虐待死の子「72人」で高止まり 「子どもの泣き叫ぶ声が」……現場で何が? 児相の虐待対応は“過去最多”【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「後を絶たない虐待…現場で何が?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●「虐待通告」48時間以内に
●ためらわず…私たちができること
鈴江奈々アナウンサー
「児童相談所が虐待の相談に対応する件数は、年間で約22万件にも及びます。12日、児童虐待で亡くなった子どもについて、こども家庭庁が詳細を検証した結果が公開されました」
「児童虐待で亡くなった子どもは2022年度、72人でした。前年度より2人減りましたが、90人だった2012年度からの推移を見ても、高止まりの状態が続いています」
「年齢別に見ると0歳児が全体の44.6%を占め、虐待の類型で見るとネグレクト、いわゆる育児放棄が42.9%を占めていることが分かりました。分析を担当した専門家の委員会は、児童相談所の人員体制を強化し、専門性を確保することなどを国に提言しています」
桐谷美玲キャスター
「亡くなった数が高止まりの状態が続いているということなので、周りに話せずに悩んでいる親御さんも、もしかしたらいるんじゃないかなと思います」
鈴江アナウンサー
「そういった点も気になりますよね。児童相談所が2022年度、虐待の相談に対応した件数は21万9170件(速報値)。32年連続で増え、過去最多となっています。命を守る最前線で何が起きているのか。今回、東京都内にある児童相談所の撮影が初めて許可されました」
鈴江アナウンサー
「東京23区内にある児童相談所。午前中から職員が、次々とかかってくる通告や相談の電話に対応しています。取材した日は、一時保護した子どもの今後や、支援が必要な家庭の様子について会議が開かれていました」
児相職員
「お母さんからたたかれるとか、帰りたくないという訴えがあって、職権で一時保護となっている」
別の職員
「今週お父さんに何度も電話しているんですけど、つながらないです。児相との電話が、疲れ果ててしまって出たくないと言っていました」
鈴江アナウンサー
「児童相談所への通告は、約半数が警察からです。続いて多いのは近隣などからの通告で、主に虐待対応ダイヤル『189』からのものです。この日の会議でも、通告について話し合われました」
職員
「『189』で午前8時過ぎに入電しているんですけど、子どもの泣き叫ぶ声と、子どもが暴れているのか何かをたたいているのか分からないけれども、ドンドンという音が聞こえる」
森圭介アナウンサー
「今の話を聞くだけで現場の大変さや、なかなか対処ができない現状も伝わってきます。どういった対応の体制になっているんですか?」
鈴江アナウンサー
「こうした通告があった場合、児童相談所では通告から48時間以内に直接訪問するなどして、子どもの安全確認を行うのがルールになっています。緊急性があるかどうかなどの調査結果によっては、一時保護などの対応が取られています」
忽滑谷こころアナウンサー
「48時間以内というかなりの時間のリミットもある中で、職員の皆さんは大変だと思います。だいたいどのくらいの件数に対応されているんですか?」
鈴江アナウンサー
「取材した施設とは別の東京都多摩児童相談所によると、通告や相談に対応するのは昨年度の一年間で約1500件。さらに、継続して関わっているケースが現在約500件あるといいます。それを児童福祉司の資格を持つ職員29人で担当しているということです」
桐谷キャスター
「トータルで2000件あるとなると、単純計算で1人あたり70件ほど対応していることになりますよね」
鈴江アナウンサー
「取材した児童相談所によると、人手不足で非常に苦しい中で支えている状況だということでした」
鈴江アナウンサー
「体制を充実させるのも大事ですが、どうやって虐待を減らしていくのか。私たちができることを考えます。近くで『虐待かも』と思った時などに覚えておいていただきたいのが、虐待対応ダイヤル『189(いちはやく)』です」
「24時間、児童相談所に通告や相談ができる全国共通のダイヤルで、匿名で名前を伏せて行うこともできます。ただ、実際に近所で子どもが泣き続けている時など、通報や相談はできますか…?」
森アナウンサー
「虐待している現場を見ているのであればまだ分かりますが、子どもが泣いているだけでは難しいですし、それぞれの家庭のしつけもあるでしょうから、なかなか土足で踏みこむのは難しいかなと思ってしまいますかね…」
桐谷キャスター
「いきなり児童相談所などに通告するのは、ちょっとハードルが高いかなと思ってしまいますね…」
鈴江アナウンサー
「今回の取材では、多摩児童相談所の矢﨑新士所長に、対応を迷った時にどうすべきか聞きました」
矢﨑所長
「もし違ったら親を傷つけてしまうんじゃないかなっていうのは、あっていいと思うんです。それは思いやりですよね。そういう気持ちのある人には『ためらわずに連絡ください』って言えます」
「通告をいただいたことを端緒に、悩まれていたお母さんだとか、苦しんでいた子どもたちの支援の入り口に立てるってこともよくあることなので。(親御さんの)中にはどう喝をされたり、罵られたりっていうことがあるんですよね」
「つらいはつらいんですけど、しっかりそれをやっぱり受け止めて、ここでは怒っていいですよ、泣いてもいいですよっていう場が社会にあってもいいかなと思っています。そういう場に児童相談所をしたいなと思っています」
森アナウンサー
「虐待でつらいのは子どもももちろんですけど、親御さんもつらいんだということで、ためらわずに通告するのが大事だということなんですね」
鈴江アナウンサー
「(矢﨑所長は)『警察や189からの通告だけで虐待がなくなるわけではない』と指摘しています。また、『虐待を減らすためには、親を孤立させない、一人ぼっちにさせないことが一番大事だ』とも話していました」
「子育ては誰しもが悩むことがあると思いますが、出産や子育ての悩みを相談することができる、児童相談所の相談専用ダイヤル0120-189-783(なやみ)もあります。こちらも活用してもらえたらと思います」
森アナウンサー
「ご家族や友人など相談できる人がいない時には、こういったダイヤルで、自分の思いを人に言葉にして伝えるだけでも、気持ちがふっと軽くなることもあると思います。通告も、相談できる窓口も、ためらわずに活用してほしいなと思いますね」
鈴江アナウンサー
「虐待の裏には、保護者も子育ての不安や様々な困難を抱えているケースも多く、助けを必要としている実態があります。悩みがある方も周囲の方も、ぜひ抱え込まずに相談してみてください」
(2024年9月12日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)