【芥川賞】福岡市の大学院生・鈴木結生さんが快挙 西南学院大で毎日通う場所 修猷館高校ではこだわりの壁新聞を発見
芥川賞に、西南学院大学の大学院生、鈴木結生(ゆうい)さんの作品「ゲーテはすべてを言った」が選ばれました。23歳で注目の人となった鈴木さんとはどのような人物なのか、そのルーツをたどりました。
■芥川賞を受賞・鈴木結生さん(23)
「2日前までインフルエンザで倒れていまして、たくさん変な夢を見て、これもその続きなんじゃないかと疑っています。」
鈴木結生さんは、福岡市の西南学院大学大学院に通う23歳です。受賞作の「ゲーテはすべてを言った」は、ドイツの文豪、ゲーテの研究者である主人公が、自分の知らないゲーテの言葉と出会い、その原典を探し求める物語です。
新人作家による純文学の作品の中から選ばれる芥川賞には、今回初のノミネートで受賞となりました。
■鈴木さん
「作品を作るという行為は基本的には孤独な行為だと思います。まだ2作目なので、これから先の旅がどうなるか分かっていないのですが、魅力的な険しい道を歩んでいるよと言っていただいたような気がしています。」
鈴木さんは西南学院大学の大学院で英文学を専攻しています。今回の快挙に、大学では喜びの声があがっています。
■学生
「作家だけでも尊敬なのに、結果残すとか考えられない。鳥肌立つぐらいすごい。身近に素晴らしい努力家がいらっしゃるとは。」
「サークル、学生団体の先輩で、私たちも部員も盛り上がっています。うれしかったです。作品を書いている時は真面目で真剣。普段はお茶目でおもしろい方です。」
今回の作品はどのように生まれたのでしょうか。鈴木さんがほぼ毎日通っているという、ゆかりの場所を訪ねました。
■吉原美樹記者
「大学内の図書館です。鈴木さんは、こちらの場所でよく執筆活動を行っていたということです。」
大学によりますと、鈴木さんは文学作品が並ぶフロアを訪れ、ゲーテの本を繰り返し読み込んでいたといいます。鈴木さんと3年ほどの関わりがあるという、図書館の職員の方に聞きました。
■西南学院大学 図書情報課・篠﨑結衣さん
「発表の瞬間見ていたのですが、いつかは作家になるだろうと話していたので、まさか、こんなに早く受賞できると思っていなくてびっくりしたのと、うれしかったです。」
大学生の時の鈴木さんは、この図書館で後輩のレポートの添削などのアルバイトをしていたということです。さらに2023年には、図書館をよりよくしたいと学生団体を立ち上げ、学生向けの手作り冊子を発行しました。記念すべき第1号の表紙は、鈴木さんが書いた自画像です。
■篠﨑さん
「全部、手書きで書いているんですよ。この中の文章も自分で書いているし、デザインも自分で。」
大学と大学院の講義で、鈴木さんと関わるホドソン教授は。
■西南学院大学 外国語学科・リチャード ホドソン教授
「勉強熱心ですが、謙虚な学生さんです。自分の知識が広いけれど、まだまだ勉強したいことがたくさんあって、新しい知識が欲しい人です。」
受賞発表後、鈴木さんにお祝いのメッセージを伝えたということです。
■ホドソン教授
「夜遅く私が寝ている間、返事が来ました。Thank you と。多分忙しいでしょう。」
さらに修猷館高校に在学中は、作家としての才能の片鱗を見せていました。高校3年間、図書委員を務め、図書室には今も、鈴木さんが書いた「壁新聞」が残されています。
■修猷館高校 図書司書・筒井美子さん
「食堂の掲示板に貼るために、図書委員が広報活動で月1回、担当者を決めて作るというものです。」
鈴木さんが書いた壁新聞には、図書室でたくさんの本に出会ってほしいというメッセージが書かれていました。
『書架の隅々に秘められた宝物を手にし、磨くのだ。』
その壁新聞からは、鈴木さん独自の工夫を見ることができます。
■筒井さん
「普通の壁新聞は色模造紙にタテ・ヨコ自由に印刷物を貼り付けて、自由に題材も選んで作るのですが、和紙にこんな感じで作った人は彼しかいないです。」
鈴木さんが高校2・3年生の時に担任だった渕上教諭も、今回の受賞を喜んでいます。
■修猷館高校(国語担当)・渕上弘一教諭
「本当にうれしいです。正直言ってまだこれからというふうに思っていたので、2作目なのでそこは驚きました。」
■永石莉里子記者
「書店にはノミネート作品を集めた特設コーナーがあります。」
受賞翌日の16日、福岡市のジュンク堂書店 福岡店ではさっそく、鈴木さんの作品を求める人の姿がありました。
■来店客
「きのう、テレビで芥川賞の発表があったので、どういう本かなと思って。あまりよく知らなかったので見に来ました。」
鈴木さんの受賞作「ゲーテはすべてを言った」は、この店では17日から販売されるということで、帯紙を新調するなど売り場にも力を入れています。
■ジュンク堂書店 福岡店 文芸書担当
「自分の家の近くの人が書いている本だから買ってみようというのでもいいので、本に触れるきっかけになれば。」
たぐいまれな才能で23歳という若さで芥川賞を受賞した鈴木結生さん。福岡に期待の新星が現れました。