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坂本弁護士一家殺害事件からまもなく35年 山内道生弁護士「忘れてはいけない。死ぬまで忘れない」事件が問いかけるものとは…

2024年9月10日 20:21
坂本弁護士一家殺害事件からまもなく35年 山内道生弁護士「忘れてはいけない。死ぬまで忘れない」事件が問いかけるものとは…

一連のオウム真理教事件の発端ともいえる坂本堤弁護士一家殺害事件からまもなく35年。9月10日は事件で犠牲になった長男・龍彦ちゃんの遺体が大町市で発見されてからちょうど29年になります。

元同僚の弁護士たちがいつまでも事件を忘れない、と毎年、慰霊に訪れています。

大町市の高瀬渓谷緑地公園にある坂本堤弁護士一家の慰霊碑。3つの輪は坂本弁護士と妻の都子さん、そして長男の龍彦ちゃんを象徴しています。

8日、この場所に坂本弁護士の元同僚をはじめ弁護士およそ30人が慰霊に訪れました。

黙とう

この事件は1989年11月、オウム真理教の被害者問題に取り組んでいた坂本弁護士が自宅アパートで妻と当時1歳2か月だった長男・龍彦ちゃんとともに教団の信者に殺害されたものです。

その後、坂本弁護士の遺体は新潟県で、妻・都子さんの遺体は富山県で見つかりました。龍彦ちゃんの遺体が大町市の山中で発見されたのは、事件から5年10か月が経った1995年9月10日でした。

毎年慰霊に訪れている元同僚の弁護士たちは龍彦ちゃんの遺体が見つかった現場にも足を運び、小さな地蔵に手を合わせました。

元同僚・小島周一弁護士
「弁護士に対する妨害は市民の権利も侵される。このことを私たちも皆さんに伝えていかなければいけないと思う」

また、松本サリン事件のきっかけになったとされる教団の松本支部道場をめぐる裁判で、住民側の代理人を務めた山内道生弁護士も慰霊に訪れました。

山内道生弁護士
「忘れてはいけない。死ぬまで忘れないというのが本当の気持ちです」

一方、この場所を初めて訪れ龍彦ちゃんをしのんだ東京都の長塚洋さん。一連のオウム真理教事件における”死刑”をめぐりある映画を製作した監督です。

長塚監督が2022年に発表した映画「望むのは死刑ですかオウム”大執行”と私告白編」。2018年、オウム真理教の元教団幹部13人全員の死刑が執行されたことを受けて坂本弁護士の同僚だった岡田尚弁護士をはじめ被害者側、加害者側、双方の「死刑」への思いをまとめたドキュメンタリー映画です。この映画の上映会が9日、松本市で開かれました。

長塚洋監督
「当事者に、だから死刑をあなたは望むでしょというのは大変な重荷になるわけだから。それはその人それぞれの思いがあるだろうし。」

岡田尚弁護士
「彼ら(元死刑囚)を許すという気持ちには今でも到達していない。その許してないという結論が死刑なのかといわれると違うなという…」

もともと死刑反対派だったものの、同僚の死を経験し被害者側の立場に立ったことで葛藤が生まれたとも語った岡田弁護士。

岡田尚弁護士
「ただ僕は死刑制度そのものに対する疑問と同時にやっぱり彼らに生きてもらっていて、この事件の検証をもっとしなきゃいけない」

長塚洋監督
「あんなやつが死刑になればいいんだではなくて、その死刑を我々が望んでいるのかどうかということを自分事として考えていくことをしていただきたい」

長塚監督は今後も各地で映画の上映を続けていきたいとしています。

坂本弁護士事件からまもなく35年、事件は今も問い掛け続けています。

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