過酷…「人力」で冬の鉄路を守る 受験前日 徹夜の除雪作業に密着 JR北海道
大雪による遅延や運休。
冬の鉄道の運行には多くの困難が伴います。
今シーズンも大雪に見舞われる中、JR北海道はどう対策しているのか。
徹夜の除雪作業に密着しました。
最終列車が出発 徹夜の除雪作業が始まる
大学入学共通テストを前日に控えた深夜のJR小樽駅。
(アナウンス)「岩見沢行きの最終列車が出発いたします」
札幌方面の最終列車が出発してから、鉄路を守る除雪が始まります。
始発列車までのおよそ6時間半の間に作業を終えなければなりません。
雪を吹き飛ばす「モロ」が出動
駅構内の除雪に欠かせないのが「モータカーロータリー」通称「モロ」です。
沿線には信号や電気設備など、さまざまな障害物があります。
ロータリーの前方に取り付けたウイングを開け閉めし、慎重に線路とその周辺の雪を吹き飛ばします。
小樽駅は札幌圏と結ぶ函館線の拠点駅です。
多くの列車の終着駅となるため、構内には乗客を乗せるホームのほかに、列車を留め置く留置線があり、除雪をしなければならない範囲は広大です。
小樽市では1月8日、統計開始以来最多となる69センチの大雪となり、小樽駅では運休や遅れが発生。
冬の間、鉄路の運行には困難が伴うのです。
(運行を管理する担当者)「今空港の方で遅れているみたいで、最終がたぶん遅れてくるので、その間に行けたら行きたいなと思っています」
限られた時間で効率的に除雪するには、運行を管理する担当者と綿密な打ち合わせが欠かせません。
訓練を重ね除雪シーズンに備える
先月、本格的な除雪作業を前に訓練が行われました。
(作業員)「エンジンかけます」
(作業員)「準備できた?」
(無線)「はい、準備できました」
モロは列車の運行を管理する輸送室と連携し、除雪を進める必要があります。
(無線)「入れ替え準備整いました、どうぞ」
(輸送室)「はい、本線4番、入れ替え運転手さん、入れ替え準備整った旨了解しました。こちらから再度呼びますので少々お待ちください、どうぞ」
小樽駅には2つのホームがあり、奥に列車を留め置く6本の「留置線」があります。
冬期間は雪置き場を確保するため、留置線が1本少なくなります。
このため、構内では列車をパズルのように動かす必要に迫られます。
列車を使っていない線路に移動させた上でモロが除雪を行います。
この作業を繰り返し、駅構内の除雪が進みます。
線路を切り替える「ポイント」が弱点
JR北海道は、おととし2月の記録的な大雪で列車が立往生するなど、長期間の運休が発生した教訓を踏まえ、除雪対策を強化してきました。
大雪時の弱点は、線路を切り替える「ポイント」にあります。
ここが凍ったり雪が挟まって動かなくなったりした場合、列車の運行に支障が出ます。
対策として、ポイント周辺にはレールヒーターと呼ばれる雪を溶かす装置を取り付けています。
「人力」に頼る鉄路の除雪作業
しかし、想定を超えた大雪の場合は「人力」に頼らざるを得ません。
(小樽地区駅副駅長 北野祥平さん)「あちらでちょうど作業員が作業していますが、列車の方向を切り替えるポイント部分が重要になります。どうしても機械で対応しきれない部分になりまして、とてもデリケートな部分になりますので、人出を使っての除雪となります。少しでも受験生の方が不安を感じることなく当日を迎えることができるように、引き続き夜通し作業をしていく所存ですのでよろしくお願いいたします」
人手が必要なのはポイントだけではありません。
ホームの下に積もった雪も作業員がかき出します。
かき出した雪はモロが除雪。
機械と人力の両方で除雪を行っているのです。
始発列車まであと2時間ほど。
除雪は中断することなく急ピッチで進みます。
午前4時半ごろです。
倶知安方面から線路の除雪を終えたラッセル車が入ってきました。
ラッセル車はすぐに札幌方面へと出発します。
列車のように高速で走行し、車体前のブレードで雪をかき分けます。
モロとはまた別の役割を持つ除雪車両です。
小樽駅構内の除雪は無事完了しました。
降り積もっていた雪はきれいに取り除かれています。
共通テスト当日 定刻に始発列車が発車
大学入学共通テスト当日。
始発列車は無事定刻に発車しました。
テスト期間中、札幌と小樽を結ぶ路線は大きな遅延などが発生することなく運行されました。
(小樽駅助役 中西歩さん)「きょうあすと大学入試が控えているということもありまして、地上の除雪作業員も普段より多めに配置して、連携をとりながらやりました。雪質が例年に比べて重たくて、冷え込みによって非常に硬くなっているということもありまして、思いのほか時間がかかったなという。おおむね構内除雪の目的は果たせたのかなと感じています」
最終列車を繰り上げ 冬の鉄路を守る
札幌で29センチの降雪を記録した16日。
札幌圏では運転見合わせは行わず、一部の列車を運休し対応しました。
JR北海道の綿貫社長は17日の会見で、冬の除雪対策を改めて強調しました。
(JR北海道 綿貫泰之社長)「週末の土曜から日曜にかけて最終列車を繰り上げる、若干運休させていただきながら予防除雪をしっかり徹底していく」
冬に鉄道の運行をどう確保していくのか。
「止めない、遅らせない」
利用者の足を守るために試行錯誤は続きます。