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【独自取材】「捜査員カッコ良かった」「やってないもん(笑)」『紀州のドン・ファン殺人事件』初公判 元妻・須藤早貴被告を最も知る人物が語る“素顔” 最重要ポイントは「覚醒剤がどのように入ってきたか」

2024年9月12日 7:30
【独自取材】「捜査員カッコ良かった」「やってないもん(笑)」『紀州のドン・ファン殺人事件』初公判 元妻・須藤早貴被告を最も知る人物が語る“素顔” 最重要ポイントは「覚醒剤がどのように入ってきたか」
須藤早貴被告、初公判の行方は―

 総資産30億円、交際した女性4000人―“紀州のドン・ファン”こと野崎幸助さん(当時77)が死亡してから6年。彼を殺害したなどの罪で起訴された55歳年下の元妻・須藤早貴被告の初公判を前に、『ミヤネ屋』は須藤被告を最も知る人物を独自取材。証言を基に見えてきた、知られざる逮捕劇の裏側とは?裁判の“真の争点”とは?元検事・亀井正貴弁護士の解説です。

■“紀州のドン・ファン”死亡から6年…裁判では異例となる『28人の証人尋問』

 2018年5月24日、資産家・野崎幸助さん(77)が自宅で死亡し、死因は『急性覚醒剤中毒』でした。亡くなった当日自宅にいたのは、元妻・須藤早貴被告と家政婦の二人。野崎さんと須藤被告が結婚したのは、事件の3か月前だったということです。

 須藤被告は、『殺人などの疑い』で2021年4月に逮捕・5月に起訴されました。また、覚醒剤の密売人と接触したとみられることがわかっていますが、殺害したという直接的な証拠は見つかっていません。

 2024年9月12日に初公判を迎えますが、須藤被告は無罪を主張するとみられています。検察側は、28人の証人を申請しているということです。

Q.2021年に逮捕・起訴され2024年に初公判、この期間をどう見ていますか?
(元検事・亀井正貴弁護士)
「とんでもない時間が経っています。通常の公判前整理手続きと比べて、かなり長いです」

Q.『28人の証人』は、すごいことですか?
(亀井弁護士)
「異例です。私は聞いたことがないし、やったこともないです。せいぜい10人、それでも多いなと感じます。恐らく検察側が証拠請求した証拠は膨大で、それに対して不同意だったので28人やっていったと思うんです。ただ、弁護団の体制や方針が途中で変わった可能性もあるかと思います」

Q.28人の証人を『申請』ということは、全員が出てくるわけではないですか?
(亀井弁護士)
「いえ、恐らくこれは採用されていますから、28人出てくると思います」

■『早貴は野崎さんの体に一回も触らなかった』あの日、一体何が―

 野崎さんの死後、一時期自宅に住み込んで取材を続けていたというジャーナリスト・吉田隆氏。生前、野崎さんとは深い親交がありました。

 吉田氏は事件後、野崎さんの家政婦から、電話で訃報を聞きました。

(ジャーナリスト・吉田隆氏)
「『社長(野崎さん)が死んだんよ』って言うから、ビックリしたんです。早貴(被告)に、『気を落とすなよ、明日行くから』というふうに言いました」

 翌日には、急いで和歌山・田辺市にある野崎さんの自宅へと向かった吉田氏。倒れた野崎さんを発見した当時の様子を、家政婦から聞いたといいます。

(吉田氏)
「『社長(野崎さん)の体がカチンカチンだった』って、それがもう印象的で。『体温は?』と聞いたら、『体温はあった』って言うんです。早貴(被告)が119番通報したらしいけど、『早貴(被告)、社長(野崎さん)の体に一回も触れなかった』って言うわけ。え?って思ったんです」

■「背伸びしすぎ」「とにかく見栄を張りたい」須藤被告の素顔に迫る

Q.須藤被告の第一印象は、どういう印象を持たれましたか?
(吉田氏)
「なんて言うのかな…背伸びしすぎ。ブランドもので全部、固めているわけです。ヒールも、すごく細いヒールで。『あぁ、背伸びしているな』というふうに思いました」

(吉田氏)
「とにかく見栄を張りたいんでしょうね、彼女は。『新宿のマンションに、お姉さんと住んでいる』と言うから、『家賃はいくら?』って聞くと、15万円とか言う。お姉さんは看護師だって言っていた。でも、『どこの病院?』と聞いても、『何区の病院?』と聞いても、答えられない。あ、これ全くウソだな、と。それで、あるときに『全部ウソでした』と言うんですよ」

 また、吉田氏によると、須藤被告は写真を撮られること・人前に出ることを極端に嫌がり、「結婚式を挙げるなら離婚する」とも言っていたということです。

■野崎さんから電話「なんとか田辺に来てもらいたい」 “二人きりの4時間”に何が?

