「子どもの転落事故」は5月が最多 過ごしやすい時期の落とし穴 住み慣れた自宅だからこその盲点も…
あたたかくて過ごしやすい季節ですが、この時期、特に注意が必要なのが「子どもの転落事故」。実は、1年の中でも5月が最多となっているのです。一体、なぜなのでしょうか?
ヒヤリとした経験を持つ保護者も多数 運動機能は発達してもリスク認知は未発達
名古屋市内にある「ひおき保育園」では、子どもたちがアサガオを大事に育てていました。花が咲くのは7月ごろ。それを楽しみに、2階のベランダで毎日水やりをします。さらに、屋上には遊具やプールがあり、夏になると毎日のようにプール遊びをしています。
この保育園は3階建て。子どもがベランダや屋上に出る時は、先生たちは細心の注意を払っています。
ひおき保育園 小塚香主幹教諭:
「情報を交換し合って、それぞれの職員が視野を広く持って、子どもから目を離さず見守ることを心がけています」
さらに、子どもたちとも、柵に上らないなどの“お約束”を徹底しているといいます。
たびたび耳にする「子どもの転落事故」。今年4月、広島市内では、高層マンションに住む3歳の女の子がベランダを乗り越えて転落し、亡くなりました。
去年は名古屋市内でも、マンションの7階から2歳の双子の男の子が転落し、亡くなりました。母親が目を離した数分の間に2人は棚によじ登り、自ら窓の鍵を開けたとみられています。
東京消防庁によると、過去5年の間で、窓やベランダからの転落で救急搬送された5歳以下の子どもの人数は、5月が最多。過ごしやすい気候になり、窓を開ける機会が増えるのが、その要因だといいます。
「ひおき幼稚園」の保護者に話を聞いてみると、「前までは掴まった時に上がれなかったのが、普通に上がる時がある」「足を上げて(子ども用の)サークルを乗り越えようとすることが結構あって、脱走しちゃうんじゃないかとドキッとしたことがあります」と、ヒヤリとした経験があるという声も聞かれました。
東京都が行った、国の基準で定められた110センチの柵を子どもが越えられるかの実験では、約7割の4歳児が登ることができました。2歳児でも足掛かりを使い、わずか8秒で登ることができた子どももいたといいます。
さらに専門家は、子どもならではの危険についても指摘しています。
Safe Kids Japan 大野美喜子理事:
「(2~3歳児は)登って落ちるとか、落ちた結果どうなるという認知能力が未発達。運動機能の発達に対してリスクの認識はついてきてない側面もあると思います」
子どもの転落事故を防ぐためには、一体どのような対策が必要なのでしょうか。
住み慣れた場所だからこそ盲点が… 家の中の危険な場所、把握していますか?
事故を防ぐために保護者たちはどのような対策を実践しているのでしょうか。「ひおき保育園」の保護者に話を聞いてみました。
0歳と2歳の子どもをもつ保護者は「1階から2階へ上がる階段にはガードをつけていて、上がれないようにしています」と話します。5歳と8歳の保護者は「子どもには言ってないですけど窓にストッパーがある。開けられても途中で止まるようになっている」と、窓を開けられないような工夫をしていました。さらに、0歳と5歳の保護者は「(子どもを)サークルの中に入れて窓には近づけさせないよう、(窓から)2~3メートルは距離をあけてる」と、窓に近づけないような対策をしているといいます。
“窓を開けさせない”“窓に近づけない”という対策は、やはり多くの保護者が実践しているようですが、専門家は自宅の転落防止対策について、このように指摘します。
Safe Kids Japan 大野美喜子理事:
「自分の家は住み慣れているので、どこが危険か見えにくくなる。家の中でどこが危険かを保護者が認識して対策するのが大事」
「ひおき保育園」でも対策を徹底しています。子どもたちはベランダに原則立ち入り禁止で、足掛かりになるような物は一切排除しています。さらに、窓にはすべて補助錠を設置しているといいます。
ひおき保育園 小塚香主幹教諭:
「必ず(屋上での)活動が終わったら、鍵をダブルロックすることは徹底しているので、子どもが勝手に屋上に一人で出たり、友達同士で出たりすることはないです」
こうした事態を受けて、国も注意喚起を行っていて、窓への補助錠の設置や、ベランダに足掛かりになるものを置かないなどの対策が有効だとしています。
名古屋市は転落防止のため、窓のレールにはめて、つまみを回して固定する補助錠の無料配布を決定。今年2月末時点で5歳以下の子どもがいる、約7万9千世帯を対象に、6月上旬から郵便で送る予定だということです。さらに今年度中には、転落防止の手すりの工事など、工事費の5割を上限20万円で補助する方針です。開始時期は決まっていませんが、できるだけ早い時期の実施を予定しているとしています。
どんなに目を配っていても、時に子どもは親が予想できないような行動をとることがあります。子どもの転落事故が増加する5月。痛ましい事故を防ぐために、今一度、家の中に危険な場所はないか確認してみてはいかがでしょうか。