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【期待】「若い人が飲んでくれないと」福岡・佐賀の酒蔵では 「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産に登録決定

2024年12月5日 18:33
【期待】「若い人が飲んでくれないと」福岡・佐賀の酒蔵では 「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産に登録決定

日本時間の5日未明、ユネスコの「無形文化遺産」に、日本酒や焼酎など、日本の「伝統的酒造り」の登録が決まりました。今回の決定で福岡・佐賀の酒造関係者からは需要増加への期待が高まっています。

福岡県大刀洗町の酒造会社「みいの寿(ことぶき)」は、秋に収穫した新米を醸造し、仕込みで最も忙しい時期です。そうした中、飛び込んで来たうれしいニュースでした。

■みいの寿・井上宰継社長
「きょうの朝方でしたが、ユネスコの無形文化遺産に日本の伝統的酒造りが選ばれたことによって、世界に知ってもらえるいい機会になったなと思っています。」

パラグアイで開催されているユネスコ政府間委員会は5日未明、日本酒や焼酎、泡盛などを造る技術である、日本の「伝統的酒造り」をユネスコの無形文化遺産に登録することを決めました。

今回、世界から評価されたのが、麹(こうじ)です。

■井上社長
「こちらが45時間、約3日間かけて作った麹になります。麹が、一番重要な酒造りの役割を果たすものになっています。」

酒造りは、穀物を原料とする麹を使って発酵させる、日本の伝統的な技術です。この技術は日本で室町時代に原型が確立された後、日本各地の気候風土に合わせて発展し、独自の文化を築いてきました。

■井上社長
「麹によってお酒が変わると言っても過言ではないくらい、一番重要だと思っています。麹だけは、各蔵が自分でオリジナルで自分の作り方で作りますので、麹が一番、味の決め手になるものです。」

この酒蔵の代表的な日本酒が、数字の14と赤いラベルの「三井の寿」です。バスケットボール漫画「スラムダンク」の登場人物を連想させると話題になりました。

■井上社長
「今回の無形文化遺産は、起爆剤になり得ることだと思っています。」

佐賀の“酒どころ”鹿島市でも喜びの声が上がりました。

■鹿島市観光協会・中村雄一郎代表
「佐賀のお酒、ひいては日本のお酒の良さを発信できる絶好の機会だと思いますので、これをチャンスと捉えて頑張りたいと思います。」

佐賀県鹿島市にある酒蔵の1つで、100年以上続く富久千代(ふくちよ)酒造。この酒蔵の代表的な日本酒が、世界的な賞を受賞したこともある銘酒「鍋島」です。

■元木寛人アナウンサー
「飲みやすい、おいしいですね。香りが良くて、ほどよい甘みもあって。」

富久千代酒造では東アジアを中心にアメリカなどにも日本酒を輸出していますが、飯盛社長が今回の登録決定をきっかけに期待するのは、日本国内での需要回復です。

■富久千代酒造・飯盛直喜社長
「改めて日本の方々に認識いただいて、日本でも盛り上がってほしいというのが一番です。」

背景にあるのは、国内での「日本酒離れ」です。日本の国内出荷量は、1998年には113万キロリットルほどありましたが、ほかのアルコール飲料との競合などで減少し、去年は3分の1のおよそ39万キロリットルにまで落ち込んでいます。

こうした状況の中での登録決定に、飯盛社長は伝統の技が生きる日本の酒を知ってもらう「いい後押し」だと話します。

■飯盛社長
「若い人が飲んでくれないと将来もないので、日本酒を誇れる若い人がいてくれたら、いい応援団になってくれるし、その応援団をちゃんと作っていかないといけないのかなと。」

世界が認めた伝統的な技で造る日本酒。今回の決定が国内での需要回復の起爆剤になればとの期待がふくらんでいます。

最終更新日:2024年12月5日 18:33