【解説】「ちょっとやりすぎ」「問題ない」京都市『宿泊税』最高1万円に引き上げ方針で賛否両論 その目的と使い道とは?
市民生活にも影響している「オーバーツーリズム」対策につながるのでしょうか。京都市は、宿泊税の最高額を1万円に引き上げる方針を発表しました。
京都の人気観光地を埋め尽くす訪日外国人観光客。客数が“コロナ禍”の前を上回るようになり、オーバーツーリズムが市民生活にも影響を及ぼしています。
14日行われた市長会見で…。
京都市・松井孝治市長
「(宿泊税)最高税額を1万円とさせていただきました」
観光公害の打開策になるのでしょうか。
「全くわからない。車が多くなったり、混んだりするので、そういうのに使うのかなと思いますけど」
宿泊税の引き上げの効果に疑問の声も。オーバーツーリズムに悩む京都が抱えるジレンマとは。
京都市・松井孝治市長
「観光は、我々の生活とかけ離れたものではなくて、市民生活の豊かさにつながっているという実感を持っていただくことが極めて大事。市民だけでなく、観光客にもご負担いただく。そのために、『宿泊税』の引き上げを実施いたします。最高税額を1万円とさせていただきました」
14日、京都市は観光公害の対策として、宿泊料金に応じて変わる宿泊税の引き上げ案を発表しました。
現在、京都市は宿泊料金に応じて1人1泊あたり、200円から1000円の3つの区分で徴収しています。これを5つに分け、宿泊料金が10万円以上の場合、これまでの10倍となる1万円にまで引き上げるということです。
趣のある街並みが人気の、京都・祇園を訪れていた外国人観光客は。
オーストラリア人観光客
「1万円も払わないといけないの!?オーストラリアドルで言ったら100ドルだもんね。高いです」
「宿泊税を払うこと自体は、問題ないです。(街に)貢献することは良いことだと思います。京都は美しいですし、きれいですから」
「この引き上げは大きすぎる。ちょっとやりすぎです。もっとバランスをとるべきだ」
京都・嵐山の渓谷に佇む、「星のや京都」。日本建築をいかした高級宿の1泊の最高額は約30万円。新しい宿泊税になれば、最大1万円を支払うことになります。
星のや京都・木村文香 総支配人
「決して安い金額ではないと思っております。金額が上がる分、お客様の期待も上がってくると思いますので、地域の魅力などを織り込めて、お客様に ご滞在を提供していきたい」
新たな税制が“客離れ”につながらないよう、施設側の工夫が求められることになります。
星のや京都・宿泊客
「(宿泊料金)10万円で、(宿泊税)1万円。それでも泊まりたいと思う宿なら泊まります」
「普段使いはできなさそう」
「京都市内もかなり混雑して、インフラ整備も大変そうなので、そういうのに使ってもらえるのなら、1万円ぐらい取られてもいいのかなと」
観光客には来て欲しい。一方で観光公害は減らしたい。悩める京都市民からは。
京都市民
「僕は反対。10倍もあげる必要はない。ルールを守らない人とか見当たるので、それの方が問題」
「京都に来られる方が少なくなるのは困る」
(Q:宿泊税の使い道)
「ゴミ箱の設置をたくさん、京都市がしてほしい」
京都市の宿泊税は2023年度、過去最高額の約52億円に達しました。新しい宿泊税が導入されれば、その2倍以上にあたる約130億円の税収が見込まれています。
2026年3月からの適用をめざす新たな宿泊税。市民生活と観光の両立につながるのでしょうか。
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(中谷しのぶキャスター)
「宿泊税なんですが、全国的に見ますと、導入済みの自治体は全国で11自治体なんです。関西では大阪府と京都市が導入しています。
大阪府の現在の宿泊税なんですが、100円から最大で300円程度。京都市は現在は最大1000円のところを、200円から最大1万円に2026年3月から施行予定ということで、10万円以上の宿に宿泊すると1万円です」
(高岡達之・読売テレビ特別解説委員)
「時代を先取りしていると言えば、イタリアのヴェネツィアは先駆けというか、その領域に入るだけでどなたもお金をいただきます、それはゴミの収集に当てています、そういうようなことをはっきりしてますので」
(中谷キャスター)
「何に使うのか、今回増額されれば約126億円の税収になるわけなんですが、この引き上げが妥当なのか、専門家である、京都橘大学の阪本崇教授にもお話を伺いました。
阪本教授によると『例えばバス1台の維持でも、年間1500万円から2500万円かかる。京都市の現在の混雑状況から考えれば相当な金額が必要。宿泊税の税収に見合った公共サービスが提供できるかがポイントになる』ということです」
(中谷キャスター)
「それで、京都市の宿泊税見直しの目的と言いますと、市民と観光客、双方の満足度を高めること」
(中谷キャスター)
「では、何に使うかと言いますと、宿泊税などを活用した事業として挙げられるのが、例えば『観光特急バス新設』など、『無電柱化』など」
(高岡解説委員)
「使い道も、もっと市民の方の声を聞けば…と僕は思うんですよ。例えば、皆さんバスに持ってくる大きなキャリーバッグ、これをどこかにまとめて預けることが出来る施設の為に何億円…とか。少し今の案は行政発想のような気も致します」
(中谷キャスター)
「専門家の方も『宿泊税の使い道によって、観光公害が悪化しないよう、市民の生活を良くすることに重点を置くべき』だと指摘されています。オーバーツーリズム対策が目に見える形で改善できたなという実感が欲しい、という声もありましたので、地元住民の皆さんの協力があってこその観光ですので、どういう対策が求められるのかこれから問われます」