【日本酒】立春朝搾りに賭ける蔵人に密着!<夜を徹しての酒造り>
2月4日の立春に販売されたこちらの立春朝搾り。
春が訪れる喜びを日頃からひいきにしてくれる地域の人と分かち合いたいと1年に1度の仕込みに挑んだ蔵人たちに密着した。
大崎市松山にある酒造会社一ノ蔵。
立春まであと11日。出勤してきたのは総杜氏を務める門脇豊彦さん。
安斎摩紀アナウンサー
「おはようございますきょうはどんな朝?」
門脇豊彦さん
「きょうは清々しいですね。酒造りには最適」
まだ誰もいないオフィスで朝一番に確認したのは仕込み中の酒の状態。発酵度合いなどの企業秘密のデータだ。
門脇さんは国内はもとより国際的なコンテストでも数々の賞を受賞。その技術が認められ2021年には宮城の名工にも選ばれている。
この道を歩み始めて42年。
若いころから培った経験と感覚。そしていまは酒造りの情報をデータ化するなど若い蔵人たちにも伝えている。
門脇豊彦さん
「普段主食としているコメがお酒になる。そもそも不思議な 体験から始まっていてそれで納得できるものを作っていく」
安斎摩紀アナウンサー
「映しちゃいけない物は?」
門脇豊彦さん
「大丈夫です。この顔以外はハハハ」
一緒に働く若い蔵人たちに門脇さんの人柄を聞いた。
蔵人
「普段はやんわりした優しい一面もあるが、仕事になるとピリッと」
そんな門脇さんが挑む1年に1度の立春朝搾り。
搾り上がりの日にちが決まっているため緻密な逆算が必要…まさに蔵人泣かせの日本酒だ。
そもそも立春朝絞りは1998年、日本名門酒会が始めたもの。
今年は全国43の蔵元宮城からは唯一一ノ蔵のみが参加している。
酒造りの一歩は酒米づくりから始まる。
門脇豊彦さん
「原料米の状態が一番。毎年同じ条件であれば何も苦労しない。試練ですね今年は」
去年の夏の猛暑の影響で収穫された酒米は粒が小さく硬いものが多くみられたという。
そこで門脇さんはお米が溶けやすくなるよう麹づくりを工夫するなど例年にも増して慎重に酒造りを進めてきた。
培ってきた経験を頼りにこの日の状態を確かめる。
そして迎えた立春、当日。
日付が変わると同時に全員で神事を執り行い気を引き締める。
門脇さんの指揮のもと一斉に動き出す。
蔵人たちは先回りして準備。
出荷予定時刻の朝9時までに仕込んだ酒を搾り出す必要がある。
門脇豊彦さん
「もろみの状態でも搾る時間が変わる」
静かに辛抱強く…蔵人たちのタンクをかき混ぜる作業は明け方まで続く。
門脇豊彦さん
「流れが悪くなると絞る時間が長くなる4時間以上かかるかもしれない ずっと交代でこれから彼らは。頑張った分だけ早くいく」
安斎摩紀アナウンサー「想像していたものといま実際に口にしてみて差はありましたか?」
門脇豊彦さん「想像よりもちょっと…ちょっと良かったですね。いろいろ不安要素はあった味の深さと軽さ、丁度よいバランス」
搾り始めから5時間、作業は最終工程へ。
蔵人たちの努力の結晶ともいえる立春朝搾りが完成した。
猛暑という試練を乗り越えてきただけに感慨もひとしおです。
門脇豊彦さん
「春に向けてのお酒春の華々しい穏やかな日差しを 思いながら楽しんでいただけたら」
地域の人たちと春の訪れを一緒に祝いたい。立春朝搾りに詰まった蔵人たちの思いだ。
朝、無事に出荷。その数は全国43の蔵元の中で最も多いおよそ2万本だった。
そして、その到着を待ちわびた人たち。
従業員「大変お待たせしました」
仙台市内の百貨店では店頭販売分の180本がわずか1時間で完売する盛況ぶりだった。
購入した人「日本酒好きなのと一ノ蔵良いですよね」
門脇豊彦さん
「どんな気持ちで飲んでくれるか 色々想像するわけです。よく頑張っただねお酒は。お酒は生き物なのでよく頑張った。色々な条件があって酒造りは楽しい」