「病気を知ってほしい」原因不明の病に向き合う女性の願い “食べるだけで疲れる”体験ブースやラッピングトラックで啓発活動 岐阜
5月12日は「世界啓発デー」。極度の疲労感や長時間立っていることができないなどの症状がある原因不明の病気“筋痛性脳脊髄炎”を知ってもらいたいと、自身もこの病と闘い、向き合う女性が、岐阜市で開かれたイベントで啓発活動を行いました。女性の願いとはー。
5月8日、JR岐阜駅に隣接する商業施設で、実に3年ぶりの対面イベントが開催されました。
会場では、ステージからスタッフTシャツ、展示物と、あらゆるものが青一色。
なぜなのでしょうか。
「筋痛性脳脊髄炎の啓発カラーがブルーなので」
そう話すのは、筋痛性脳脊髄炎患者会「笑顔の花びら集めたい」代表・塚本明里さん。
リクライニングの車いすに横たわる明里さんは、極度の疲労感や長時間立っていることができないなどの症状がある原因不明の病“筋痛性脳脊髄炎”なのです。
明里さんに症状が現れたのは、18年前の高校2年生の時。
病のため、一日のほとんどを自宅で横になって過ごしていました。
さらに、全身に激しい痛みが走る“線維筋痛症”とも闘っていました。
明里さんは痛みを和らげるため、現在でも週に2回、全身40か所に麻酔注射を打ちます。
しかし、根本的な治療ではなく、あくまで対処療法のひとつでしかないのです。
線維筋痛症も筋痛性脳脊髄炎に併発してしまうことが多く、この2つの病を患い、50年床に伏したといわれるのがナイチンゲール。
その誕生日にちなみ、5月12日をこの病気の啓発デーとし、シンボルカラーのブルーの明かりを灯すイベントが、世界各地で12日に行われます。
ひとりでも多くの人に病気を知ってもらおうと、明里さんたちは毎年イベントを開いていましたが、2020年、新型コロナ感染拡大の影響を受け、イベントは中止。
2021年は1時間ほどのライブ配信をして、啓発活動を続けていました。
「診断された患者の約3割が寝たきりの重症です。難病指定もされていないため、福祉支援が受けにくく、見た目にはわからないため、単なる疲れ、なまけと誤解を受ける問題を抱えています」(ライブ配信での明里さん)
そして、3年ぶりに、岐阜市で開催されたイベント「筋痛性脳脊髄炎 世界啓発デー」。
会場には、病気の症状を実際に体験するブースも。
鉄の棒で石を持ち上げる動作。実はこれ、明里さんが病気を発症したころ、学校でお弁当を食べるときに箸が異常に重く感じ、食べるだけで疲れ果ててしまったことを実際に体験してもらうものでした。
「こんな病気だったら食べるのも苦痛だし、生きていくのも大変になる」
「腕がほんと、つるんですけど。すごいですよね。毎回これで3食ですか?」(体験者)
「病気をとにかく知ってほしい」。
そんな明里さんを応援したいと、ラッピングトラックが登場。
笑顔の明里さんと「彼女はだれ?」の文字。荷台にある二次元コードを撮影すると、病気を紹介する患者会のウェブサイトへと導く仕組みになっているんです。
「ひとりでも多くの人に病気を正しく理解してもらいたい」
そんな願いを乗せて、トラックは全国を走っています。
■実は、コロナ後遺症の人にも同じ症状がー
岐阜市で開催されたイベントにやって来た、車いすの女性、愛知県一宮市在住の堀田由希子さん。
2021年8月に新型コロナの陽性者となり、微熱が続きました。その後、倦怠(けんたい)感や胸のつまりが今でも続いているのです。
実は、新型コロナ後遺症から、筋痛性脳脊髄炎と同じ症状が出る患者が増えているといいます。
明里さん:「まず理解してもらわないと」
堀田さん:「どれだけ理解してもらえるかなとか」
明里さん:「この病気を話して病気のこと、ちゃんと理解してもらえるかわからないから、まずそこがね、つらいポイント」
「この発症のきっかけになることが、塚本さんもそうなんですけど、高熱が続くってことが何日か続いた。それからインフルエンザのあとになる方もいます。この病気は30万人、日本にいると言われているんですけど、知らない人がほとんど。医療従事者の中でも、知らない人も何割かいます」(竹田クリニック 竹田智雄 院長)
治療に結び付く研究は進んでいますが、いまだ病気の原因さえもわからず、治療法は確立されていないのが現状です。
啓発活動を続ける明里さんの願いはー。
「きっと私たち病気のある人だけでなく、一般の方、健康な方でも、コロナ禍になってから大変なこと、たくさんあると思うので、そんな中でも、ひと筋の光というか、そういうものを見つけて、みんなで支え合って生きていけるような社会になるといいなと思います」(明里さん)