治療費か教育費か…がん患者の声「皆さんに自分事として考えてほしい」、”高額療養費制度”自己負担引き上げ検討
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医療費の負担を軽くする高額療養費制度について、政府は患者の自己負担の引き上げを検討しています。
宮城県内のがん患者の団体は、治療を控える人が増える可能性があるとして、国に慎重な対応を求めています。
すい臓がん患者の団体の代表を務める濱端光恵さん
「こちらが入院の時で、こっちは抗がん剤などのお薬の薬局の分。検査などもこんな感じでかかっている」
すい臓がん患者とその家族でつくる団体「ぶどうの木」の代表・濱端光恵さんは、自らも2017年にすい臓がんと診断され、入院と抗がん剤の治療を経験しました。
3週間ほどの入院と手術、そして抗がん剤の投与を半年続け、再発はしていないものの定期的に検査を続けています。
入院・手術の費用は約200万円かかるところを請求金額は7万2980円。
こうして患者の医療費を抑えているのが、国の「高額療養費制度」です。
濱端光恵さん
「告知されたとき娘が大学4年生で、学費も払い終えて一安心というところだった。そんなにお金のことは正直 心配していなかった。というのも、高額療養費制度で戻ってくる意識があったので、そこまで負担はないだろうと。それでもやっぱり抗がん剤のときは月2万5千円とか薬代だけで払っているときは痛いなあと思いながら生活していた」
現在の制度では、年収500万円の人は月に100万円の医療費がかかった場合、公的医療保険で窓口負担は3割の30万円となります。
さらに、「高額療養費制度」によって21万3000円の払い戻しがあり最終的な患者の負担はおよそ8万7千円となります。
政府が検討する案では、2027年8月の段階では年収510万円以上の人で4割ほど、年収650万円以上の人は7割ほど自己負担が引き上げられます。
濱端さんは、すい臓がん患者とその家族の会を立ち上げ、患者だからこそわかる悩みなどを話し合い支えあう活動を行っています。
病と向き合いながら家族と生きる日々をおさめた患者たちの写真展を、開催してきました。
すい臓がんは若い患者も多く、医療費の負担が増えることは深刻な悩みとなっているといいます。
濱端光恵さん
「すい臓がんの患者会は若い患者が多くて、子どもが小さい方もいる。治療に対してお金をかけるのか子どもの教育費にかけるのか、どっちが大切かと悩む方もいる。治療費の問題は大きい。この300万円があれば、子どもを大学に出せるとかと思ったら、母親としては子どもに出したい気持ちもわかるし、でも一方子どもだったら自分が大学に行くよりお母さんに生きてもらいたいとか、そのくらい真剣な話じゃないか」
今回の「高額療養費制度」の見直しについて、国は制度自体を維持するために必要としています。背景にあるのは、高齢化や医療の高度化によって医療費が増加傾向にあることです。
政府は、がん患者らの声や野党の反対を受けて、長期にわたって治療を継続する患者の負担引き上げは凍結するものの、その他の約8割にあたる患者については負担を引上げる方針です。
濱端さんは「高額療養費制度」の変更は、がん患者に限らず多くの人の意見を聞き慎重に検討を進めてほしいと訴えています。
濱端光恵さん
「いま健康でも、あしたもしかしたら何が起こるかわからないので、みなさんに自分事として考えていただけると嬉しい。治療をやめてしまう人が出ないように、なるべくみんな元気に生きていけるように、弱者のことを考えて決めていただきたい」
「高額療養費制度」を利用する患者は、国内に1000万人いるとされています。
がん患者だけの問題ではなく、その他の病気や交通事故によっても誰もが利用する可能性があります。