【ソナエル】線状降水帯が発生しやすい時間帯? これまでの的中率は4割 スパコン導入で発生予測どうなる
大雨災害に備えてシリーズでお伝えしている防災企画、今回は「線状降水帯」についてお伝えします。21日朝、鹿児島県で線状降水帯が発生しました。発生予測が難しい中で、観測や予測技術の向上が進められています。
7年前、記録的な集中豪雨によって福岡県と大分県に甚大な被害を出した「九州北部豪雨」。土砂災害や河川の氾濫などによって、40人以上の死者・行方不明者が出ました。この時、発生していたのが「線状降水帯」です。
発達した積乱雲が次々と発生し、帯状に連なって同じ場所に長時間、大雨を降らせる線状降水帯。発生すると災害の危険度が急激に高まりますが、発生を予測するのは非常に難しい現状です。
■福岡管区気象台防災気象官・渡辺剛さん
「去年は全国で22回、(線状降水帯の)半日前の予測を発表して、そのうちの9回で線状降水帯が出現したという解析ができた。22分の9ですかね、的中率としては。」
これまで、4割程度だった的中率。その向上を目指し、気象庁が新たに導入したのが、予測を計算する最新のスーパーコンピューターです。計算能力は以前のものと比べて、およそ4倍になりました。
■渡辺さん
「計算能力が上がったことで、(線状降水帯の)予測時間を倍近い10時間から18時間、かなり伸ばすことができた。危ない現象を事前に計算できる機会が増えたという感じでしょうかね。」
積乱雲を発生、発達させる上空の水蒸気をより詳しく観測できるようになったことで、5月から新たに始まったのが、線状降水帯の予測範囲の絞り込みです。
線状降水帯の発生予測について、気象庁ではこれまで、全国を11に分けた「地区単位」で発表していましたが、5月からは「府県単位」で発表しています。
■松井礼明アナウンサー
「地域を絞ると、的中率への影響はどうでしょうか。」
防災気象官の渡辺さんによると「今までの技術で範囲を狭めれば的中率は下がるかもしれないが、新しい技術を使えるようになったので、これまでと同程度の的中率を確保できる見込み」だということです。
また「自分の住む地域名が呼ばれることで、避難行動への意識が向上することを期待したい」としています。さらに、この予測は5年後の2029年には「市町村単位」まで絞って発表することを目指しています。
その中で、気象庁が進めているのが線状降水帯そのものの分析です。
10年ほど前から注目されるようになった線状降水帯は、発生の仕組みなどまだ詳しく分かっていない部分が少なくありません。過去の線状降水帯の発生状況の分析が進む中で、6月に入って発表されたのが、線状降水帯が発生する時間帯についてです。
■福岡管区気象台 防災気象官・渡辺剛さん
「九州の線状降水帯の発生時間帯は、夜や明け方が実績として多いということが発表されています。」
気象庁気象研究所の分析によりますと、発生回数が最も多かった時間は午前5時台でした。また、夜10時から朝6時台にかけての発生が、全体の半数を超えていることも分かりました。
今のところ、その要因は分かっていませんが、気象台ではこの結果を警戒などの呼びかけに反映したいと考えています。
■渡辺さん
「夜間や明け方は動きが取れないことも多いでしょうから、そういうところにお住まいの方は予防的な意識は持っていてほしいと思います。気象台としても、まだまだ難しい技術です、見逃しの率もありますよというのをお知らせしてでも、そういう情報があることによって救われる命があるのではないか。」
渡辺さんによりますと、線状降水帯の予測に関しては、まだまだ精度を高めなければいけない段階ですが、発生予測が発表された時には、線状降水帯が発生しなくとも大雨となる恐れが高いので警戒してほしいということです。