分を守ってくれる人を選んでいるということなんです。
なぜこういう組織ができたかというと、これはやっぱり韓国の歴史的な背景があると思います。1960年代、朴正煕(パク・チョン・ヒ)さんが軍事クーデターで大統領になった後に、やっぱり軍事政権を作ると国家の組織であっても、『またクーデターが起こるかもしれない』ということで、自分の身を守るためには独立した組織で自分のことを最後まで守ってくれる信頼できる人を長官に据えて守っていかなければならないということで作られ、これが今もなお続いていると」
(高橋解説デスク)
「そして、なぜ今も続いているかというと、大きいところは朝鮮戦争です。71年前に休戦にはなってますけど、まだ終わっていないということで、北朝鮮が不穏な動きをしているというのはここで申し上げるまでもないと思うんですが、やっぱり日本とは異なる韓国の政治状況というのが、こういう大統領の警護組織の特徴にも現れているということだと思います」
(中谷キャスター)
「そんな中でこの日本への影響も懸念されますよね」
(高橋解説デスク)
「なんといっても来週トランプ次期大統領が就任してしまうと、やっぱりいろんな要求というのを韓国・日本に突きつけてくると予想されるのですが、韓国がこうやって混乱していてなかなか韓国と交渉ができないということになったら、日本にその分の意識が向いてくるという可能性も十分あるので、決してこれは対岸の火事ではないと思います」