散居村を次の世代に 関係者が協議会設立 富山県
こちらは田植えのころの砺波平野の夕景です。散居村の美しい風景は全国的にも知られていますが近年は少子高齢化の影響で屋敷林の維持管理が困難になり、空き家も増えています。そんな中、地域住民や関係団体が協力して散居村の景観を次の世代に引き継いでいこうと、先月、民間の組織が設立されました。梅本記者のリポートです。
砺波平野に広がる散居村をかたちづくっているのは、住宅のまわりに植えられた屋敷林です。
夏は涼しく、冬には風雪から家屋を守り、木材としても利用されるなど、暮らしに深く根付いてきました。
しかし近年は少子高齢化が進み、屋敷林の維持管理が困難となり、伐採されたり、空き家とともに放置されたりするケースが増えています。
関係者が協議会設立「守りきれないところまで来ている」
先月下旬、散居村の生活文化は日本の暮らしの変遷を物語る貴重な文化だとして、この地域で活動する農業団体、自治会、屋敷林の保全団体などが集まり、「となみ野散居村サステナブル推進協議会」を設立しました。
となみ野散居村サステナブル推進協議会 林口砂里さん「個人の所有の家であり土地であるから、個人の責任でなんとかするしかないという考え方がわりと大部分を占めているかと思うが、でもそれでは守りきれないところまで来ていて。活動を続けていく中で、地域の方たちからやっぱり推進母体となる組織をつくるべきだという声が上がってきたので」
倒木やクマ、高齢化…浮かび上がる課題
散居村をめぐっては、強風による倒木への対応や、生息域を拡大するクマが隠れ場とすることへの懸念、そして、住民の高齢化に伴う移動手段の確保など、維持に向けては様々な課題が浮かび上がっています。
取り巻く環境が厳しさを増す中、小矢部園芸高校専攻科の卒業生と在校生らによるボランティア団体、「カイニョお手入れ支援隊」は、協議会の設立前に、観光客を対象にした屋敷林のせん定体験を行いました。
こうした企画が、今後の取り組みを後押しするきっかけになると考えています。
カイニョお手入れ支援隊 松田憲代表「観光の一環として今回、実際に参加していただいた」「いろんな形での資源として見ていただけるのは、やっぱりそれだけ価値があるというのは、皆さんに知っていただければ、やっぱり守っていこうという機運は強くなると思うんですね。どんどんどんどん、こういう輪が広がっていけばいいなと」
協議会では、伐採した枝から作るアロマオイルの商品化や、生活道具を高岡銅器で再現するなど、メンバーのつながりをいかして散居村の文化と経済活動を結び付ける取り組みを進めています。
散居村の維持へ「ビジネスや人材を呼び込む活動も」
また、空き家の有効活用に関する情報提供を行い、散居村を維持していくための仕組みづくりを目指しています。
林口さん「精神的な文化、これまで培ってきたものを大事にしていくと同時に、それを続けていけるように経済活動をしっかりしていくことが重要だと思っています。新しいビジネスであったり新しい人材というものを、この地域に呼び込めるような、そんな活動もしていきたいなと思います」
さらに、保存や活用に関する事業などに国からの補助金が受けられる、重要文化的景観の認定を目指します。
となみ野散居村サステナブル推進協議会 新藤正夫会長「重要文化的景観というのに、もし、できれば、指定していただいて、地域住民が一体となってそれ(散居村)を維持していけたらいいなあと思っています」