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【特集】夜の警固公園に何を求めて 「帰りたい」「幸せが欲しい」少年と少女の静かな叫び

2023年10月26日 9:56
【特集】夜の警固公園に何を求めて 「帰りたい」「幸せが欲しい」少年と少女の静かな叫び
少年と少女は夜の警固公園に何を求めて

10月末はハロウィーンですが、福岡市の中心部にある、警固(けご)公園は去年に続き夜間に封鎖されます。この警固公園には、ふだんの夜から「警固キッズ」「警固界隈」などと呼ばれる少年少女が夜な夜な集まってきます。何を求めて夜の公園に通うのでしょうか。

福岡市・天神の中心にある警固公園は日中、市民の憩いの場になっていますが、夜になると姿を変えます。

■ディレクター
「午前0時前の警固公園、まもなく終電が終わりますが、公園内を見てみると、私服姿の若者の姿が多く見られます。タバコやお酒を片手に話している様子もみられます。」

東京・歌舞伎町の「新宿東宝ビル」の横、通称「トー横」になぞらえて、ここには「警固界隈」「警固キッズ」と呼ばれる若者が多く集まります。

警察によりますと、警固公園周辺で去年、補導された少年少女は、前の年の倍近い510人にのぼります。たむろする若者は、夜の警固公園に何を求めて来るのでしょうか。

■少年(16)
「きっかけは、親に刺されそうになった。」
■女性(19)
Q生活するためのお金は「パパ活です。」

■ディレクター
「FBSというテレビ局ですが。」
■少女
「ねえ、絶対、警固界隈やろ」

■ディレクター
「おいくつですか。」

■少女2人
「16です。」
「15です。」

警固キッズを自称する2人の少女は、ほぼ毎晩、この場所に足を運ぶといいます。

■少女(15)
「同じ経験をしとったりする人が多いけん。みんな頭おかしくて楽しい。」

一方で、つらいときにはあるものに頼るといいます。

■少女(15)
「咳止め薬。」
■ディレクター
「何錠くらい飲んでる?」
■少女(15)
「30錠。3シート(30錠)とか25錠とか。」

精神的苦痛から逃れるために使うのは、大量の咳止め薬です。いわゆる「オーバードーズ」と呼ばれ、最悪、死に至る危険な行為です。

■少女(15)
「嫌なことがあったときとかに、記憶飛ばしたいみたいな。そのために飲んでる。」

【親に刺されそうになった】

午前0時半ごろ。こちらは16歳の少年3人です。

■少年(16)
「家帰ってもすることないから。それなら外来て遊んだりした方が楽しいし。」

■ディレクター
「家にいづらさを感じる?」
■少年(16)
「ないです。そんなのはないです。」
「家帰ったら、ちゃんとご飯もあるし。」

ただ、真ん中の少年だけは言葉を詰まらせました。2日後、再び公園を訪れると彼の姿がありました。

■少年(16)
「1か月くらい帰っていない。きっかけは、親に刺されそうになった。」

少年はことし入学したばかりの高校を、暴力行為で退学処分になりました。激高した父親から逃げるように、家を飛び出してきました。

■少年(16)
「ここに来れば何かがある。」
■ディレクター
「実際来てみてどうだった?」
■少年(16)
「楽しいっちゃ楽しいけど。見る限り、寂しい人たちの集まり。帰りたいよね、寒いし、ゆっくり寝たいし。帰ったらどうなるか分からんし、怖くて帰れん。」

行き場を失った若者がたどりついたのが、警固公園だったのです。

冷え込む夜の公園でひとり、たたずんでいた19歳の女性も居場所を求め、この公園に来ました。

■女性(19)
「施設を出て、ここにいます。ここにいたら、そんな人たちばかりだから楽しくて、出会いも。」

女性は9月、家族と過ごせない20歳までの若者が入居する自立援助ホームを抜け出し、福岡市近郊から警固公園にたどりつきました。

■女性(19)
「(父親は)性暴力で捕まって、お兄ちゃんも同じことで捕まる予定なんですけど、警察から逃げててどこいるか分からない状態。」
■ディレクター
「誰に対しての性暴力?」
■女性(19)
「私に対してです、両方。」

小学1年で両親が離婚後、女性は小学6年まで家庭内暴力を受け続けたといいます。その後は九州・山口の児童養護施設を転々とし、今はネットカフェで寝泊まりしています。帰る場所はありません。

【パパ活、やめたいけれど】

■ディレクター
「生活するためのお金は?」
■女性(19)
「パパ活です。」

相手は、SNSで出会う見知らぬ男性です。「大人の交際で会えませんか」という誘いに、「大人の方なら会えます」と返信すると、「希望条件、教えてください」と返ってきました。メッセージのなかの“大人”とは、性行為のことを指すといいます。

■女性(19)
「3.5(万円)希望でいくら出せますかって。2とかやったら拒否るっちゃん、せめて3かなみたいな。」
■ディレクター
「やめようとは思わない?」
■女性(19)
「やめたいんですけど、家(施設)を出るちょっと前からリストカットをしていて。昼で働こうと思っていても、傷があると採用されないし。一回きりの仕事なら援交しか。」
■ディレクター
「本当だったらどうしたい?」
■女性(19)
「ちゃんとした幸せが欲しい。家族が欲しいから変えたいですね、めっちゃ。」
■ディレクター
「どう変えるか。」
■女性(19)
「そう、全然分からないし『相談してね』なんていう大人もいないし。」

誰に助けを求めればいいのか。福岡の中心、警固公園から、少年少女の心の叫びが静かに響いています。