【特集②】被災地能登で古民家を修復 木曽出身のボランティア続ける大学生 その思いとは…
発生から1年近くが経とうとしている能登半島地震。
震度6強を観測した石川県七尾市で、木曽町出身の大学生が、古民家の修復ボランティアを続けています。
鈴木さん
「ここの柱が五分15mmぐらい下がってるんでそれを上げたいんですけど、上がるかどうか。ここで継いであるんですけどこれの口ももう腐っちゃってるんで、こっから取り替えられないかなと」
大学で建築を学んでいるとはいえ、普通の学生ができるレベルを超えています。取り替える柱の近くにジャッキを入れて建物を持ち上げますが、柱も壁も古いだけに、少しずつ、慎重に。傷んだ柱の下の部分だけを切り離します。
鈴木さん
「(金づちで叩く音)ここは生きてますけどここは全部腐ってる」
取り替える柱に最適な材木を選びます。
鈴木さん
「たぶんこれヒバっぽい感じなんでヒバかそこに転がっている栗を使いたい。どちらとも水に強い材なんで栗のほうがいいがちょっと材が材なんで水に強いとはいえこの側面の白太、弱い部分が割と多いんで」
白太とは、丸太の外側の柔らかい部分。対してヒバの古材は、木の芯の部分で強度があります。悩んだ末、鈴木さんはヒバを採用。ぴったりの長さに切ってはめ込みます。
鈴木さん
「ほんとは十分持ち上げてすこっと入れて下げればいい話なんですけどあんまり上げるの怖かったんで」
森さんご主人
「やり始めて後戻りできなくなってんじゃないの?いやまあどこまでやるかです。ここをやったらここもやってみたいな。こう喋ってると学生なことを忘れるんですよ。忘れちゃってなんでも専門的なことを聞いてたまに知らないことがあったら、あ学生だったんだって思い出す」
鈴木さんが能登でボランティアを続ける、その思いは。
鈴木さん
「建築今後やる身として無関心ではいられないなっていうのがあって何かしらボランティアでもなんでもいい」
木工作家の父のもと、木曽という、もともと木の文化が根付く地域で育つ中で、建築の知識や技術を独学で身につけました。
玄人はだしの技は、至る所に。木材の傷んだ部分だけを交換した修繕は、釘やネジを使わず、木と木が噛み合うように削ってつないだ伝統工法です。
鈴木さん
「力かかったら金属が勝っちゃうんですよ。そうすると何が起こるかっつったら木材のほうが割れて来るとか。当然こういう技術っていうのはもう伝承伝承の世界ですから遡れば百年じゃきかないわけじゃないですか数百年とか千年超えるような、トライアンドエラー、地震が起きてこの組み方とこのやり方だったらダメだった、だから次、だけどこっちの方向だったらうまくいったみたいな、そういうのが積み重なって来たようなものだと思うんで」
森さん
「もう湧土君がやるなら間違いないだろうと思ってます。」
鈴木さん
「その信頼が逆に怖い。失敗してもいいよっていうのもあるし。素人にこんな仕事させてくれるなんて」
修復ボランティアは、鈴木さんにとって文化財のような建物に自由に触れることができる貴重な機会。ただ、定期的に通う理由は、それだけではありません。
鈴木さん&森さん
「ここの家主さんといい関係になれた、仲良しって言ったらあれですけど想いが分かったんで、そのために来るみたいな感じですかね。いいこと言ってくれましたね。来年4月からはもうそちらのほうに行かざるを得ないんでこっちでいろいろ手出せるっていうのは長期間手出せるのはあんま日数ないですけどそれでもここだけは直しておかないと泊まる人が魅力に感じれないかなみたいなところは無理してでも直したいぐらいな想いは持ってます。震災をきっかけに出会ってまたその後のつながりもずっと子どもたちもつながっていけたらなあって、そう思いますね。湧土君就職してからもすごい楽しみだし」
来年春の就職までに、できる限り、建物をよみがえらせるつもりです。
そして、将来は地元木曽で働きたいと考えている鈴木さん…。
後日、完成した縁側の写真が届きました。