【続報】博多ストーカー殺人「護身用に包丁2丁」「偶然見かけた」被告の主張を認定 待ち伏せ・計画性は認めず 福岡地裁
2023年1月、JR博多駅前で元交際相手の女性をストーカー行為の末、包丁で何度も刺し殺害した罪に問われた32歳の男に対し28日、懲役20年の判決が言い渡されました。判決は「包丁2丁は護身用だった」「偶然見かけた」とする被告側の主張を認め、「待ち伏せ」や計画性を否定しました。
殺人とストーカー規制法違反などの罪で判決を受けたのは、住居不定、無職の寺内進被告(32)です。
判決によりますと、寺内被告は2023年1月16日午後6時すぎ、博多駅近くで、勤務先から帰宅中の福岡県那珂川市の会社員、川野美樹さん(当時38)を偶然見かけて、およそ7分間ついていき、つきまとったストーカー行為をした上、胸や背中、頭や首を刃渡りおよそ24センチの包丁で少なくとも17回刺して殺害しました。
判決では「偶然見かけた」と認定し、「待ち伏せした」とする検察の主張を退けました。また、事件に使った包丁について、「外出時は護身用に包丁2丁をトートバッグに入れて携帯していた」とする被告側の主張を認めました。
また、「ストーカーが当初から殺害を企てて被害者に接触したようなものではなく、計画性がうかがわれるものでもない」とした一方、「そもそもストーカー規制法に基づく禁止命令を受けている身でありながら声をかけてついていったことに端を発した」と指摘しました。
さらに「事件当時、被害者へのストーカー行為が発覚したことで職場で客からなじられたり、上司から見放すような態度を取られたり、いたずらや嫌がらせと思われるLINEメッセージが送られてきた上、勤務先から罰金と称して多額の金銭の支払いまで求められていて、生活苦と相まって追い詰められていた状況で、そのすべてを被告の自業自得とまで言うことはできない」としました。
動機については、川野さんが警察に相談したことでストーカーと扱われ、生活全般が窮地に陥っていると考え、逆恨みしていたところ、つきまといながら謝罪を求めて口論になり、期待するような応対をしてくれず、110番通報しようとしたことに激高したとしました。
これまでの公判で寺内被告は「刺したことは間違いないが、待ち伏せをしたことは違います」と話し、殺害については認め、ストーカー行為については否認していました。
検察は「一片の慈悲もなく残忍極まりない。短絡的、自己中心的な動機に酌量の余地はない」として、寺内被告に懲役30年を求刑していました。
一方、弁護側は「待ち伏せしていたのではなく、携帯電話の滞納料金を払おうと偶然、博多駅近くにいた。川野さんに会ったのは思いがけないことだった。包丁は護身のため持ち歩いていたもので計画性はない」と主張し、殺人については認めるものの、ストーカー規制法違反については無罪だとして懲役17年が相当としていました。
寺内被告は2022年8月に福岡市博多区の路上で、川野さんに声をかけた男性を殴って顔の骨を折るなど7か月の大ケガをさせた傷害の罪で、裁判官による量刑を決めない「部分判決」で、すでに有罪が言い渡されています。判決は、この部分判決も踏まえて量刑を判断し、28日午後3時から言い渡されました。
検察は懲役30年を求刑していましたが、裁判長は殺人と傷害、銃刀法違反、ストーカー規制法違反の罪で
寺内被告に懲役20年の判決を言い渡しました。
17日から始まった裁判員裁判では、ストーカー規制法違反が認められるかが争点となっていました。
冨田敦史裁判長は「約3分間と比較的短い時間の立ち止まりで、待ち伏せと言えるかは疑問が残る」として、寺内被告が川野さんを待ち伏せしたことは否定した一方、恋愛感情やそれに基づく恨みの感情から、
つきまとったことはストーカー行為にあたるとして、ストーカー規制法違反は成立するとしました。