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「心の準備を真剣に」孤立地区住民の避難所、“二次避難”進まないワケ

2024年1月17日 18:24
「心の準備を真剣に」孤立地区住民の避難所、“二次避難”進まないワケ

厳しい能登の冬。多くの被災者が住み慣れた家ではなく、避難所で過ごすことを余儀なくされている。地震の発生から約2週間が経過し、避難所はどんな状況に置かれているのか。

1月11日~15日にかけて、石川県輪島市の避難所に派遣された、三重県津市役所総務課・清水貴伸課長に話を聞いた。

看護師らが避難者たちの健康観察を実施

「道路にひび割れがあったりして渋滞がすごく発生していて、一刻も早くインフラが整備されないと避難所支援も進みにくいかなと感じました」

悪路を抜け、清水さんが向かったのは、輪島市西部に位置する門前東小学校。校内では、輪島市内の孤立地区から避難してきた約130人が、地区ごとに教室に分かれて生活していた。避難している人の約8割が高齢者だという。

対口支援として、三重県から輪島市に派遣された清水さん。当初は、輪島市役所の門前総合支所で支援活動を行う予定だったが、現地入りした11日時点で、市内に開設されていた167か所の避難所には1万562万人が身を寄せていいた。市の人口の約半分にあたる避難者を抱えたことで、運営にあたる市役所職員の数が不足。急遽、清水さんは避難所での支援へ移ることになった。

輪島市が震度6強の揺れに襲われてから10日。震災から数日が経過したタイミングだったこともあり、避難所の運営体制はある程度確立された状態だった。各地区ごとに住民から立てたリーダーが、運営側と住民側の橋渡しとなり、大きな混乱も見られなかったという。水道は使えない状態だったが、避難所内は清潔で電気も復旧していた。

しかし、清水さんが到着した翌日12日。避難者の中で新型コロナの感染が確認された。さらに、インフルエンザも流行。コロナ患者は個室、インフルエンザ患者は男女に分けてそれぞれ1室に隔離するなど、清水さんたちは対応に追われた。

当時の様子について、清水さんは「新型コロナに関しては、それぞれ個別の簡易トイレを設置して外でしてもらった。インフルに関しては人数が多くて個別トイレが対応できなかったので、看護スタッフと相談して、5台あるトイレのうち1か所をインフルエンザ感染者用のトイレにしていました」と振り返った。

13日には、看護師らが避難者全員の健康観察を実施。感染症の流行を防ぐため、1日2回、決まった時間に換気と掃除も行った。さらに、エコノミー症候群を防ぐため、1日2回のラジオ体操をスケジュールに組み込むなど、避難者たちの健康を守るため様々な取り組みが行われていた。

食料などの支援物資が届けられるのは1日2回。各地区のリーダーと調整しながら平等に配ったという。清水さんが避難所で活動する間、徐々に届けられる物資は充実していき、活動期間の終盤には食料以外に必要な物資がある際は、近くの輸送拠点に取りに行く方式に切り替わった。

入浴は、2~3日に1回程度設置される自衛隊のお風呂を利用することができたという。

支援物資が“必要な場所”に届かない問題

避難所が開設された当初に比べて環境は改善していたが、清水さんは必要な物資を“必要とされる場所”に届ける難しさを感じていた。

「支援物資としては古着などが結構届いているんですけど、お風呂に入る人が本当に欲しいのは下着。下着がとにかく不足していました。さすがに下着となると古着は抵抗があるので、『下着が欲しい』というのはすごく言われていました」

高齢者の多い避難所に生理用品が届いたり、別の避難所ではペットがいないのにペット用品が持ち込まれたり、支援物資が“必要とされる場所”に届かない問題が起きていた。清水さんは別の避難所で活動する三重県職員たちと連日連絡を取り合い、物資の需要と供給を調整していたという。

1日の活動が終わるのは午後11時になることも。避難所に隣接する市役所の支所で寝泊まりしながら、今月15日まで避難所の運営にあたっていた。

「古里を離れたくない」住民たちの“二次避難”への不安

避難所から親戚や知人の家に移る人が徐々に出てくる一方、活動最終日の15日にも孤立地区から新たに3人が身を寄せるなど、避難生活に終わりは見えない。

そんな中、課題となっているのが住民たちの“二次避難”。輪島市では、金沢市など、市外の施設に一時的に避難することを促しており、14日、門前東小学校の避難所でも二次避難の説明会が開かれた。

しかし、清水さん曰く「あまりいい反応ではなかった」という住民たちの反応。別の日に行われた仮設住宅の説明会では約70件の申込が殺到したが、二次避難の説明会では、市外に避難することに難色を示す声が大半を占めたという。

避難する人々の間には、古里を離れることへの不安があった。清水さんは、「地元を離れるということになるのと、家族の仕事がある人もいて、仕事が続けられるのかということで抵抗があって…。実際に空き巣が入ったというのはそれほど聞かなかったんですけど、皆さんの間で噂で流れていたので、その場所から離れるのは余計に怖いということで、できたら仮設住宅で家の片付けをしながらっていうのを望んでいた」と話す。

一方で、今回の地震の影響で、石川県内では14人が持病が悪化するなどして亡くなっている(16日時点)。清水さんは、市外に出られない事情を理解しつつも、災害関連死を防ぐため、二次避難は必要だと訴える。

「今の避難所の生活をずっと続けると、やっぱり健康問題が多くなってくるかなと思う。それより二次避難してもらって、快適なところで過ごしてもらう方がいいと思います」と話す清水さん。その上で二次避難を進めるために欠かせないのは、避難する人々に安心感を持ってもらうことだという。

続けて、「警察がずっと巡回するとか、地元は大丈夫だよと安心してもらう状態を整えた上で、二次避難を進めるのがいいかなと思いました。もうひとつは(被災者には)家の片付けをしたいという思いがあるので、そこに対して何か支援の手があればいいと思います」と二次避難への思いを述べた。

ただでさえ不安が募る災害時。一時的であっても、住み慣れた地から離れることには大きな不安がつきまとう。清水さんは、被災地の現実を目の当たりにし、今回の地震を“人ごと”と思わず、普段から災害について考えてほしいと訴える。

「(今回の地震を)自分事と捉えて、家族でこういう場合はどうするかっていうのを事前に話し合ってもらう。事前の心の準備を真剣に話し合ってもらうことが一番大事だと思います」と私たちが取り組むべき課題について語った。

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