特集「キャッチ」偽ブランド・不正薬物を水際で阻止 知的財産調査官に密着 福岡
アジアの玄関口・福岡には、国際線で毎日、世界各地から膨大な郵便物が届きます。これらを検査するのが、門司税関福岡外郵出張所です。
人気のスニーカーや、有名ブランドのバッグ、美容用品や高級家具が並びますが、これらはすべて、偽物の可能性が高いといいます。
福岡市東区の新福岡郵便局に併設されている門司税関福岡外郵出張所です。
■職員
「気をつけ!礼!おはようございます。銃器および爆発物、テロ関連物資が国内に流入することがないよう、取り締まりの強化・検査をお願いします。」
「10月に入って、ベトナム由来の輸入物から偽ブランド品の摘発が続いていますので、本日もベトナム由来の輸入物には注意していただくようお願いします。」
ここでは、税関の職員が違法な国際郵便物がないか点検しています。なかでも、偽ブランド品を見つけるプロが、知的財産調査官です。
■長野真人さん(28)
「バレンシアガという若い世代に人気のブランドです。結構見つかります。」
知的財産調査官の長野真人さんは学生時代、たまたまテレビで税関職員が偽ブランド品を見抜く番組を見て、憧れを抱きました。
願いがかない、去年7月から知的財産調査官として職務にあたっています。
調査官の一日は、仕分け作業から始まります。
膨大な数の郵便物の申告書を確認しながらX線にかけ、不審物や疑わしいものがあれば中身を確認します。
■長野さん
「(申告書に)日本語の誤植があると疑いが高い。あとは縫製とか生地ですね。見つからない日のほうが少ないです。(きょうも)たぶんあると思います。」
門司税関によりますと、ことし1月から6月までの上半期で、偽ブランド品などの差し止めはおよそ3万9000点に及びました。前の年と比べ、2倍以上に増えています。
最も多いのは変わらず中国からのものですが、ここ2・3年はベトナムから入ってくるものが増え、全体の3割ほどになっています。
【高級腕時計…申告書には「工具」】
この日も、疑わしい郵便物がありました。
■長野さん
「ロレックスの時計です。」
中国から届いた荷物に入っていたのは、本物なら数百万円以上はする高級腕時計です。しかし、申告書には、工具と書かれていました。
【最終的に偽物と判断】
記載された価格も5ドル、日本円でおよそ750円です。
■長野さん
「(だまそうとしている)可能性はあります。価格も極端に低い。ロレックスだとかなりすると思う。そういった点からも、偽ブランド品である可能性は高い。」
最終的に、偽物と判断されました。
■長野さん
「偽物か本物か見分けがつかない部分がたまにある。そういったものを識別するときが大変です。」
【個人利用でも「没収」に法改正】
偽ブランド品の輸入については去年10月、法律が改正され大きく変わりました。海外業者などから偽ブランド品を輸入した場合、以前は転売などの商業目的でなく個人利用目的なら、税関で没収はされませんでした。
しかし去年10月からは、個人利用目的でも没収の対象となりました。
■長野さんの上司・田中伸良さん
「(偽ブランド品は)原則輸入することができない。法改正をご存知でない輸入者の方が、以前は個人使用であれば輸入できたのに、今はダメなんですかといった問い合わせもあります。
【大麻を発見 密輸を防ぐ】
外郵出張所の役割は、偽ブランド品の取り締まりだけではありません。
海外からの郵便物を使って不正薬物が国内に持ち込まれていないか、専用の検査機器を使って調べます。
■職員
「主に薬物とか、テロにつながるものを成分から分かる機械にかける。ものによってはさらにX線にかけたりします。」
ことし8月には、ベトナムからの郵便物に隠された大麻を税関職員が発見し、密輸を未然に防ぎました。一人一人の知識と経験が、日々の暮らしの安全につながっています。
【見つからないのが一番いいが】
■長野さん
「見つからないのが一番いいと思うが、自分の手でより多く止めて、偽ブランド品を見つけて終わりじゃなくて、その先に社会悪がないか。正確に検査して摘発できる税関職員になれれば。」
偽ブランド品に不正薬物、テロにつながる危険物の流入を確実に阻止するために、税関職員は水際の最後の砦(とりで)として、目を光らせています。