「今すぐ対処して」苦情すでに800件…生活道路排雪 の現実 のしかかる“人手不足” 札幌市
雪が降ると悩みの一つが除雪です。
道幅が狭くなりがちな住宅街の生活道路では、雪を取り除く作業が急ピッチで進んでいます。
安全な道を確保するため、冬の交通インフラを支える排雪作業に密着しました。
(井上さん)「前お願いします。前出てください。前前前前。前出てください」
札幌市内の建設会社に勤める井上大志さんです。
井上さんが相手にしているのは住宅街の雪。
先月中旬、札幌市内は記録的な大雪に見舞われ、道路も大混雑しました。
住宅街の生活道路は、幹線道路とは違って道路幅が限られます。
狭い場所では重機とトラックの距離が数十センチに迫る部分も。
(井上さん)「左曲がってもらえます?先入ってください」
作業を進めるうえで気をぬく時間はありません。
排雪アームの操作も複雑です。
トラックの荷台の雪が均一になるよう、細かく操作する必要があります。
こうしてトラックは雪の堆積場所へ。
地道な作業を繰り返すことで住宅街から少しずつ雪が消えるのです。
(井上さん)「幹線道路と比べて道が狭いんですよね。歩行者、あと出入りがある車、住民の方の車とかですね。それを注意しながら気を付けながらやっています」
井上さんは札幌市内の除雪センターに所属しています。
センターは24時間体制で稼働していて、井上さんたち現場の人間と除排雪の進捗状況などを共有しています。
センターは札幌市から委託を受けて、業務を行っています。
責任者の館岡真行さんです。
(館岡さん)「ここに図がありますけども、24軒手稲通より山側の山間部を持った除雪センターとなっております。総勢で約100名以上の作業員等を抱えてやっております。」
2023年12月に開設してから、雪が降るたびに頭を悩ませているのが―
(館岡さん)「問い合わせの方ってだいぶきてますか?」
「3、4件それで今1、2件きています」
(中川さん)「はい、西区南地区除雪センターの中川です。申し訳ない。こちらから業者さんにお伝えしますんで。すみません」
除排雪について市民から寄せられる苦情や要望です。
(苦情の声)「なんで除雪出てないんだ。家の前に雪を置いておかれる。今すぐ対処してくれ」
「降ったらら結構午前中鳴りっぱなしというのもありますし。すぐ対応できないこともあるので、そこはお伝えしながら気を使いながらやるという感じですかね」
2023年12月から、2024年2月16日現在の苦情・要望件数は、およそ800件にのぼります。
(館岡さん)「厳しいご意見をいただくことも多いんですけども、なかなか除雪体制も限られた人間と重機でやっておりますので、すぐ対応してほしいという要望があっても、なかなか対応しきれてない現状も実際はありますね」
課題は人手不足です。
札幌市の調査によりますと、除排雪作業の最盛期となる1月と2月は、重機のオペレーターの残業時間が増え、休日も減少する傾向にあります。
また、市の推計では2017年におよそ2千人いたオペレーターは、2027年には2割減のおよそ1600人にまで減少。
人手不足の解消は「待ったなし」です。
排雪作業を担当する井上さん、
午前6時過ぎに出社すると、欠かさず行うのは重機のエンジンオイルを確認するなど、細かな点検です。
(井上さん)「毎日してます。壊れたらダメなんで」
この日、朝の打ち合わせで決まった排雪作業の場所は、宮の沢東町内会です。
道幅が普通の道路以上に狭く、重機とダンプが並ぶこともできません。
まずは「逆飛ばし」と呼ばれるやり方で進行方向右側に雪を寄せます。
続いてショベルカーの出番。
雪をかき出し、地面から氷をはがして路肩へ。
地道な作業の繰り返しで、わずか数百メートルでも時間がかかります。
そして再び井上さんが登場。
ようやくトラックと並走できる道幅を確保できました。
ほっと一息つく時間も重機の中で。
昼ごはんも合間をみて口にする程度です。
(井上さん)「1時間取れないときもあるんで、ぎりぎりまで積んだり。そのために重機の中で食べてちょっと休みたい感じですね」
昼休みは3、40分程度。
重機に積もった雪を払うなどほかの作業も必要で、まさに「小休止」です。
排雪作業を終えた後、自宅にお邪魔しました。
(青柳記者)「お疲れのところすみません。よろしくお願いいたします」
夕飯は井上さんの好物・エビフライ。
アルコールが飲めるのは、夜の除雪作業がないと決まっている日だけ。
(井上さん)「飲まないです。万が一の夜、天気が曇りだったとしても、降るとき降るんですよね。天気予報当たんないときもあるんで」
昼夜問わず長時間に及ぶ可能性もある仕事―。
20年ほど続けた今、思うことがあります。
(井上さん)「普通に帰ってきても、また夜あるからって次の日も帰ってこないみたいな。きついです。本音は寝たいです。『すごい助かります。こんなに広くなって綺麗にしてもらって』っていってくれる方もいるんで。そういうときですね。やりがいを感じるのが。」
連日、市民のために住宅街の排雪を行う井上さん。
自然を相手にした戦いはもうしばらく続きそうです。