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【なぜ?】「基本的に“破壊”です」文化財・美術品の“トンデモ修復”スペインで続出!原因は『知識不足』と『善意の暴走』⁉無くならない背景には、信じられない『成功体験』が…

2024年9月4日 17:30
【なぜ?】「基本的に“破壊”です」文化財・美術品の“トンデモ修復”スペインで続出!原因は『知識不足』と『善意の暴走』⁉無くならない背景には、信じられない『成功体験』が…
“トンデモ修復”の被害に遭った天使像

 “太陽と情熱の国”であり、“芸術の国”でもあるスペイン。古典の巨匠にしてモダニスト・ゴヤや、20世紀を代表する巨人・ピカソなど、世界に名高い“アートの国”スペインが今、なぜか『美術品修復』の分野では“暗黒の国”となっています。なぜ“トンデモ修復”はなくならないのか?そこには、ある“成功体験”があって…。

■由緒ある教会が、白い天使像が…「良かれと思って」“芸術の国”スペインが美術品修復“暗黒の国”に

 スペイン北部の小さな町・ソリア。1725年に建てられた由緒ある教会は、元々は白い漆喰を基調にした趣ある聖堂だったのですが…。

 “修復”後、柱や天井がピンク色にベッタリと塗られる事態に。

-(保護団体/SNSで)
-「貴重な文化財!なんで、こんなことになるんだ?」

 教会に起きた異常事態を世界に発信したのは、ソリアの文化財が直面する現状を監視し、保護活動を行っている地元の団体です。

 その保護団体が特に驚いたのが、教会の天井近くから信者たちを見つめてきた『白い天使像』。悲しむような、驚き戸惑っているような、微妙すぎる表情に“修復”され、髪の毛もベッタリと真っ黒に…。

-(保護団体/SNSで)
-「これは、貴重な文化財への破壊行為だ!」

 なぜ、こんな“シロウト修復”が起きてしまうのか―。

 『ルーブル美術館』でドラクロワなどの貴重な名画を修復してきた専門家・加賀優記子氏は…。

(元ルーブル美術館・絵画修復員 加賀優記子氏)
「基本的に“破壊”です。神父側が、『これはやらないでね』と言わなきゃいけない部分を知っていないといけなかった。塗装工側は、そもそも本当に知識がないので、良かれと思ってやっているみたいなんですけど…」

■世紀の“トンデモ修復”『サルになったキリスト』 その“成功体験”が黒歴史の原点か?

 スペインの“残念過ぎる修復”―その“黒歴史”のスタートは、あの有名な『キリストの絵』でした。

 1910年、スペイン北東部の街・ボルハで、スペイン人画家によって教会の柱に描かれたキリストのフレスコ画『この人を見よ』。100年以上の歴史を刻んだ壁画は、傷みが激しい状態に…。そこで、2012年に「我こそが!」と絵画修復に乗り出したのが、近所に住むセシリア・ヒメネスさん(当時80)でした。

(セシリア・ヒメネスさん)
「傷んだ絵を見て、居ても立ってもいられなかったの。私は5歳のころから、ずっと絵を描いてきたのよ」

 しかし、その出来上がりに、世界の反応は…。

『キリストがサルになった!!!』

 これには、原画作者の孫テレサ・ガルシアさんも、怒り心頭。

(原画作者の孫 テレサ・ガルシアさん)
「頭の部分を描き始めた時から、問題だらけ。彼女は、元の絵を破壊してしまったんです」

 ボルハ市は、絵画修復の専門家派遣を要請。早急に元の状態に戻すはず、だったのですが…。

 “トンデモ修復”報道で、世界中から1年で5万7000人もの観光客が殺到する事態に発展。問題の作品の前には、長蛇の列が…。

 教会側は、訪問者一人につき1ユーロ(当時のレートで約130円)の入場料徴収をスタート。さらに、問題作をプリントしたマグカップやTシャツ、挙句の果てにはワインまで販売。

 その著作権収益の49%はヒメネスさんに、残りの51%は教会側に、まるっと山分けの契約が成立。2016年には、教会内に『“トンデモ修復”情報センター』までオープンし、もはや状況は“あの日”に戻れないほど加熱したのです。

(絵画を修復したヒメネスさん)
「素晴らしいわ。これまで苦しんだ私の人生の終わりに、神様がこの幸せを与えてくれたのよ」

(元ルーブル美術館・絵画修復員 加賀氏)
「現代らしいお話なんでしょうけど、非常に困ったお話というか、結局、その国が国民に対して、末端までの文化度をどうやって上げるのかという、その辺りは大切なことかもしれません」

 2020年6月23日、『スペイン保存修復専門家協会』は「保存修復の専門家は仕事に恵まれず、海外に移住したり廃業したりして、絶滅の危機にさらされている。この状況が、文化遺産保護の欠如を生む」と、内情を暴露しています。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年8月23日放送)

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