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「103万円の壁」引き上げで広島市は300億円減収と試算 引き上げ額はどう決める?【テレビ派・長島カイセツ】

2024年11月22日 19:19
「103万円の壁」引き上げで広島市は300億円減収と試算 引き上げ額はどう決める?【テレビ派・長島カイセツ】

広島テレビの長島清隆解説委員が、注目のニュースを分かりやすく分析・説明する『長島カイセツ』です。総選挙でも注目され、今大きな議論となっている「103万円の壁」についてお伝えします。

「103万円の壁」引き上げにより、広島市は税収が300億円減るという試算を明らかにしました。引き上げ額の根拠には「最低賃金上昇率」や「物価上昇率」など、さまざまな手法があり、国がどのようなに議論を進めるか注目されます。

先日、「103万円の壁」を引き上げることが正式に決まりました。しかし、引き上げの額や、その税収が減った分をどのように穴埋めするかについては、これからとなります。

■国民民主党 玉木代表(「10月14日放送 news zero」)
「103万円の壁を上げないと、いくら最低賃金あがっても、上限があって稼げないから、我々178万円まで無税で働けるようにするので、もっと稼いでください。」

国民民主党は「103万円の壁」の引き上げを掲げ、総選挙で大躍進し、与党に主張を飲ませた形です。

■自民党 小野寺政調会長
「いわゆる103万円の壁については、令和7年度税制改正の中で議論し、引き上げる。」

「103万円の壁」について説明します。所得税には控除があり、会社員の場合は、経費に相当する給与所得控除(最低55万円)と、基礎控除48万円を合わせて、103万円となります。所得税は、103万円を超えた部分に関して、課税されることになります。

これに対して国民民主党の案は、103万円に75万円プラスして、178万円にするというものです。そうすると、税金がかかる部分が少なくなり、その分手取りが増えることになります。

控除合計を国民民主党の案の178万にまで引き上げた場合、減税額は年収別でどのくらいになるかという大和総研の試算では、年収200万円の場合、減税額が8万2千円となり、その分の手取りが増えることになります。減税額は年収が増えるほど大きくなり、年収800万円の場合、22万8000円の減税となります。つまり、高所得になればなるほど、減税額が大きくなります。

一方で、減税するということは、税収が減ることにもなります。国税である所得税と、地方税である住民税の控除額を同様に引き上げた場合には、国と地方で合わせて7兆3000億円の減収になると試算されています。これは、国にとっても地方にとっても、非常に深刻な問題です。

広島市は、年収の壁が178万円に引き上げられた場合、300億円の減収になるという資産結果を明らかにしました。 認定こども園や公立保育園運営費などの「子ども子育て予算」に匹敵する金額で、影響は大きいと指摘します。

■広島市 松井市長
「働き方改革とかインフレが進む中で、適切な措置ということは異論はないけれども、(国が)措置の仕方をどうするかを明らかにしないでやるのは、非常に心配だと。」

控除合計103万円は、29年前の1995年から変わっていません。国民民主党が掲げる178万円の根拠として、東京都の最低賃金を基準にしています。1995年の最低賃金から、今は73%上昇しています。そうすると、103万円に対して73万円分をプラスすると、75万円増えることから「壁は178万円」という計算をしています。しかし、最低賃金ではなく物価上昇率をベースとする考え方もあり、1995年と比較すると物価上昇率は10%程度となり、その場合の年収の壁は113万円余りとなります。

租税法が専門の広島修道大学法学部の奥谷健教授は、103万円のうちの基礎控除と給与所得控除の意義を考えると、壁の引き上げは当然必要だと指摘します。

■広島修道大学法学部 奥谷健教授
「基礎控除は、憲法25条の生存権の税法上の現れであると言われています。これが48万円あります。月4万円で最低限度の生活が営める人は、おそらくほぼいないだろうと思います。」

その上で、上昇率についての今の議論には、疑問を呈します。

■広島修道大学法学部 奥谷健教授
「ただ、今の議論は最低賃金の上昇率に基づいてということで、1.73倍というように議論がされている。そこはやはり対象とするというか、比較対象とするものは、物価を基準に考えていかないといけないのではないかな、というところがあります。」

今は「103万円の壁」というフレーズが先行しているところもあり、それぞれの控除の意義や、「何のためにあるのか」という目的が少し置き去りになっているようにも感じられます。財源の問題と同時に、誰のために、どのような意図で減税をするのか、しっかりとした議論も必要です。

【2024年11月22日放送】

最終更新日:2024年11月25日 16:18
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