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【母の日】「赤いカーネーションが見当たらない」グラデーション・レインボーも 地域で咲かせる花 佐賀

2024年5月10日 19:53
【母の日】「赤いカーネーションが見当たらない」グラデーション・レインボーも 地域で咲かせる花 佐賀
母の日 カーネーションの色は多様化

5月12日(日曜日)は母の日、プレゼントの定番と言えばカーネーションです。佐賀県唐津市の農園では、年間を通して60品種以上のカーネーションを育てています。令和の母の日にはどんな品種が人気を集めているのでしょうか。

フリルが重なるような花びらに、優しく柔らかな雰囲気が魅力のカーネーションです。

佐賀県唐津市でカーネーションを専門に栽培する「平田花園」では、年間の生産数は全国有数の80万本に上ります。

母の日を前に4月下旬から出荷の最盛期を迎え、全国およそ20か所への発送作業が進んでいました。

生産と販売の責任者、松尾栄策さんによると、1軒で年間60品種以上を栽培するのは全国屈指の規模だと言います。

ただ、気になることが。

■吉村史織アナウンサー
「母の日と言えば赤いカーネーションのイメージがありますが、ハウスを見渡してみても、赤の品種というのは見当たりません。」

■平田花園 ・松尾栄策さん
「『赤のカーネーションは母の日しか売れない』というのが業界の中での強いイメージ。いつでも使ってもらえるような色、使いやすい色をお客様に届けていきたい。」

松尾さんによると、母の日だけ需要が高まる赤のカーネーションは生産の調整が難しいため、国内で栽培しているところはほとんどないといいます。

消費者の需要も多様化しているため、ピンクなど淡い色のカーネーションを中心に栽培しています。

中でも全国の市場から注文が相次いでいるのが「オレンジミナミ」です。暖かみのある暖色系のグラデーションが、ブーケの主役にも脇役にもなると人気です。

■吉村アナウンサー
「これは花ですか?」
■松尾さん
「これもカーネーションの仲間。」

こちらはカーネーションと同じ、なでしこ科の「テマリソウ」です。鮮やかな黄緑色がブーケなどのアクセントになると、数年前に栽培を始めた新しい品種です。

70年以上、この場所で花を栽培してきた平田花園が長年、大切にしてきたことは、花の“ベッド”となる土の管理です。

必要な栄養素が含まれているか、毎月ハウスの土を専門機関で分析しているほか、年に一度は30棟のハウスすべての土に蒸気を当てて消毒します。

■松尾さん
「そもそも土が良くないと立派なカーネーションが育たないので、土の状況を測って、結果に応じて土にご飯をあげるという感じです。」

さらに、15年ほど前から取り組んでいるのは、自然界にない色で花を染め上げる、いわゆる「染め花」作りです。

茎を染色液に浸けて花が水を吸い上げる力を利用して染め上げますが、色の濃さをそろえるには技術や経験が必要で、その日の気温や湿度に合わせて染める時間などを調整します。

平田花園の自慢は、複数の色を使って染め上げる「レインボー」です。

1色だけの染め花と比べ、3・4倍の手間と時間が必要ですが、ここでは年間2万本の注文を受けています。

その生産に一役買っているのが、唐津市内の就労支援施設「愛の木」に通う人たちです。

知的・身体障害を持つ人たちが集中力を生かして丁寧に作業するため、より高品質な花が出荷できるようになりました。

■染色作業を担当した人
「大変なところは(茎が)折れないように切ったり、色を付けたものを水につけたりすること。(きれいに染まると)うれしい気持ちになります。」

施設の職員によると、楽しみながら安定した収入を得られるとして、利用者からも人気の高い仕事になっているといいます。

■松尾さん
「今で言う“農福(農業と福祉)連携”をいろいろ活用して、 私たち農家と就労者支援施設が協力して、もっと農業の魅力を伝えていきたい。一番はお母さんに喜んでもらいたい。母の日の需要をもっと広めていきたい。」

カーネーションの花言葉は「深い愛」です。地域で咲かせた花が、ことしも母の日に多くの愛と感謝を伝えてくれそうです。