獣害問題に挑む学生たち 三重大学の狩猟サークル「トラッパーズ」 被害削減や技術継承に貢献 「技術を高めていくことがこれからの課題」 三重・津市
獣害対策で地域貢献を…狩猟サークル「トラッパーズ」の活動
三重大学の附帯施設農場で農作物に被害をもたらす動物を捕獲することが、現在、狩猟サークル「トラッパーズ」の主な活動となっている。
農場ではタヌキ、アライグマ、ハクビシンなどの中型動物の被害が多い。大型の箱わなを1か所、小型の箱わなを2か所、くくりわなを2か所設置し、毎日見回りを行っている。
2024年から農場での捕獲を始めたことで捕獲数は増加傾向にある。2023年はシカ3頭とイノシシ1頭だったが、2024年は10月時点で、シカ1頭、イノシシ1頭、中型動物10頭を捕獲した。
「農場は大学から近いので、見回りや撒き餌の確認に行きやすくなったことも活動の効率化につながっている」と、トラッパーズの代表・奥村亮介さんは話す。
11月から2月の狩猟期間は、三重県の山間部に位置する上ノ村でも狩猟を行っている。上ノ村で捕獲した動物は、解体してジビエ料理にしたり、皮はなめして毛皮に、角や骨はキーホルダーなどのアクセサリーに加工したりと、無駄なく活用する工夫をしている。
こうした活動するうえでトラッパーズが大切にしているのは「集落と連携した獣害対策による地域貢献」と「狩猟技術の向上」だ。
事故を防止しながら継続的に狩猟活動を行っていくためには、農場の職員や地域住民との情報共有は欠かせない。定期的にわなの設置状況や捕獲状況の報告を行い、農場の職員からは被害や目撃情報を教えてもらい、狩猟に役立てているという。
奥村さんは「狩猟活動は生き物と自然を相手にするので決まった方法がなく、獣の個体の性質と狩場の環境によって異なる。多くの知識と経験を積む必要があるので、できるだけたくさん出猟するようにしている」と語る。
コロナ禍で解散を余儀なくされるも…再結成
三重大学に狩猟サークル「トラッパーズ」が発足したのは2016年。もともとは「地域貢献サークル Meiku」の活動の一部として、上ノ村で獣害対策を行っていたが、獣害被害を目の当たりにしたメンバーたちが被害削減を目指して、狩猟をメインとするサークルを立ち上げた。
当初は、上ノ村の猟師に指導を受けながら狩猟を行い、集落の侵入防止柵の点検や補修などの獣害対策も実施。狩猟免許の取得希望者に講習会を開催したり、県で開催される獣害対策講習会などに参加して知識・技術の向上に努めていたが、2020年度、コロナの影響で後輩への引継ぎが十分にできず、解散を余儀なくされた。
それでも、地域における獣害対策の重要性は変わらず、2021年に「地域貢献サークル Meiku」の中から狩猟や獣害対策に興味があるメンバーによって再結成。現在の部員数は男子3人、女子2人の計5人。そのうち3人が狩猟免許を持っている。
代表の奥村さんは「一度技術の継承が途絶えているので、まだまだ素人の集まり。技術を高めていくことがこれからの課題」と話し、サークル発足当初の「獣害被害の削減」という目的や活動内容はそのままに、仲間とともに日々獣害問題と向き合っている。
三重県猟友会では、1993年に3447人いた会員数が、2023年では2069人となっており、年々減少傾向にある。メンバーも70~75歳が中心だ。こうした状況の中で、トラッパーズの活動は地域の獣害被害削減に貢献するだけでなく、若い世代への狩猟技術の継承という重要な役割を果たしていくことになるのかもしれない。