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【特集】<総合診療医とは?>医師自ら農業・漁業を体験し震災後の地域支える 暮らしの理解がよりよい医療につながると信じてー(宮城・石巻市雄勝町)

2024年8月21日 20:15
【特集】<総合診療医とは?>医師自ら農業・漁業を体験し震災後の地域支える 暮らしの理解がよりよい医療につながると信じてー(宮城・石巻市雄勝町)

震災後、急激に人口減少し高齢化も進む宮城・石巻市雄勝町で、『総合診療医』として地域を支える医師がいる。
地域の暮らしを理解することがよりよい医療につながると、能郷や漁業体験も積極的に行う姿を、取材した。

海と山に囲まれた石巻市雄勝町。
人口は約1000人、高齢化率はおよそ6割だ。

地域医療を支える医師がいる。
末永拓郎さん(44)。

末永医師)フラフラね。なんだろ、立ち眩みみたいな感じ?
患者)ではないんだね…

患者の症状を、丁寧に聞き取る。

この日の患者は、若い頃 硯職人だったという95歳の男性。

末永医師)ほかに気になっているところ、なかったですか?

1人暮らしの男性を、気にかける。

患者「この先生は大変良い先生だ」

末永医師は、雄勝町で週1回 訪問診療を行っている。

末永医師
「継続的に見て評価しないと分からないことがある」

高台にある石巻市立雄勝診療所。
多い日には、30人以上の患者が訪れるこの診療所で、末永さんは外来診療も行う。

患者
「たばこもやめたから」

患者とのコミュニケーションを、大切にしている。
末永医師は、幅広い分野にわたる診療を1人で行う『総合診療医』だ。

『総合診療医』とは、専門化する医療を見直し、患者に寄り添った診療が必要であるとして、2018年に誕生した。

高齢化が進む中、その必要性は高まっているが、若い医師のうち『総合診療医』を目指すのはおよそ3%に留まる。

末永医師
「特に高齢化が進んだ土地では、医療機関にかかれるかどうかはそこに住める条件の一つになる。もしここがなかったら、多分 雄勝地区で暮らせないと思う人が相当数出てくる」

患者
「歳取ってから、石巻行くのも大変。ここの病院は近いから」

仙台市出身の末永医師が、地域医療を志したきっかけは、東日本大震災だった。
当時は、鳥取県の大学に通っていた。

末永医師
「ちょうど私が大学5年の3月に 東日本大震災で、仙台とかに津波が来ている映像が繰り返して流れて、行かなきゃいけないと」

震災前、雄勝町には市立病院などがあったが、全て被災。
震災から半年後、地域医療の砦として雄勝診療所は設置された。

初代所長の小倉健一郎さんは、末永医師が地域医療を志すきっかけとなった存在だ。

小倉医師
「ここは雄勝の最初の建物なので、 復興の第一歩だと思っている。診療でなくても、お茶でもしていただいて、気楽に立ち寄ってもらう場所にしたい」

末永医師は、震災1年後 医療ボランティアとして雄勝町を訪れた際に小倉さんの活動に触れた。

末永医師
「 住民の幸せを少しでも増やすための活動をしているのをみて、こういうお医者さんってすごいなと思った」

『総合診療医』として、心がけていることがある。
それは、地域の暮らしをよく理解すること。

農業体験もその一つ。
この日、一緒に草刈りを行ったのは若手医師の勝田義久さん。
石巻市立病院に勤務し、末永医師からも指導を受けている。

勝田医師
「(石巻は)農家も多いし漁師も多い印象。(Q患者もそういう方が多い?)そうですね」

『総合診療医』を志す上では、勉強で得られない経験が医療の質向上につながると、末永医師は考える。

末永医師
「(Q生活を知ることは医療にどう役立つ?)(農家は)すごい運動量が多い時期と少ない時期があって、だけど同じ食事を摂りたいから、この時期は太ってきちゃうと想像できるようになる」

勝田医師
「私たちも病院の中だけじゃなく 視野を広げないといけない」

勝田医師は、雄勝診療所でも週1回勤務をしている。

患者)この薬が足りない
勝田医師)このお薬は前に変えたんだよね。前、脈がゆっくりだったんで」

患者からの質問にも一つ一つ答えながら、丁寧な診察は末永医師から教わった通りにー。

勝田医師
「ここは町に一つしかない診療所なので、そういう責任もあるなと思いながらやらせてもらってました」

勝田医師も『総合診療医』を目指していて、末永さんと共に祭りや漁業体験にも積極的に参加するなど地域の暮らしを学ぼうとしている。

高齢化が進む雄勝町。
末永医師は、一つの病気だけでなく家族との関係や地域の暮らしを理解した上で、患者の健康状態を多角的に診る『総合診療医』だからできることがあると考えている。

末永医師
「治療をすべてやってうまくいかなかったとしても、がんで弱って亡くなっていくにしても、それは総合診療としては最後までやれることがある。不安がすごい強い人は入院がいいかもしれないし、入院じゃなくて家族のそばにいたい、自分が建てた家で最後まで過ごしたい場合だったら、訪問診療で最後まで家で過ごして死ぬことも私たちは協力できる。どんな状態でも私たちはできることを探して提供できるのが大きな魅力」

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