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戦後80年 エノラ・ゲイ副操縦士との出会いが「私を変えた」 オバマ元大統領から直筆の手紙 被爆者・近藤紘子さん【NEVER AGAIN・キノコ雲の上と下】

2025年2月4日 8:00
戦後80年 エノラ・ゲイ副操縦士との出会いが「私を変えた」 オバマ元大統領から直筆の手紙 被爆者・近藤紘子さん【NEVER AGAIN・キノコ雲の上と下】

広島テレビの被爆80年に向けた取り組み『ネバーアゲイン』のひとつ「キノコ雲の上と下」。被爆者と、原爆を投下したアメリカの双方の視点から80年前の真相に迫ります。アメリカ兵と対面した被爆者の女性のもとに、2024年に届いた一通の手紙。それは、アメリカとの間で紡いできた「絆の証」でした。

兵庫県三木市の教会で暮らす、被爆者の近藤紘子(こんどう・こうこ)さんです。

2024年11月に80歳になった近藤さんに、アメリカのオバマ元大統領から手紙が届きました。

■近藤紘子さん
「いいでしょ?かっこいいでしょ?バラク・オバマ。これ彼のサイン。嬉しかったわよ、嬉しかった。「80の誕生日覚えてた!」と思って。ねえ。」

話は、80年前の近藤さんの被爆体験にさかのぼります。広島流川教会の牧師の娘として生まれた近藤さんは、生後8か月の時に、爆心地から1.1キロの場所で母親に抱かれたまま、建物の下敷きになりましたが、奇跡的に一命を取り止めました。

戦後、教会には、原爆で傷ついた多くの人たちが集まりました。そこで、ケロイドを目の当たりにした近藤さんは、アメリカ兵への憎しみを募らせていきました。

■近藤紘子さん
「わかった。悪いのは、あの原爆を落とした飛行機に乗っていた人たち。あの人たちさえ落とさなければ。絶対見つけ出して、パンチするか噛み付くか蹴飛ばすか絶対にして、敵を討つ。」

被爆から10年後、被爆者の救済活動の一環で、アメリカの番組に家族で出演しました。そこで対面したのは、広島に原爆を落とした「エノラ・ゲイ」副操縦士のロバート・ルイスでした。

■近藤紘子さん
「ずっと思ってた敵を、やっつけようと思った1人が、目の前にいる!だから、そのおじさんをずっと睨みつけていた。」

ところが、目にしたのは思いもよらぬ姿でした。

■「エノラ・ゲイ」副操縦士 ロバート・ルイス氏
「後に飛行日誌に記しました。私たちは、いったい何てことをしたのか。」

■近藤紘子さん
「それを言ったあと、彼の目から涙がこぼれ落ちるのをしかと見た。私が憎むべきは、飛行機に乗っていた人、キャプテン・ルイスではない。私が憎むべきは、戦争を起こす人間の心の中の悪。それは、今でも彼に本当に感謝している。私を変えてくれた。」

近藤さんは、高校を卒業した後、アメリカの大学に進学します。その後日本に戻り、30歳の時、後に牧師となる夫・泰男さんと結婚。そして40歳ごろから、平和活動を始めました。

憎しみを許しに変えたルイスとの出会いを、語り継いできました。

■近藤紘子さん(講演会)
「憎むのはこの人ではなく、私が憎むべきは、戦争を起こす人間の心の中の悪。戦争を憎まなければいけない、ということが分かった。」

2016年、広島を訪れたアメリカのオバマ大統領が演説で触れたのは、近藤さんのエピソードでした。

■オバマ大統領(当時)
「被爆者の女性は、原爆を落としたパイロットを許しました。憎むべきは、戦争そのものであると気づいたからです。」

あれから8年。80歳を迎えた近藤さんのもとに届いたのが、オバマ元大統領からの手紙でした。

■オバマ元大統領の手紙(一部抜粋)
「あなたは、私たちに多くの影響を与えています。80歳の誕生日おめでとう。あなたに、もっと沢山の幸せがありますように。」

■近藤紘子さん
「やっぱり自分の手で書いたものっていうのは大切なので、そういうのはやっぱり嬉しい。まして、彼なんか忙しいのにね。これだけの文章って言うけども、やっぱりそれすごい。私にとっては、嬉しかった。」

被爆から80年。近藤さんには、心残りがあります。それは、「エノラ・ゲイ」副操縦士のロバート・ルイスに感謝の思いを伝えられなかったことです。

■近藤紘子さん
「息子さんにもしも会えるんだったら、きっと私と同じぐらいかな。年がわからないけどね。お会いしたい。お会いして、どういう気持ちだったか。それで彼に会うことによって、お父様に会うことによって、私は変えられた(と伝えたい)。」

1月23日。夫の牧師引退を機に、平和公園の近くに引っ越してきた近藤さん。ルイスとの出会いを胸に、広島から平和を訴える決意です。

■近藤紘子さん
「だんだん調子が悪くなるから、平和公園の近くなんだから、という思いは元気をもらえるような気もするし。帰って来れてよかったなと思ってる。果たして、あとどのくらいできるかわからないけど、許される限りやりたいなと思っています。」

最終更新日:2025年2月4日 8:00
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