【特集】「地下のどこに"熱い水"?見つけることが難しい…”地熱発電”」この課題に挑む研究者
今回は『地熱発電』に関する東北大学の研究について、お伝えする。
そもそも、『地熱発電』は地下に溜まっている「200~300℃の熱い水」を井戸を掘って汲み上げて、そこから蒸気でタービンを回して発電するもの。
火山列島と呼ばれる日本は、世界3位の地熱資源量を誇るそうだが、『地熱発電』による発電量は全体のわずか「0.3%」に留まっている。その理由は、「地下のどこに熱い水があるか?見つけることが難しいから」。
この課題に、世界初の技術で挑む東北大学の研究者に注目した。
青木アナウンサーリポート
「登米市(宮城)にやってきました。『地熱発電』の突破口となるという技術その最終試験が今日から始まりました」
東北大学流体科学研究所・伊藤高敏教授
「面白いと思いますよ見ていたら、ハハハ」
東北大学流体科学研究所の伊藤高敏教授。
どうすれば地中の熱~い水がある場所を見つけることができるか、伊藤教授が目を付けたのは、地中に埋まっている「岩」の構造。
12月上旬のこの日、取りだそうとしていたのは、地下50メートルに埋まる岩石。
伊藤教授
「地熱開発の対象になる岩体は、250℃前後それぐらいの所で使える方法じゃないといけない」
使うのは伊藤教授が開発を手掛けた、その名も『2重ビットコアリング』。
世界で初めてという大小2種類の〝筒状の刃〟を搭載した、掘削機。
まずは大きい直径の刃で外側の溝を掘り、次に小さい直径の刃で内側の溝を掘る。こうすることで、岩にかかっていた力の向き・大きさという地下の情報をそのまま保存して取り出すことができるのがポイントだ。
朝7時半にスタートした初めての実地試験。
開始からおよそ8時間が経って、ようやく地下から岩石が姿を現したがー。
伊藤教授)何回やってもこうなる?
共同調査員)かもしれない…
伊藤教授)なるほど、わかりました。掘削の条件がちょうどよくなかった。明日は少し条件を変える
この日、取りだすことができたのは、目標には届かない20センチほどの岩石。
目標とする60センチのサンプルに向けて、岩を削る時の回転数や岩に刃を押し付ける力の調整など、試行錯誤が続く。
そして1週間後、伊藤教授らのチームが取りだすことができたサンプル。
伊藤教授
「我々が欲しいだいたい60㎝なんですけども、コアがちゃんと取れるようになった」
地下50mから取り出したのは、きれいな円柱状の60センチの岩石。そして、ここに隠れているのが、熱い水がある場所を示すヒント。
伊藤教授
「(地下の)力の状態が分かるので、どの割れ目がずれやすくて流体(熱水)を流しやすいかがわかります」
伊藤教授は、地下から取り出した岩のわずかな〝ふくらみ〟を調べることで、地中にある「岩の割れ目」がどう並んでいるかを推測。
熱い水は、この「割れ目」に溜まる特徴があるため、そこが井戸を掘るポイントとなる。
地中の状態が分からないままに掘っていたこれまでは、熱い水にたどり着く確率が低くなっていたという。
しかし、伊藤教授の方法を使えば成功する確率が上がり、その結果 世界第3位と言われる日本の地熱資源活用につながる可能性があるという。
国は、今 カーボンニュートラルの実現に向けて『地熱発電のポテンシャルをもっと生かしていくことが必要』と位置付けている。
そして2030年には、日本全体の発電量に占める割合をいまの「0.3%」から倍以上にすることを目標とするなか、伊藤教授は事業者の協力を得ながらこの技術を地熱開発に活用していきたいと考えている。
伊藤教授
「成功率を上げられるということで、無駄な穴を掘らなくて済みますから、それによってコストが下がって、地熱開発が促進されるということを期待しています」