関東学連は“希望” 東大大学院29歳の古川大晃が挑む憧れの“箱根駅伝” 走りを分析するランナー兼研究者の挑戦
■大学院では「走り」を研究 ランナー兼研究者
古川選手は現在、東京大学大学院で人の後ろについて走る「追尾走」の効果について研究。ランナーでありながら、「走り」を科学的に分析している研究者です。
きっかけは「人と一緒に走る時に楽に感じたり早く走れたりすることが不思議だな、なんでなんだろう」と思ったから。自身の走りが経験も研究に生きているそうで、「走っている時はあまり考えないようにはしているのですが、どういう意識で(後ろに)つくことが効率がいいのかは、研究から受けている恩恵があるかな」と語りました。
■大迫傑、柏原竜二らに憧れも…… 一度は「ないもの」と思った箱根出場
古川選手が「走り」に興味を持ったのは小学生の頃。「校内のマラソン大会で1番を取ることができて、あまり取りえのない自分にも取りえがあるんだとすごくうれしくて」と笑顔。自然と箱根駅伝にも興味を持つようになったといいます。
「1区の大迫(傑)選手の奇襲作戦だったり、5区の柏原(竜二)選手だったり」に憧れ、大学は箱根駅伝に出場できる関東学生陸上競技連盟の加盟校、すなわち関東の大学に進むことも考えたそうですが、親のすすめもあり、九州の大学へ進学。
「正直関東の大学に進めずに箱根を目指せなかった時からは、もうチャンスがないので悔しい思いもなく。諦めるというか、ないものだと思っていた」
当時を振り返る古川選手は、進学後は箱根に出場できなくても、走ることを続けてきました。
すると26歳の時、古川選手に転機が訪れます。研究を続けながらも箱根を目指せる環境にある東大大学院への進学を決意。「ここで頑張ったら箱根がもしかしたらあるのかもしれないと思って、すごいモチベーションになって力がわきました」と語りました。
■「このチャンスを絶対に無駄にしたくない」過去2回は補欠で走れず
学生連合は10月の箱根駅伝予選会で敗れたチームの中から、タイム上位者によって編成。東大大学院に進学した古川選手は1、2年連続で学生連合チームに選出されましたが、2年連続補欠で出場はかなわず。前回の第100回大会では、記念大会のため学生連合チームは編成されませんでした。
だからこそ今大会にかける思いは強い。
「高校の時に箱根駅伝に出たいと思って、自分は走れると信じたあの時の憧れ。このチャンスを絶対に無駄にしたくない」
10月の予選会では、序盤から先頭集団に食らいつきます。
「経験として積極的にいった方がトータルでタイムが良くなると思っていたので、最初から(先頭についていくことを)決めていました。きつかったんですけど、『このまま耐える!』というところで、なんとかかんとか最後まで持ちこたえることができました」
季節外れの暑さの中、作戦が功を奏し、古川選手は全体60位でフィニッシュ。学生連合のメンバーに選ばれ、チームのキャプテンにも抜てきされました。
■古川選手にとって学生連合とはーー。
15年間憧れ続け、執念で出場機会を追い求めてきた箱根駅伝。「区間5番以内をとることができればチームに貢献できることになると思います。僕も人一倍この連合チームで上位を狙いたいという気持ちが高いので、十数年の集大成の一つだなというふうに思っています」と、本大会での目標を語りました。
そんな古川選手にとって“学生連合”とはーー。
『希望を与えてくれる制度』
「あの制度のおかげでいろいろな背景の人が箱根を目指すことができる。広い人にチャンスを与える、僕にとっても本当に“希望の星”だと思っています」と、自身に重ねた思いを語ります。
そして「(箱根駅伝は)意地でも出たいものですかね。そういう、執念みたいなものでやっている気がします」と、ここまで箱根を目指してきた原動力を熱く語りました。