富山湾では能登半島地震のあとシロエビなど記録的な不漁 何が起きたのか
水産資源が豊富なことから”天然のいけす”と呼ばれる富山湾についてです。
元日の能登半島地震のあと、地元特産のシロエビやベニズワイガニが記録的な不漁となるなど各地で異変が確認されています。
海で何が起きたのか。岡川記者のリポートです。
ホタルイカ漁が盛んな、富山市の水橋漁港です。
今年1月、沖合5か所に設置されていた定置網の全てが破れたり、網を固定する重りの石がなくなったりしました。
水橋漁民合同組合 安倍久智組合長
「やっと12月30日に(定置網が)完成したばかりで、初起こし(仕事始め)が1月4日からだったんですよ。地震発生して、1回も漁できずに回収してきたという感じです」
なぜ、定置網が被害を受けたのか。
水橋漁民合同組合は、富山大学や民間企業と共同で、水中ドローンを使った撮影や音波による地形の測量を始めました。
今年6月の調査で撮影された映像です。水深は、およそ140メートル。海底にある谷に、切り立った崖ができていました。
Q「これは地震後の地形ですか?」
富山大学学術研究部都市デザイン学系立石良准教授「そうです ここは海底地滑りが起こった場所だという風に理解しています 崖の高さが5mぐらいありますので、およそ5mはここのところは落差ができた」
現地を調査した、災害地質学が専門の富山大学・立石良准教授です。
海底地滑りとは、海底の斜面が地震などによって滑り落ちる現象。海面が急激に変動することで、津波も引き起こします。
測量で明らかになった、地震発生後の水橋沖の海底です。
定置網のすぐそばにある、紫色のエリアは水深が深いことを示してます。
ここを、水中ドローンで撮影したところ、崖の高さは、およそ5mあり、横幅およそ50mにわたって地滑りが起きていたことがわかりました。
富山大学 立石良准教授
「(海底)地滑りっていうのは、割と硬い岩盤の方で起こる現象なんですね ここを見ると、かなり硬い岩盤でできていますので、そうしたものの場合はやっぱりバキッと割れるので、そういう垂直に切り立ったような崖ができている」
崖下には、崩れた岩の塊や土砂が散乱していました。
定置網が破れたり重りの石がなくなったりしたのは、地滑りによって海底の地形が急激に変化したためとみられています。
さらに、海底地滑りは、水橋沖以外でも富山湾の様々なところで発生していました。
その証拠となるのが、当初の想定より早く到達した津波です。
水橋沖から西へおよそ6キロの神通川河口では、地震発生からわずか3分で高さ80センチの津波が到達していました。
東北学院大学などの分析によれば、富山湾の少なくとも5か所で津波を引き起こす大規模な海底地滑りが起きていました。
震源地に近い能登半島の北側よりも、富山湾は海底地滑りが起こりやすいといいます。
富山大学 立石良准教授
「やっぱり全然、海の深さとか地形の険しさとかが富山湾の方がはるかに起こりやすい条件なので 富山湾の急峻な地形というのも、あの海底谷自体がそもそもこういう崩壊によって広がってきた、形成されてきた、という風に考えた方がいいのかなという感じがします」
深さ1000メートル以上の急峻な谷が広がる、富山湾特有の海底地形。
ベニズワイガニやシロエビはこの地形によって育まれてきましたが、その地形や水質が大きく変わったことで数が減り、不漁につながっていると県水産研究所などはみています。
富山大学 立石良准教授
「大きく地形が変化した場所もあると思うので、そういったところで漁業をするにあたって、より注意しなきゃいけない場所っていうのが新たに抽出できたりするといいんじゃないかなというふうに思っています」
立石准教授らは、富山湾のほかの海底でも調査を進め、どこで地滑りが起きているかなどの情報を漁業者へ提供していきたいとしています。