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【特集】命を脅かす「津波と液状化」 能登半島地震と60年前の新潟地震 証言から浮上した避難の課題 《新潟》

2024年3月24日 19:01
【特集】命を脅かす「津波と液状化」 能登半島地震と60年前の新潟地震 証言から浮上した避難の課題  《新潟》

能登半島地震では、県内の沿岸にわずかな時間で津波が到達しました。一方、60年前の新潟地震では液状化が避難の妨げになっていました。命を脅かす津波と液状化。住民の証言を追うと、避難の課題が浮かび上がってきました。

新潟県に押し寄せた津波

2024年元日、午後4時10分。能登半島を最大震度7の地震が襲い、津波が押し寄せました。

震源から直線距離で約100キロ離れた上越市港町です。

約300人が暮らす海沿いの住宅街にもあっという間に津波に襲われました。

川をさかのぼる津波

勢いよく川をさかのぼる津波。

堤防を乗り越え、街を襲いました。

しかし、住民の今井健次さんによると、近所の人たちは思いがけない行動をとっていたといいます。

住民の思いがけない行動とは

今井健次さん
「(近所の人は地震の直後)川の様子を見ているんだよね。『どっちから津波が来るかな』とみんなで話していたっていうんだよね。『おーい死んじゃうぞ』と、でかい声で怒鳴ったら、逃げてくるようにこっちにきた」

妻の今井洋子さん
「すごかったです、怖かったです」

迫り来る津波。あっという間に自宅にまで到達しました。

津波がタイヤのところまで来た

今井洋子さん
「津波がタイヤまで来ちゃって」

車を出す間もなく津波は襲って来たのです。健次さんは道路に出て逃げ始めました。しかし、もう間に合わない。すると、隣の住民が。

今井健次さん
「『今井さん、もう間に合わないから家に上がって』と。そうしたら向こうから道路をがーっと真っ黒い水が流れて来た。助けてもらわなかったら水を飲んで死んでいた」

津波の高さは推定2メートル

今回の地震。県内で観測した津波は最大40センチでした。しかし、痕跡を見ると。

犬飼直之准教授
「直江津あたりが突出して津波の痕跡高が高くなっている。到達した津波の高さは2メートルくらいはあったんじゃないかと現在考えています」

さらに、指摘するのはその速さ。

日本海の断層の多くは陸地に近い

日本海は陸のそばに多くの断層があり、これまでも大きな地震を引き起こしてきました。

震源が陸から近いため、わずかな時間で津波が到達するというのです。

佐渡に3分、糸魚川に8分で到達

今回の地震では佐渡に約3分で、糸魚川には8分ほどで押し寄せました。

長岡技術科学大学 犬飼直之准教授
「日本海沿岸域の地震の発生域は、他の領域に比べて比較的陸地に近く、津波が発生した場合、陸地に早い時間で到達しやすいという特徴がある。強い揺れを感じたらただちに避難を開始する行動をしていただきたい」

酸素ボンベをもって避難

上越市の今井健次さんです。病気を患っていて、生活する上では酸素ボンベが必要です。

今井健次さん
「これがないとダメなんだ」

妻の今井洋子さん
「(酸素ボンベ)3本をこうやって車の中に持っていった」

重いボンベを持ちながら歩いて避難することはできません。街から水が引いた後、妻の洋子さんが車を運転して2人で避難所へ向かいました。

避難訓練を行ってきたが

この地域では東日本大震災の後、自主的に防災組織を立ち上げ、毎年津波を想定して助け合う訓練を行ってきました。しかし。

妻の今井洋子さん
「訓練の時には車いすを持って、人が『今井さん迎えに来ましたよ』って来ました。でも今回の地震ではそういうことはもちろん、津波の時はないですよね」

2割が「避難しなかった」

実際に津波がやってきた今回の地震。町内では避難所の状況などを確認しました。そして、住民に緊急のアンケート調査を実施。

車で避難した人は7割以上にのぼりました。一方、約2割は避難していませんでした。その多くが高齢者だったといいます。アンケートには切実な声がつづられていました。

「足が悪い夫を置いていけない」
「地域は高齢者が多く、避難の方法を考えなければいけない」
「避難タワーの建設などを早急にお願いしたい」

避難を妨げかねない「ある現象」とは

わずか数分で到達するおそれのある津波からどう逃げるのか。

今回の地震では、その避難を妨げかねない“ある現象”が起きていました。

「液状化現象」です。

液状化による建物被害は新潟市だけでもおよそ1万棟。石川県全体の2倍以上にのぼります。

そして道路にも。砂にはまり動けなくなった車。交通網に大きな影響を及ぼしていました。

泥水が道路にあふれ出す

その時、何が起きていたのか。

地震の瞬間、大きく揺れ動く歩道橋。地面が盛り上がります。

発生から5分後、水があふれてきました。

そして10分を過ぎると。噴き出した泥水が道路をふさいでいました。

液状化は繰り返し発生する

国交省が公開している液状化の危険度をまとめたマップ。新潟市には広い範囲に赤やピンクのエリアが。危険度が高いことを示しています。

治水工事で埋め立てられた旧信濃川。そして、過去にも液状化が発生した場所で今回被害が相次ぎました。

「液状化は今後も起こる」。

研究する専門家は“地域全体で地盤を改良する必要がある”と指摘します。

新潟大学 災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「液状化は繰り返す災害なので。この地域(新潟市西区)は2回目になりますので、60年を隔てて。なので3回目もありますので、ということになります」

60年前の新潟地震で発生

60年前の新潟地震では大規模な液状化が発生。この地震を契機に、研究が本格的に始まりました。

津波が来る前の写真。住民たちは、ヒザのあたりまで水に浸かりながら避難しています。

「一番まずいパターン」

新潟大学 災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「液状化による砂と水、泥水の状態、揺れ終わった直後から液状化は始まるので、そのあとに日本海側ですと10分とか15分以内に津波が来る。逃げなければいけないが、砂が噴き出している。(避難と液状化が)複合して起こる、それが一番まずいパターン」

どう避難するか、戦略や作戦を

繰り返される液状化。避難の大きな妨げにもなります。ただちに避難するために。その土地の特徴を把握して、避難計画を立てる必要があります。

新潟大学 災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「この辺の家の人はこの道を使ってこっちの山に行くとか、ここの辺の方はこの道を使って国道に上がるとか、戦略・作戦を立てて地域で練習をして、いざとなったら車で避難、車を使うこともあり」

いま巨大な地震が起こったら。予想を超える津波が押し寄せたら、どう避難しますか。

その時、命をどう守りますか。


2024年3月19日「夕方ワイド新潟一番」放送より

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