【特集】「タクシーがつかまらない」「タクシーの予約ができない」 一体どうなってるの?「客を運びたくても運べない」タクシー業界は今…
最近、「タクシーがつかまらない」、「タクシーの予約ができない」という話、耳にしたことありませんか?
通院や飲んだ後などの移動手段として欠かせないタクシーに今起きている異変とは…?
配車センター「はい、ごめんなさい、もういっぱいなんですよ」
移動が増える師走。
長野市のタクシー会社では、朝から電話が鳴り響いていました。
長野観光タクシーオペレーター 山岸真理子さん
「ずっと鳴っていますね。1000本くらいは鳴ると思います。1日で。」
Q1000本!?
「はい。全部取れるかと言ったら取れないんですけど。」
長野市内、最大手の長野観光タクシー。
子会社の篠ノ井観光、さらに、先月、営業権の譲渡を受けた桜観光と合わせて運転手123人を抱えています。
そのすべてのタクシーの依頼を受け付けているのがこちらの配車センター。病院の診療が始まる午前9時前後は、1日の中でも忙しい時間帯の一つです。
山岸真理子さん
「きょうは年金日の割には結構落ち着いちゃっている。3235予約の方が少なくて、お年寄りの方はその時に電話をいただいて」
電話の多くが、車の運転が困難な高齢者。
その利用者たちは最近、ある変化を感じています。
Qどういう時にタクシーを使う?
市内在住・80代
「病院通いです。今はもうなじみのところだけ回してもらえるけど、他というのはちょっときついみたい。」
市内在住・70代
「24時間サービスじゃないんですか?と聞いたら、運転手さんがなかなか集まらないしということで、朝7時半からしか予約取れませんということだったの。あぁ時代が変わったんだなと」
口にするのは、「予約の取りにくさ」
いまの時季、忘年会の利用も多いという飲食店でも…。
やま茶屋 赤池恵利子女将
「長野市内の(タクシー)会社いくつか当たってはみるんですけど、やはりだめで、従業員が表で拾ったりとか。まさか断られるというのは思ってもみなくて、こんなに大変なんだってつくづく最近は思いますね」
配車対応の様子
「ありがとうございます。長野観光でございます。お世話様です。はい、ごめんなさいもういっぱいなんですよ。その時お電話いただいて空いていればお向かいできるんですけど、ちょっときょうは難しいかもしれない…。」
長野観光タクシーオペレーター山岸真理子さん
「私が入ったばかりのころは、『10台口ですね。分かりました』みたいな感じで、ドライバーさんがいっぱいいたというか、車がいっぱいだったというか、配車できたんですけど、今は1台でしたらなんとかという感じで、3台口、4台口いただいても、それすべてをうちで賄うのは難しい」
エリア最大手をもってしても厳しいという、配車の現状。
その背景にはタクシー業界全体が抱える運転手不足があります。
県タクシー協会によりますと、新型コロナが流行した3年余りの間に県内でおよそ700人の運転手が離職。それまでの減少傾向に拍車をかけました。
人の移動が戻った今、、運転手の数は増えていません。
さらに、今年4月国はタクシー運転手の労働時間の基準を改正。1か月の拘束時間がそれまでよりも短く制限されたことで、以前のように、タクシーが足りない時間帯を簡単には埋められなくなったと言います。
長野観光タクシーでは、運転手にこまめに休憩を取ってもらうことで、1日中まんべんなく台数を確保できるようできる限り調整しているといいます。
一方で、スマホの配車アプリの活用も進んでいます。長野市内では長野観光を始め3つのタクシー会社が導入。
利用客の周辺にいる空車のタクシーが一目で分かり、そのタクシーの運転手と直接、配車のやり取りをするシステムです。これにより、予約の際のストレス緩和や、効率的な配車に役立っています。
つばめ長電タクシー滝沢洋将副社長
「ここは対向車がくる場合がありますから徐行でお願いします」
今月、別のタクシー会社で、行われていたのは、新人研修です。入り組んだ住宅街などを走り事前にそのエリアの特徴を知ることが目的です。
滝沢洋将副社長
「このあたりだと近くにスーパーが無いんですよね。/こうした昔ながらの住宅地のところ、初めて行くところでもお客様の言ったところにしっかり安全に送迎するというのも私たちの仕事」
新人のタクシー運転手
「ほかの方を乗せている状態だと緊張感が増しますので、うまく力入れるところと抜くところをコントロールしないと…緊張しないようにとは思っています」
長野市のつばめ長電タクシー。今年6月以降、12人の新人運転手を採用しました。過去30年間で最も多い数です。
滝沢洋将社長
「コロナの時に運収が減ってしまったということで離職者が増えてしまったと。その時に求人を当然やらなければ事業も永続できないところがあります。その中でなおかつインバウンドのお客様の注文も増えていると。あとは忘年会のシーズンで注文が増えている時期でもありますので、できるだけ一人でも多くの運転手さんに育っていただいてしっかりお客さんを送迎できればと乗務員の採用に努めているところです」
運転手になるには、2種免許の取得や法律に基づく研修を受けなくてはなりません。そのため、試用期間を含めれば求人から独り立ちまでおよそ半年、免許取得費も会社で負担するなど、人材確保には時間とお金がかかります。
滝沢洋将副社長
「タクシーはお客様をしっかり目的地に運ぶというのが仕事なので、仕事をするからお金をいただくと。根幹が揺らいでしまっているというところがあります。仕事の原点とは何かなというところを考えなければなというところです」
客を運びたくても運べない。
タクシー会社の工夫と模索が続いています。