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特集「キャッチ」“不登校でも大丈夫” いじめや不登校を乗り越え活躍する動画クリエイター

2023年10月11日 19:33
特集「キャッチ」“不登校でも大丈夫” いじめや不登校を乗り越え活躍する動画クリエイター
特集「キャッチ」です。不登校の小中学生は10年連続で増加し、昨年度は約30万人と過去最多となりました。そんな中、いじめや不登校の経験をいかし、動画クリエイターとして活躍する男性は「不登校でも大丈夫」と訴えます。

【運動会や修学旅行に参加できず】

■YouTube動画
「ACCアッコチャンネル始まりました。アッコチャンネルの匡人です!」
「ゆきです!」

陽気に動画の撮影をする2人は、動画クリエイターの永島匡人さん(30)と妻の由希代さんです。

YouTubeで『ACCOチャンネル』を運営し、福岡県の宗像市や福津市を中心に、グルメや観光スポットを発信しています。

笑顔で撮影に臨む永島匡人さんは、実は小・中・高校と不登校を経験しました。現在は、動画製作をしながら不登校への理解を訴える講演会も行っています。

■動画クリエイター・永島匡人さん(30)
「自分がダメだった、できなかった時代があって、今となっては良かったなと。もしトントン拍子に人生進んでいたら、多分できない人の気持ちはわからなかったと思います。」

一日のほとんどを家で過ごした小学生時代は、運動会や修学旅行にも参加はできませんでした。

■永島さん
「1回目の不登校になった理由は、体が太っていたので周りと違う。体が太っていたことでいじめに遭ったりしていた。2回目が(中学生になって)柔道を始めて痩せることはできたんですけど、小学生のときにあまり(周りと)コミュニケーションを取っていなかったので、コミュニケーションが取れないためにいじめられたりとか。」

中学では、親の都合での引っ越しに加えいじめに遭い、まともに学校に通えず、進学した高校もいじめで退学しました。

■永島さん
「本当に解決口が見つからない毎日で、先が見えないことでずっとモヤモヤ。親ですら友達ですら、この気持ちを共感してくれる人なんていないと思っていたので、 ずっと1人で悩んでました。」

【きっかけはパソコンだった】

自分の人生について考える毎日、不安で押しつぶされるなか、生きがいをもたらしてくれたのは、不登校時代から熱中していた“あるもの”でした。

■永島さん
「パソコンは自分のすべてだった。生きがいというか、生きる意味というか。パソコンをしているときが唯一、不安になったりとか嫌な気持ちにならなかったので。」

父・浩昭さんに、不登校の当時の様子を聞きました。

■父・浩昭さん
「小学生時代はこれですかね、ちょうどパソコンがこれ。好きなことに対してはまっすぐ。パソコンなんかもゲームをし始めると一日中ずっとしている。でもその時思ったのは、キーボードを扱っていたので、これは将来役に立つのではないかと思っていた。」

当時、家にこもっていた息子を“なんとか学校に行かせたい”という思いもあったと話す浩昭さんですが、不登校を繰り返す永島さんと関わるうちに、考えも変わっていきました。

■父・浩昭さん
「こっちが言っても変わらないので、自分の考えを変えなきゃいけないと思った。したいことはして、嫌なことはやめてという感じで言っていました。自分もサウナが好きだったので、『サウナに行こうか』と行ってサウナに入ると、ほかの大人が平日の昼間に若い子どもがいるので声をかけてくれる。頭の中の考えが少しずつ変わったりしてるのかなと。」

浩昭さんがつくった学校以外の人と接する時間は、永島さんにとっても変わるきっかけになったといいます。

■永島さん
「学校に行かないと将来困るんじゃないかと思って、無理やり行かせそうになると思うんですけど、親に『学校に行きたくない』と言うと『別にいかんででいいよ』と。だけど学校に行かないなら山登り行くとか仕事についてくるとか、学校以外の世界を教えてくれた。 」

また、パソコンを通してつながった人間関係も心の支えとなりました。

■永島さん
「その当時の唯一の友達はパソコンの中にしかいなかったので、顔も知らない人だけどゲームしながら一緒に電話して遊んだりとか、悩み事とか相談は、よくネット上の人たちに乗ってもらっていました。 」

永島さんは大人や周りの人とのコミュニケーションの仕方も、みずからパソコンを通じて学んでいきました。

【小中学生の不登校は29万9048人と過去最多に】

国の調査によると、小中学校の不登校は昨年度全国で29万9048人と過去最多となり、10年連続で増加しています。

国の基本方針では不登校の子どもを再び登校させることだけを目標とせず、フリースクールなどに通わせることも選択肢として挙げています。しかし、約4割が学校の内外で相談や指導を受けておらず、学校以外の支援先の存在は浸透しているとは言いがたい状況です。

9月、宗像市で不登校児への学びの場の確保と学びたいときに学べる環境を整える取り組みの一環で、プログラミング教室が開かれ、不登校の小中学生6人が参加しました。

平日の昼間に行われたこの教室では、実際に、ロボットを操作しながらプログラミングを学びました。

■参加者
「(Q. この教室は楽しい?)楽しいよね。将来に役立つこと、機械とかプログラミングとか。」
「学校にはないことがいっぱいできる。」

■宗像市 教育委員会・賀来元彦さん
「ここに来て、人と接する楽しさや興味があることに取り組む、いろんなことができるようになる、楽しさを味わってほしいなと思います。」

【高卒の資格を取得「無駄な日なんてない」】

永島さんは高校を退学後、通信制の学校で高卒の資格を取得しました。また、独学で動画の撮影や編集を学び、宗像動画製作所を自ら立ち上げました。

“つらい経験をしたからこそ人の気持ちが分かる。”永島さんが開いた動画編集講座をきっかけに、一緒に働く制作スタッフも、永島さんとの仕事にやりがいを感じています。

■動画制作スタッフ・山本美菜さん
「いろんな現場に同行させてもらうんですけど、いろんな人とのコミュニケーション能力もすごいし、その場をまとめる能力、導いていく能力がすごいなと感じる。」

■動画制作スタッフ・大里祐貴さん
「コミュニケーションをすごく取れるので、こっちのストレスが全然ない。」

永島さんには、経験した過去をいかして、成し遂げたい夢があります。

■永島さん
「将来の夢は、教室を開きたいと思っている。いきなり学校に行ったりとか社会につながるのは大変なので、まず僕が一つクッションになって『編集やってみたら』とか。社会とつながる喜びとか成功体験を少しでもつかんでもらって、社会と不登校のつなぎ役(になりたい)。」

“不登校でも大丈夫”、“すべてが経験で無駄な日なんて一日もない”と学校以外の選択肢を知ってもらうため、永島さんはきょうも動画を製作します。