 2018年5月24日、事件があった日の野崎さん・須藤被告・家政婦の動きを、時系列でまとめました。

<正午ごろ>野崎さん・須藤被告・家政婦の3人で昼食
<午後3時ごろ>家政婦が外出し→野崎さん・須藤被告が二人きりに
<午後5時ごろ>野崎さんは2階の寝室へ
<午後6時前>野崎さんは1階でビールを飲み、再び2階へ
<午後7時ごろ>家政婦が帰宅
<午後8時ごろ>須藤被告・家政婦がリビングでテレビ観賞→この時、2階寝室から「ドーンドーン」と物音
<午後9時ごろ>野崎さんの死亡推定時刻
<午後10時ごろ>須藤被告・家政婦の順で2階寝室へ→野崎さんはソファで動かず(口から泡・体は硬直)

 上記のように、午後3時ごろ~午後7時ごろまでの4時間、須藤被告には野崎さんと二人きりの時間がありました。

 吉田氏は、野崎さんと須藤被告が“二人で過ごしていた”とされる時間帯に、野崎さんと話したといいます。

(吉田氏)
「僕は、野崎さんが亡くなった5月24日午後4時に、話をしている。電話がかかってきて、『なんとか田辺に来てもらいたい』と」

 事件翌日、須藤被告に確認すると―。

-(吉田氏)
-「昨日(事件当日)の午後4時ごろ、俺が電話したとき、君はどこにいた?」

-(須藤被告)
-「2階寝室のソファで、野崎さんの隣にいました」

-(吉田氏)
-「君は何をやっていたの?」

-(須藤被告)
-「ゲームをやっていました」

-(吉田氏)
-「社長(野崎さん)は?」

-(須藤被告)
-「テレビを見ていました」

-(吉田氏)
-「何を見ていた?」

-(須藤被告)
-「何だっけな」

-(吉田氏)
-「何だっけな、じゃないだろう。24時間、経っていないんだよ」

(吉田氏)
「全然、答えられない、何にも答えられない。それで、須藤被告は『午後5時すぎに、野崎さんが1階に行ってビールを飲みました』『うどんにも手をつけた』みたいなことを言った。野崎さんは、うどんが好きです。でも、野崎さんは午後6時ぐらいには大体寝るから、夕ご飯を食べる習慣がないんです」

 また、須藤被告は「午後5時すぎぐらいに野崎さんがビールを飲んだ」と話していたということですが、吉田氏が家政婦に聞いたところ、「須藤被告が片付けるはずはないが、空いたビール瓶はなかった」と言っていたということです。

 警察などの発表によると、野崎さんが1階でビールを飲んで2階に上がったのは、午後6時前だとされています。

Q.警察は、ここまでわかるものですか?
(亀井弁護士)
「家政婦など、関係者の供述で出てきたのだと思います」

■「捜査員カッコ良かった」「戻ってきてもアラサーやん」笑いながら話す須藤被告と家政婦のやり取り

 連日、警察の聴取を受けるようになった須藤被告。吉田氏は、家政婦が「さっちゃん(須藤被告)の捜査員はイケメン」と言うと、須藤被告は「そっちの捜査員だってカッコ良かったじゃないですか」と答えるといった、不謹慎な会話を聞いたといいます。

(吉田氏)
「6月1日までの間に、須藤被告は毎日のように事情聴取に引っ張られていて、帰ってくると、今日は何を聞かれたというのを全部、僕に喋っていた。僕は、『やったとしたら自首しなさい』と何度も言いました。そしたら、須藤被告は笑いながら『やってないもん』って言うんです」

 さらに、こんな会話も―。

-(家政婦)
-「もし逮捕されたら、どのくらいの量刑なの?」

-(吉田氏)
-「(適当に)15年ぐらいかな。でも、自首すれば軽くなる可能性がある」

-(家政婦)
-「早貴ちゃん、行きなよ。戻って来てもアラサーやん」

-(須藤容疑者)
-「適当なこと言わないでください」

(吉田氏)
「そう言いながら、早貴(被告)は笑っていたんです」

■「覚醒剤がどのように入ってきたかが本件の最大のポイント」ついに始まる初公判、裁判の争点は?

 2024年9月12日に行われる初公判では、何が争点となるのでしょうか。

 『動機・殺意』について、須藤被告は「毎月100万円のお手当をもらうのが決まっているのに、私が殺すわけがない」と話しています。ただ、野崎さんには“最後の愛人”と呼ばれていた女性がいて、野崎さんは「須藤被告とは離婚して、彼女と結婚する」と周囲に漏らし、須藤被告に離婚届を渡していたということです。

Q.「離婚された場合、100万円のお手当はどうなるのか」という不安・心配が、一つの動機になり得ますか?
(亀井弁護士)
「100万円の問題もありますが、野崎さんが死んで、それが殺しだとわからなければ、多額の資産を承継します。そういった意味では、動機としては十分だと思います」

 『覚醒剤の入手方法』については、捜査関係者によると、須藤被告は「覚醒剤や完全犯罪の情報を検索」「覚醒剤の密売人と接触した形跡あり」ということですが、須藤被告本人は日常的に覚醒剤を使用していた形跡がなく、密売人が証人として出廷するかもポイントです。

Q.密売人は特定できているのでしょうか?
(亀井弁護士)
「特定できていると思います。恐らく、この事案で最も重大なのは、ここです。というは、密室性や動機は見えますが、あとは何がないかというと、事件性を表す証拠・自殺を否定するような証拠です。覚醒剤がどのように入ってきたか、ここが本件の最大のポイントです」

Q.密売人が証人として出る可能性はありますか?
(亀井弁護士)
「可能性は高いと思います。一番わかりやすい検察の支えは、ここです」

Q.自分が逮捕される可能性もあるのに、証人として出ますか?
(亀井弁護士)
「取引まではしないと思いますが、もしかしたら服役中かもしれないし、服役を終えた後かもしれません」

Q.28人の証人の中に「覚醒剤を須藤被告に渡した」と言う人がいたら、裁判が早く進みますよね?
(亀井弁護士)
「大きな決定打になると思います。直接の密売人ではなくても、それを知っている人間など、覚醒剤が須藤被告のところに入ったことに関して知識を持っている人が出てくると、かなり有力な証拠になると思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年9月11日放送)

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