全国から注目「美食都市・帯広」食料自給率驚異の1200%超!農業王国…独自の食文化を紐解く
北海道・十勝の帯広市が「美食都市」に選ばれました。
「美食都市」とは、大学教授ら食の専門家が「食」を活かしたマチづくりをするなど、先進的に取り組む都市を表彰するために、2024年4月に創設したものです。
評価の決め手となった「地元の食文化を活かしたまちづくり」とはー?
オール十勝の「食」が年に一度の大集合。
帯広の夏を締めくくる一大イベントに成長した「とかちマルシェ」です。
(宮永キャスター)「帯広駅前は大変な賑わいです。色々なところからいい匂いが漂ってくる。今回帯広・十勝が美食都市に選ばれた理由の一つが、このとかちマルシェなんです」
2024年も110を超える店が並びました。
メニューは全て500円以下というのも大きな特徴です。
十勝のソウルフード・豚丼に、スープカレーの野菜もすべて十勝産です。
さらに、かき氷にかかっているのは、幕別産のイチゴです。
豊富な食材は十勝っ子の誇りでもあります。
(宮永キャスター)「十勝の食は自慢?」
(地元の女性)「自慢です、全部。全部おいしい」
(地元の高校生)「十勝の良さがいろいろな人に知ってもらえたらいい」
「豊かな食の在り方」に取り組む都市を表彰する「美食都市」。
2024年4月、初めてアワードが開催され、全国5つの「美食都市」が選ばれ、その中に帯広市が入りました。
(帯広市経済企画課 山川元希さん)「食のイベント・とかちマルシェが高く評価された」
とかちマルシェは多くの観光客を呼び寄せ、地域経済に大きく貢献していることも受賞の決め手になりました。
帯広市が「美食都市」に選ばれた理由はほかにも…
(美食都市研究会 久保典昭事務局長)「北の屋台という場所があって、食を核にしたマチづくりをしている象徴的な場所として、北海道で帯広を選定した」
(宮永キャスター)「美食都市・帯広は食べ歩きのマチなんです。原点となったのが北の屋台です」
帯広駅から徒歩5分の「北の屋台」。
開設から23年経ったいま、帯広には欠かせない観光スポットに成長しました。
居酒屋からフレンチまで、十勝の食材を活かした20軒が軒を連ねます。
今回、話題のお店を訪ねてみました。
ジビエ料理のお店です。
食材のシカ肉はもちろん地元のものですが…
(宮永キャスター)「仕入れは?」
(煙陣 高木祐一店主)「狩猟免許と銃の所持許可があるので(シカを)自分でとる」
屋台で食べられる高木さん自慢の一品は、「エゾ鹿腿肉のたたき風」です。
(宮永キャスター)「おいしい。臭みがない。肉がさっぱりしていて食べやすいしやわらかいし。これはうまいな」
(中川町の男性)「良かったらお好きな物どうぞ」
こんなシーンがあちこちで繰り広げられるのも「北の屋台」ならではの醍醐味です。
(帯広市の男性客)「店主とも距離が近いし、隣に座った人と話したりおもしろい」
(中川町の男性)「(十勝は)飲食店も多様性があって農産物が供給地への距離が近いので、美食のマチに選ばれるのも納得」
(煙陣 高木祐一店主)「(農家から)この食材を使ってくれ、名前を入れてくれと。この食材の料理がおいしくなくて農家に恥をかかせるわけにいかない」
(北の起業広場協同組合 松下博典専務理事)「北の屋台は20軒あるので、3~4軒回る客もいる。十勝のおいしいものを食べてもらって、食べ歩いて楽しんでもらいたい」
帯広の人気レストラン、下川泉巳さんのお店です。
場所は「北の屋台」の目の前にあります。
実は下川さんは「北の屋台」から独立し、16年前に自分の店を構えました。
十勝の味を気軽に楽しんでもらいたいー
牛肉も長イモも、下川さんが選び抜いた十勝の食材です。
(宮永キャスター)「シャキシャキした感じも残りつつ、味はジャーマンポテト。不思議な味だがおいしい」
(アンナ・アンナ 下川泉巳店主)「(北の屋台では)ワインも注げば料理も作れば会計もしたり全てしなければならない。客との楽しい時間を作り上げる場所なので勉強になった」
「北の屋台」は十勝に根差した料理人を育てる場所でもあるのです。
帯広市が美食都市に選ばれた理由は、地元ならではの食文化を活かしたイベントや施設で地元の魅力を発信し、地域経済にも大きく貢献しているからなんです。
さらに、もうひとつのワケがあります。
この食文化を未来へつないでいく、という教育の取り組みも「美食都市」受賞の決め手になりました。
その取り組みは「とかちマルシェ」のなかにもありました。
十勝産の鶏肉や野菜を、これまた十勝産の小麦で作ったパンに挟んだパニーニ。
とかちマルシェでこのパニーニを提供していたのは…
(宮永キャスター)「高校生のブースが並んでいます。清水高校の皆さんです」
とかちマルシェでは地元の高校生も活躍していました。
いただいてみるとー
(宮永キャスター)「具材もおいしいけどパンが本当においしい。フワフワモチモチな感じ」
(清水高校の生徒)「パンのサイズや焼き色にこだわりました」
みなさんは清水高校「食品ビジネス科」で、レシピの開発や飲食店の経営を勉強しているんです。
(清水高校の生徒)「いろんなイベントに出て人を笑顔にできたらうれしい」
(清水高校の生徒)「清水町の実家のジョバンニというパン屋を継ぎたい」
帯広が美食都市に選ばれた理由…
もうひとつは「食の教育の充実」だったのです。
帯広農業高校の生徒も、とかちマルシェでトウモロコシの販売を手伝っていました。
その名も「十勝ガールズ農場」です。
(帯広農業高校3年 小林柑奈さん)「コミュニケーションを取りながら仕事ができるので、学校でも農場を手伝っても楽しい」
(帯広農業高校3年 山内ひなきさん)「高校とは違う育て方をしていたり農場で学ぶことは多い」
とかちマルシェを前に、小林さんと山内さんは実際に農場でトウモロコシを収穫していました。
生でも食べられるという白いトウモロコシ。
高校生の2人は「初体験」です。
(帯広農業高校3年 山内ひなきさん)「甘いです」
(帯広農業高校3年 小林柑奈さん)「食べたことない食感でおいしい。茹でるより好きかも」
(帯広農業高校3年 山内ひなきさん)「果物みたい」
農場を経営する橋爪さんは、若い女性を雇い入れるなど農業が若い世代の将来の生業になれば…と取り組んでいます。
(アグリファッショングループ 橋爪恒雄社長)「農業社会では女性が中心になるのは世界的に珍しい。女性が農業を目指す具体的なモデルを作っていきたい」
(帯広農業高校3年 小林柑奈さん)「十勝は若い人が農業していて、同じ年代の人が農業していると楽しい」
(帯広農業高校3年 山内ひなきさん)「成長していく作物を収穫する時期が楽しい。将来も農家に携わりたい」
食料自給率1200%を超える農業王国・十勝。
大地からの恵みを活かして独自の食文化を築き上げ、それを未来へ受け継いでいこうという取り組みが「美食都市」の名を一層輝かせています。
これからも、北海道を代表する「おいしいマチ」として、帯広は北の食の魅力発信をリードしてくれそうです。