シリーズ「こどものミライ」誰でも褒め上手になれる“イオプカシ”の呪文はいかが
子育てを取り巻く環境や、子どもたちの成長を見つめるシリーズ『こどものミライ』です。子どもに怒って、イライラ叱ってばかりいませんか。誰でも褒め上手になれる“魔法のことば”があるといいます。
純粋で自由な心をもつ子どもたちは、かわいい一方で、危ないことをやめてほしいなど、注意が必要な場面もあります。
■30代
「何回か声をかけてうまくいかないと、めんどくさくなって”コラっ!”って、ついなるので。」
■40代
「関西弁で言うところの、”あかん!”っていうのをよく言ってしまう。」
分かっていても、子どもの気持ちに寄り添うのは、なかなか難しいことです。そこで訪れたのは、佐賀市のおへそこども園です。
■おへそこども園・吉村直記園長(37)
「おっ。ナイスナイス。」
園長の吉村直記さんは、保育士、幼稚園教諭、そして公認心理師の資格を持っています。11歳と9歳の子どもを育てるパパでもあります。園では、子どもの視点に立った”褒める保育”を中心としています。
■吉村園長
「お父さんとかお母さんに小さいころ、宿題しなさいあんたとか言われて、はい、分かった、お母さん、宿題するよみたいなことって多分、なかったと思うんですよね。褒めた分だけ、子どもたちはその期待に応えようとかうれしいなとか、認めてもらえているなっていう気持ちをたくさん持つことができるので、自己肯定感を持ちながら成長してくれる。ネガティブなことにもチャレンジできるようになっていくというふうに思っています。」
吉村園長が教えてくれたのは、誰でも褒め上手になれるという『魔法の言葉』です。
■吉村園長
「おへそグループではイオプカシの呪文という褒め方の型があります。」
まず、イオプカシのイは『イイトコ褒め』です。
■先生
「何してるの。」
■園児
「虫のごはん作っているの。」
■先生
「虫のごはん作ってるの。虫さんたちにやさしいね。いいね、お世話上手だ。」
■園児
「えへへへ。」
いいところを見つけて認めてあげることは、褒めるの基本です。
イオプカシのオは『オドロキ褒め』です。
■先生
「おっ。ありがとう。きょうはお仕事さんなの。」
■園児
「ちがう。」
■先生
「違うけどしてくれてるの。」
■園児
「うん。」
■先生
「えっ。お仕事さんじゃないのに。」
「うわぁ」や「おっ」など、驚きの言葉を最初に付けるだけで、気持ちがより伝わりやすくなります。
イオプカシのプは『プロセス褒め』です。
■先生
「よ~い、どん。」
リレー対決を始めた子どもたちは、一生懸命、走ります。
■先生
「がんばれ、ゴール。ただいまの勝負、青チームの勝ちです。赤チームさん、どうでした。」
■園児
「もう一回したい」
「くやしい。」
■先生
「くやしいよね。でもさ、さっきも負けたのにさ、よく、もう一回、トライしようと思ったよね。」
結果ではなく、努力や姿勢など、プロセスに注目することをふだんから意識してみてください。
イオプカシのカは『カンシャ褒め』です。
■先生
「ねえねえ、お願いがある。シャベルがすごく散らばっていて、誰か手伝ってくれないかな。」
■園児
「はい。」
■先生
「ありがとう。すっごく助かる。」
感謝をきちんと伝えることで、もっとやりたいという気持ちにつながります。
イオプカシのシは『シツモン褒め』です。
■先生
「どうやったらさ、こんな緑ができるの。何色と何色を混ぜたの。」
■園児
「忘れた。」
■先生
「忘れたー、そっか。ステキな色だね。」
質問されることで、子どもの自己肯定感が育ちやすいということです。
声かけをする時間がないときは、遠くからグッドサインなど、ジェスチャーをするだけでも褒めることにつながるのでおすすめです。
褒め言葉”イオプカシ”が飛び交う園で、保育主任を務める菜月先生は、8歳と4歳の2児のママです。家でも上手に叱れていると思いきや、うまくいかないときもあるといいます。
■保育主任・本山菜月さん
「家では、イライラしたり強く言ってしまったり、なんでっていうこともたくさんあります。がんばろうと思うと苦しくなるので、私もがんばりすぎないようにしています。できなくて当たり前、頼って当たり前っていうようにハードルを下げておくと、自分の中で、これくらいでいいかという気持ちが生まれるので、私は決して完璧ではないので、その自分を認めるようにしています。」
子どもたちは毎日が、”生まれて初めて”を過ごしています。それは子育てをする親も同じです。
”いっぱい失敗してもいい。”
子どもの小さながんばりに目を向けて褒めることは、子育てと心地よく向き合う近道なのかもしれません。