【存続危機】将棋対局中に藤井七冠が食べた“おやつ”「ようかん」が大反響も…製造は後継難・老朽化直面(静岡・掛川市)
先日、藤井聡太七冠が静岡・掛川市内での対局中に食べた「おやつ」の「ようかん」が販売数10倍と大反響となっています。一方で、この「ようかん」に欠かせない掛川産の砂糖「よこすかしろ」の製造が、今、厳しい状態となっていました。
1月12日から2日間。掛川市で開催された「王将戦 七番勝負」の第一局。王将の藤井聡太七冠が、挑戦者に永瀬拓矢九段を迎え、白熱した対局となりました。その行方と共に注目されたのが“勝負おやつ”。これまでにも、藤井七冠が対局中に選んだ「おやつ」は注目を浴び、予約が殺到することも。
今回、対局初日午前の「おやつ」に選んだのが…。地元 掛川産の砂糖「よこすかしろ」をつかった「ようかん」でした。「ようかん」が選ばれたと発表されわずか30分後。製造した掛川市横須賀の「菓子司 しみづ」には、早くも同じ「ようかん」を買い求める客の姿が…。
(都内から来た女性)
「会場から13キロ運転して、掛川市内からやってまいりました」「渋い お菓子を選ぶという、我々としてはすごく歓迎なんですけどね」
用意していた分は数時間で完売。また、藤井七冠は「王将戦 第一局」を勝利で飾りました。あの対局から約1週間。再び店を訪れると…。「よこすかしろ羊羹」の在庫の問い合わせや、市内外から購入に来た客でにぎわっていました。
(客)
Q.どちらから?
「藤枝から」
Q.お目当ては?
「『よこすかしろ羊羹』を」「藤枝のお茶と横須賀のようかんとお茶をしようかなと」
売れ行きは、なんと10倍に。製造を1日50本に増やしたものの、毎日完売してしまうほどの大人気となっているのです。
(菓子司 しみづ 鈴木 雅之さん)
「すごい反響で、ファンも来てくれて、すごい効果があった」「初めての客も多い。近所の人もテレビなど見て来てくれる」
この「ようかん」の特徴は、なんといっても掛川の砂糖「よこすかしろ」を使うことによる「コクのある上品な甘さ」だといいます。
(菓子司 しみづ 鈴木 雅之さん)
「最後の仕上げにいれる『よこすかしろ』」「他の黒糖では意味がない。『よこすかしろ』を使っている『ようかん』だから、この風味が出る。自分も好きだし、お客さんもそれがいいと思っている」
そもそも、「よこすかしろ」とは、静岡県内産のサトウキビを原料に、地元で伝統の製造方法で作られる砂糖です。江戸時代、横須賀藩の武士が、サトウキビの栽培方法や製糖工程を農民に伝え、地域に広がったことが始まりと言われています。一時期は、外国産の砂糖におされ姿を消しましたが、36年前に、旧大須賀町と地元の有志らが町おこしのために復活させました。現在の年間生産量は500キロ。知る人ぞ知る、貴重な砂糖として愛され続けているのです。
静岡市で県内の特産物を組み合わせたチョコレートが人気の専門店。ここでも「よこすかしろ」を使ったチョコレートを販売しています。
(コンチェ 田中 克典さん)
「県内産の砂糖ということが一番の魅力」「独特のうま味、甘味、すっきりとした甘さが魅力がある」「『よこすかしろ』のチョコレートは、お茶のうま味、甘味、香りを引き 立ててくれる、そんな『よこすかしろ』の良いとこ ろ、チョコレートで表現できていると思う」
その「よこすかしろ」ですが、実は、今後の製造を巡り、大きな課題に直面しています。ここは、「よこすかしろ」の販売・流通を担当していた物産センターですが、2023年経営不振を理由に運営会社が解散。その後、事業を引き継いだ別の運営会社も2024年12月に閉業。「よこすかしろ」自体は、この物流センターの隣にある製造工場を使って、地元の有志の集まり「よこすかしろ保存会」が製造することができるものの…。保存会で製造から販売まですべてを担わなければならず、困難な状況に陥っているのです。
(よこすかしろ保存会 椋原 正雄 代表)
「母体となる場所がなくなり、だれがマネージメントや受け皿 になるか宙ぶらりんの形になっている」
現在、保存会のメンバーは約20人いますが、高齢化や後継者がいないこと。さらに設備の老朽化も課題となっています。掛川市は、「よこすかしろ」を市の重要な文化としてとらえ、保存会の意向をできる限り反映して、持続可能な取組みとなるように検討したいと話しますが…。解決策が見えていないのが現状です。課題を抱える中ですが、「よこすかしろ保存会」は、藤井七冠のおかげで注目されたことが、後世への継承につながればと話します。
(よこすかしろ保存会 椋原 正雄 代表)
「(藤井七冠は)よこすかしろの 救いの神」「みんなに知ってもらえたことはチャンス」「このチャンスを生かして」「次の世代へ渡していきたい」