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【記者がみた法廷】92歳の母親の遺体を自宅に放置した息子「酌むべき事情なし」身勝手な犯行に下された判決《新潟》

2024年9月9日 20:57
【記者がみた法廷】92歳の母親の遺体を自宅に放置した息子「酌むべき事情なし」身勝手な犯行に下された判決《新潟》

92歳の母親の遺体を自宅に放置したとして死体遺棄の罪に問われた66歳の息子。
なぜ、母親の遺体を24日間も放置していたのか。息子を溺愛していた母親、その年金でギャンブル。
9月4日、息子に判決が下された。

「最近姿が見えない」近所からの通報で明らかになった事件

新潟市秋葉区の小林弘明被告(66)はことし6月、同居する当時92歳の母親が亡くなったにも関わらず、遺体を自宅に放置したとして死体遺棄容疑で逮捕された。

「最近、女性の姿が見えない」。付近の住民からの相談を受けた警察が開いていた窓から室内に入ったところ、遺体が見つかり事件が発覚した。

「間違いありません」初公判で認めた罪

8月20日に開かれた初公判で、白髪交じりの頭に白いマスクを着用し入廷した小林被告。
検察側が起訴状を読み上げた後、起訴内容について「間違いはありませんか?」と問われると、こう答えた。
小林被告「ありません」

なぜ92歳の母を?検察が指摘したその身勝手な動機

検察側の冒頭陳述。
「6月2日、小林被告は自宅1階で母親が死亡したことに気付いたが、葬儀代などが捻出できないと考え、寝室に遺体を運び、遺体の上に敷きパッドをかけて放置した。さらに数日後、遺体の腐敗が進んでいることを認識したが、虫が湧き出てくるのを防ぐため、寝室のドアなどにガムテープを貼り、その後、母名義の口座に振り込まれた年金を引き出し、生活費やボートレース代などに消費した」

その後、検察側は小林被告の実妹の供述調書を読み上げた。
「(兄は)お金にだらしなく、あればあるだけギャンブルに使っていた」
「母は兄を溺愛しており、甘やかしていた。だらしのない人だったが、母のことはしっかりしてくれると信頼して任せていた。なぜそんなことをしたのか理解できない。母は兄と一緒に暮らせることを喜んでいたのに、最後がこんなことになってしまいかわいそう」

「酌量の余地なし」検察側は懲役1年2か月を求刑

弁護側からの被告人質問では、以下のように語った小林被告。
小林被告「ギャンブルへの依存により借金を重ねたり金銭的にだらしなく余裕のない生活が今回の事件を導いたと思います」
「今回の事件を起こす引き金になったギャンブルなので、完全に絶ちたいです」

その後の論告求刑で、検察側は「母親の年金を引き出し、ボートレース代などに充てるなど、その身勝手な動機に酌量の余地は一切ない」と指摘。
小林被告に対して、懲役1年2か月を求刑した。
一方の弁護側は「葬儀代が払えないという理由で、遺体の遺棄に特別な目的はない」などとして「相当な量刑とすべき」と情状酌量を求めた。

「酌むべき事情は見当たらない」言い渡された実刑判決

9月4日に開かれた判決公判。
上下グレーの長袖長ズボン、白いマスクを着用して証言台の前に立った小林被告。
指先はぴんと伸び、初公判の日と同じく落ちついた様子だ。

裁判官「主文、被告人を懲役10か月に処する」

懲役1年2か月の求刑に対し、言い渡された判決は懲役10か月。
まっすぐ前を見つめる小林被告に、裁判官が判決理由を告げる。

裁判官「被告人は、ギャンブルが原因で金銭的に困窮し、葬儀の費用が出せないとの理由で実母の遺体を放置したのであるから、その経緯に酌むべき事情は見当たらない」

別の事件で仮釈放中だった小林被告。
裁判官「法律上、実刑を選択するほかない」

裁判官「被告人が事実を認めて反省していること、本件犯行の一因となったギャンブルをやめると決意していることなど被告人のために酌むべき事情も考慮し、主文の刑を科すのが相当と判断した」

閉廷されるまで、しっかりとした姿勢を崩さなかった小林被告。

身勝手な理由での犯行。犯した罪をみつめ、いつか母親の墓前に手を合わせてほしいと願う。最後に証言台で見せたあの姿勢で。

(取材:TeNYテレビ新潟 長谷川サラ)

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