【導く】ドラフト会議6人指名 富士大野球部 強さの秘密
19日の特集は、10月のプロ野球・ドラフト会議で同一チームとして史上最多タイの6人が指名された岩手県花巻市の富士大学です。
なぜプロから大量6人が指名されたのか?
そこには独自の育成術と強い信頼関係がありました。
(歓声と拍手)
オリックスからドラフト1位指名を受けた麦谷祐介外野手。
(歓声と拍手)
広島から2位指名を受けた佐藤柳之介投手。
上位指名の2人を含め6人がドラフトで指名された富士大学野球部。
ことし全国で最も多いドラフト指名選手を輩出したチームの練習を見に行くと…
なにやら液体が入ったものを抱きかかえて打撃の動きを繰り返したり…
サーカスのような動きで全身を使って大きなボールを投げたり。
持ち手が二つある変わった形状のバットを使っている選手も。
さらにこちらのノートには…、10メートル走や30メートル走など各選手の記録が細かくメモされています。
チームを率いるのは安田慎太郎監督。
自ら選んだユニークな練習道具を駆使して一人一人の選手を丁寧に育成しています。
安田監督
「僕のニュアンスで伝えたとしても選手側の受け取るニュアンスが違うとズレてくる。伝えたいのは感覚であって言葉じゃない。感覚を伝えるためにギア(道具)を挟むイメージ」
ユニークな道具を使った練習でドラフト1位指名される選手に成長したのが麦谷祐介外野手です。
元々、50メートル5秒8の俊足と遠投110メートルの強肩はプロレベルでしたが、上位で指名候補の選手ではありませんでした。
麦谷選手
「バッティングは本当に高校時代は(技術が)なかったので、技術的には富士大学そして安田監督に出会えたことが打撃力アップ、今の現状に至っている」
麦谷選手を高校時代から見ていて、スイングの軌道を変えることが必要だと確信していた安田監督。
大学入学当初からこの羽子板のような形をしたバットを使った練習を開始。
高い確率でボールを打てるスイング軌道へと導きました。
安田監督
「(麦谷選手は)横軌道の振りが強くて、横から入ってきてリストターンが早かったので、ターンすると一つの点(で打つこと)になる。バットは(本来)丸だが面だととらえたときにここで打ちたいので、ここから打てるようにして打つ確率を打てるゾーンを広くするイメージ」
地道に練習を続け、3年生で迎えた去年の全国大会。
のちにドラフト1位でプロ入りした2人の投手からホームランを放ち高い打撃技術をアピール!
大学での鍛錬でアマチュア屈指の外野手に成長しました。
麦谷選手
「(安田監督はプロに)自分が行けなかった分、指導する子どもたちを上の世界に行かせたい気持ちがある。本当にそれが心から伝わる指導をされている」
安田監督は宮城県の仙台高校から東北学院大学に進んだ後、国内外の独立リーグを渡り歩き、28歳まで野手としてプロ入りを目指しましたが、夢は叶いませんでした。
だからこそ、プロ入りへの強いこだわりがあります。
安田監督
「この選手は(プロに)行けなかったとか、この選手が(プロに)いったというのも実際に見ているので、ギリギリのラインの選手を結構見てきて、うちに来る選手はプロに行きたい選手が多いのでそこを叶えてあげたい思いがある」
その安田監督が、「一緒にプロを目指そう」と高校時代に声をかけたのが広島から2位指名を受けたエースの佐藤柳之介投手です。
佐藤投手は、高校時代から育成でのプロ入りの可能性がありましたが、ドラフト上位を目指して富士大学に入りました。
しかし、大学1年生の時に「肩」を故障し、安田監督は子どものころから染みついた腕の振りを変えるようアドバイスしました。
佐藤選手
「すごく自分の中でもこのくらい大きなけがをしたことがなかったので、少し自分の中でも不安や焦りだったり…」
この時、安田監督は佐藤投手が夢見るドラフト上位指名を達成させることだけを考えていました。
安田監督
「(上位指名に)届く位置にいればリスクを冒す必要はないので、(彼には)そこまで話すんですけど、彼の場合、上位指名で行きたい、支配下で行きたいとなったとき、あのフォームのままでは、またけ がをする」
取り組んだのはショートアームといわれる大谷選手も取り入れたコンパクトな腕の振り。
最初は感覚が合わず、1年もの月日がかかりましたが、打者から腕の振りが見えないシャープなフォームを習得。
肩への負担が少なく、けがのリスクが減っただけでなく、最速は148キロに到達。
変化球の切れや制球力も上がり、全国の舞台で3勝をあげて去年チームを全国ベスト4に導くなど活躍し、見事、ドラフト上位指名を実現しました。
佐藤投手
「けがをしたことは自分のなかで痛かったが、すごく成長につながった。けがの状況を聞いてくださるので、すごく話しやすく自分も伝えやすい。すごく選手ファーストな監督だと思う」
プロという少年時代からの夢を岩手の地で叶えた選手たち。
大学最後の秋に描く夢があります。
佐藤投手
「安田さんを日本一の男にできるように頑張りたいなっていう風には思ってます」
麦谷選手
「最終的には日本一、そして安田監督を胴上げできるようにチーム全員で頑張りたいなと」
19日、開幕した明治神宮野球大会。
安田監督が鍛えあげた選手たちがチーム初の日本一を目指します。
安田監督
「今の4年生が入ってくるときに、プロにやっぱり6人が7人はいけるよって話はして、その後に日本一を狙える戦力にもなるっていう話もしたので、やっぱり勝って完結してもらいたいなっていうのはありますね」
今回は麦谷選手、佐藤投手を中心にお伝えしましたが、同じように多くの選手が大学4年間での夢の実現を目指す日々を送ってきました。
明治神宮大会の富士大学の初戦は22日金曜日、佛教大学と創価大学の勝者と戦います。