【特集】豪雪地の“買い物弱者”を支える「雪国の救世主」 移動スーパーに一日密着《新潟》
全国屈指の豪雪地、魚沼市。ここには、高齢者などといったいわゆる「買い物弱者」の暮らしを支える“移動スーパー”があります。
雪深い集落で暮らす住民たちのもとを回り食品を届ける男性。 その1日に密着しました。
新潟県南魚沼市、とあるスーパーの営業時間前。カゴを手に、足早に店内を回る男性の姿がありました。
武川学さん、42歳。 魚沼市で移動スーパー「魚沼マルシェ」を営んでいます。
次から次へとカゴへ入れた商品は、 納豆食卓の定番・納豆です。 小粒からひきわり……さまざまな種類を選んでいきます。
【移動スーパー「魚沼マルシェ」武川学さん】
「(選ぶ)基準はだいたいその時のお客さんの好み。今日はこの納豆が好きな方がいらっしゃるので」
生鮮食品をはじめ、日持ちのする缶詰など次々と商品に手を伸ばす武川さん。この日仕入れた商品はカゴ9個分!
軽トラックには常時約500品の商品が並びます。今日も、お客さんのもとへ出発です。
まず向かったのは旧広神村の三ツ又地区。
雪が降り続けるなか山道を進んでいきます。
両脇にのびる雪の壁……積雪は2メートルを超えていました。
雪道を進み、ようやく1軒目のお客さんのもとに到着。
週1回利用しているという夫婦です。
【妻】
「何買いましょうかね」
【夫】
「いろいろ」
【妻】
「いろいろ持ってきて下さるからありがたい」
お目当ての商品をかごに入れていきます。2人とも80代となり自分たちで買い物に行くことが難しくなったことから、6年前から利用を始めました。 特に冬場はこの移動スーパーが生活の頼りだと話します。
【夫】
「今もうこの人が来てくれなければどうしようもない」
【妻】
「(この地区では)たった1軒になったのに来て下さるからありがたい」
2人きりの生活の中、こうした買い物は特別な時間です。
【妻】
「ずーっと2人でしょう。色んな話聞いてもらったりして嬉しいよね」
雪国の生活を支える移動スーパー。
休む間もなく次の目的地へ出発です。
神奈川県出身の武川さん。
2015年に地域おこし協力隊として妻の地元でもあった魚沼市に赴任……任期をおえた2018年に、移動スーパー「魚沼マルシェ」を始めました。
【移動スーパー「魚沼マルシェ」武川学さん】
「地域に対して何かやれることないかなと思って。地域に貢献できるような『移動販売』を始めました」
営業は月曜から金曜の週5日。仕入れから車の運転、販売まですべてひとりでこなします。 お客さんからリクエストを受けることもしばしばです。
【移動スーパー「魚沼マルシェ」武川学さん】
「これはお客さんの持ってきて欲しいもののメモ。『いまちょっと無いです』をなくしたい」
「ほしいものより、ほしくなるもの」。 武川さんのモットーです。
武川さんが次に向かったのは、雪深い旧湯之谷村。2年前に車の運転免許を返納したという84歳の女性が、 到着を待っている人がいました。
【女性】
「おじいちゃんと2人だから1週間に1回来てもらっている」
生鮮食品を中心に、カゴはすぐいっぱいになりました。
魚沼市の高齢化率は39.3パーセント。 およそ3人にひとりが65歳以上の高齢者です。
過疎化が進めば、冬場の買い物はより難しくなることが予想されます。
移動スーパーを営む武川さん。 7年前に購入した軽トラックの走行距離は16万キロに達しました。
【移動スーパー「魚沼マルシェ」武川学さん】
「大変だと思ったこと1回もないので。すごく充実してやっています」
雪が降るなか、武川さんはこの日およそ20軒を回りました。
この春で8年目を迎える移動スーパー「魚沼マルシェ」。 住民たちとの触れ合いが何よりのやりがいです。
【移動スーパー 「魚沼マルシェ」店主 武川学さん】
「いろんな人と出会えることがすごく魅力的だと思います。ストレートに感謝されることもモチベーションになりますし、少しでも地域の方、ご高齢の方に利用してもらえるように頑張っていこうかなと」
商品とともに、買い物を楽しむひとときを届ける「魚沼マルシェ」。
きょうも街を駆け巡り、雪国の暮らしを支えます。