嬉野温泉で宿泊税の導入・入湯税の引き上げを検討 新幹線開業で観光客が増加 源泉を守りより良い観光地に 佐賀
佐賀県の嬉野温泉は、日本三大美肌の湯として知られています。西九州新幹線が開業してまもなく1年半、コロナ禍後の訪日客も戻ってきて観光客が増えています。そうしたなか、嬉野市は将来的な温泉資源の保護を目的に、「宿泊税」の導入や「入湯税」の引き上げを検討しています。
おととし9月の西九州新幹線開業で、より多くの観光客が利用するようになった嬉野温泉駅です。
■元木寛人フィールドキャスター
「嬉野温泉駅の正面にあるのが、こちら、手湯です。手を入れてみますと、温かくてぬめりがあるのが特徴です。お肌がスベスベになるのが実感できます。」
嬉野温泉は日本三大美肌の湯と言われます。ぬめりのあるお湯はナトリウムを多く含み、つるつるの肌になると人気を呼んでいます。
来年、創業100年を迎える温泉旅館・大正屋です。新幹線開業後の1年で、宿泊客は前の年の1.5倍近く、1万3000人以上増えました。
■大正屋・山口剛 副社長
「最近はインバウンドもまた増えてきて、韓国と台湾からが増えてきた。新幹線さまさまです。」
そんな旅館が気にかけているのが、温泉資源の保護です。
■山口副社長
「ここが(温泉の)配管の大元です。源泉からポンプで上げたところ。」
嬉野温泉は源泉の温度が90度を超えているため、配管へのダメージが大きいといいます。
■山口副社長
「湯の花が配管の中について温泉の通りが悪くなるから、定期的な交換が必要になる。部分部分ですが、10年に1回とかですね。」
配管は事業者ごとに管理しているため、嬉野市はどこにどれだけの配管があり何年使われているのか、実態を把握できていないとして、来年度、調査を始める方針です。
さらに嬉野市によりますと、観光客の増加にともなって温泉の使用量が増え、「源泉の水位が低下傾向にある」ということです。
限りある資源を未来に残すにはどうすればいいのか、温泉を保護するための財源を確保しようと嬉野市が検討を始めたのが、「宿泊税の導入」と「入湯税の引き上げ」です。
■佐賀県嬉野市・村上大祐 市長
「私たちの限りある財源の中から捻出しているという現状がある。そういったところから考えても、申し訳ないが観光でお越しになられた方にもご負担をいただければ、より良いサービスや景観の提供ができると思う。」
宿泊税導入と入湯税引き上げについて、嬉野市は来年度から有識者を交えた検討委員会で議論を進め、2025年度をめどにスタートしたいということです。
■訪れた人(長崎・佐世保市から)
「何もせずに廃れてしまったりなくなってしまうのは寂しい。続けていくには必要なのかなと思う。」
■嬉野市民
「私はいいことだと思う。利用する人がいくらか負担するのは当たり前じゃないですかね。」
■大正屋・山口副社長
「多少はアップしますが、そこはお客様にもご理解いただいて、次世代に残していかないといけないので、なんとしても保護していかないといけない。」
大事な資源を守り、観光地としてどう成長していくか、嬉野市では市民だけでなく広く一緒に考えるきっかけにしたいとしています。
宿泊税と入湯税について解説します。
宿泊税は、観光振興などを図る目的で徴収するものです。
都道府県で導入しているのは、東京都、大阪府、福岡県です。市区町村では京都市、金沢市など6つで、福岡市や北九州市も独自の税率を設けています。
税率は自治体によって異なり、例えば福岡市の場合は、宿泊料金が2万円未満だと1人1泊200円、2万円以上は500円です。
一方、入湯税は、温泉や温泉施設の保護などを目的に徴収され、1人1日150円が標準と定められています。嬉野市は現在、宿泊客が150円、日帰り客は50円としています。
この入湯税を引き上げているのが全国12の自治体で、九州では大分県の別府市が最大500円としています。