アルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」ってどんな薬? それって認知症…?セルフチェックで早期発見!【かけこみクリニック・テレビ派】
2025年に、65才以上の高齢者の内、5人に1人にあたる700万人が発症するとされているのが認知症。その主な原因の一つとされるのが、アルツハイマーです。
2023年、アルツハイマー型認知症に対する新薬「レカネマブ」が、厚生労働省に承認されました。この薬がどのようなものなのか、そして、実際の病院やクリニックでも行われている、簡単にできる認知症チェックも行います。教えて下さるのは、心療内科医の長井敏弘先生です。
認知症のおよそ68%を占めているのが、アルツハイマー型認知症です。これは、脳内に「アミロイドβ」というタンパク質が蓄積されることが、主な原因とされています。これにより、脳内の神経細胞が変性、性質が変わってしまい、海馬と呼ばれる脳の記憶をつかさどっている部分などが萎縮してしまいます。それが進行すると、記憶力の低下などの症状が現れます。
「アミロイドβ」は、脳内の老廃物(ゴミ)みたいなものです。本来、排出されるべきものが、排出されず蓄積されます。認知症になる20年前から、コツコツと蓄積が始まっています。緑茶に含まれるカテキンやポリフェノールがアミロイドβを分解してくれますが、ほんのわずか。今までいろいろな認知症の薬は出ましたが、どれも対処療法的なものばかりでした。
新薬「レカネマブ」とは…!?
今回承認された新薬「レカネマブ」はどのような薬なのか、広島大学大学院脳神経内科学の丸山博文(まるやま・ひろふみ)教授にお話を伺いました。
Q.この薬でどのような変化があるのでしょうか。
■広島大学大学院脳神経内科学 丸山博文教授
「薬が使えるようになるのは第一歩だが、まだまだクリアしていかないといけない条件が、たくさんあるという状況だと思われます。」
Q:レカネマブはこれまでの薬と何が違う?
■広島大学大学院脳神経内科学 丸山博文教授
「これまでは症状を悪くしない対症療法の薬でしたが、今回の薬は、原因であるアミロイドβを減そうという薬ですので、より病気の原因に近づいた治療ということになります。非常にこれは画期的と思っています。ただし、進行を遅らせる薬ですので、治るという薬ではありませんので、過度な期待はしないほうがいいと思っています。」
Q:対象となる患者は限られる?
■広島大学大学院脳神経内科学 丸山博文教授
「まずは、症状の軽い人「軽度認知障害」、あるいは、「早期のアルツハイマー認知症」の縛りがついているはずです。その上、アミロイドβがたまっていることが証明された方ということになりますので、アルツハイマー型認知症と診断されている人全員が受けられる治療ではありません。」
認知症は進行度で3段階に分けられ、「レカネマブ」は、症状の軽い患者のみに効果が期待されています。では、どのようにして進行度を測るんでしょうか?
■広島大学大学院脳神経内科学 丸山博文(まるやま・ひろふみ)教授
「いろいろ方法はあるんですけれども、日時のこととか場所とか、計算、あるいは記憶ができるか、図形や文章が書けるかを検査する試験で、認知機能の検査を行って判断する。」
効果は、今までの薬ではできなかった、認知症の原因物質である「アミロイドβ」を減らすことです。ただし、対象者は、アミロイドβが脳内に蓄積している患者と、アルツハイマー型の軽度の認知障害の患者に限られます。認知障害を越えて、認知症になるとなかなか難しいということです。このアミロイドβが蓄積して、認知症状が進行していると、脳神経は大きなダメージを受けており、アミロイドβを無くしても、脳神経が再生されないので、そういう意味で使用者は限定されるということです。
正常な脳の海馬と認知症患者の脳の海馬を見ると、正常な海馬はびっちり詰まっていますが、認知症患者の海馬は、スカスカなのでだいぶ進んでいることが、わかります。
認知症の診断はどのようにするの?
認知症の診断は、脳画像検査(MRI)と、質問式検査の2種類があります。こちらの質問式検査は、日時や場所など日常生活にまつわる質問などをしていきます。その中に、「Moca-J」という検査があります。この検査では、立方体や時計の描写をすることで空間認知能力を測ったり、いくつかの単語を覚えさせて、5分後にその単語を聞くような記憶力を測る検査をします。
その中に、「Moca-J」という検査があります。この検査では、立方体や時計の描写をすることで空間認知能力を測ったり、いくつかの単語を覚えさせて、5分後にその単語を聞くような記憶力を測る検査をします。
ワーキングメモリーと言い、例えば、料理を作る時に、一方で鍋を煮ながら、もう一方では何か焼いている事を忘れてしまったら、大変なことになります。ある作業をするときに、そんなに重要ではないけれども、一応頭の中でこれは覚えておいて、次の作業をしながら、また次の作業をやっていくのを、作業記憶といいます。これを調べると、認知症の方は、「あれ?次何だったかな。」と、前の記憶が薄れてしまいます。
認知症になる理由は、脳を使わないからです。脳を使わないと、どんどん退化します。80歳を過ぎても、脳(特に海馬)は筋肉と同じように鍛えられるので、使えば使うほど強くなっていきます。新しいことを覚えて脳を鍛え、運動で筋肉を鍛えてください。運動も認知症予防になるといわれています。医学的に、人間は病気をしなければ、120歳まで生きることができます。
<答え>
【テレビ派 2023年11月1日放送】